451話 長く一緒にいると似てくるというけれど…
「さて、クラト公子を揶揄って満足したわ。ネロも起きてきたことですし、そろそろセレーネギアに向かう?」
すると、ネロのお腹がぐうっと鳴った。
もしかして、お腹が空いたから起きてきたな。
ネロが、何も言わず私の方をじっと見つめてくる。
ネロの深い青の目がじっと見つめてくると、何も言えなくなる。
「何か食べる…?」
「あぁ。」
ネロ、起きてきたばかりだもんね。
一世界のご貴族様を前にしても、腹ペコネロさんは、健在ですか。
私は、ちょっと冷や汗が出たよ?
正直、アルビナ令嬢やクラト公子といい関係といえるものを築けていて良かったと思ったよ?
まぁ、ネロも関係性を無視して、無茶を言うことはないと思うけど。
「相変わらずのマイペースだな。それにチヒロは、ネロに甘いな。」
甘くは…ないと思いますけど?
普段は、余程のことがない限り、ネロには言い負けませんから。
それにしても、ネロは私がネロの深い青色の目に弱いことを絶対分かっているよな。
分かっていて、訴えてくることが、ご飯のおねだり…
色気より食い気…
私たちらしくていいけどね。
「アルビナ令嬢、クラト公子、すみません…」
再び二人を待たせる羽目になり、私は謝罪をする。
ネロが食いしん坊で、ほんとうにすみません。
「じゃあ、私たちにもお茶を貰ってもいいかしら?きっと、シン達は焦れている頃ね。」
アルビナ令嬢は、今の状況をとても楽しそうにしている…
シン王子、本当にどんまい。
「別にいいさ。ここまで待ったら、どれだけ待とうが変わらないだろ?」
クラト公子…
それは先ほどのフォローをミスった私への仕返し…?
「お腹が空いているみたいね。でも、ご飯は、セレーネギアでも用意があるわよ?」
「そうなんですか?」
そう言えば、昨夜、シン王子とクヴェレ殿下が小規模なパーティ形式にするって言っていたような。
「ネロ、ここで食べるよりも、セレーネギアでもらった方がいいかもよ。」
「ここでも食べて、セレーネギアでも貰えばいいだろ?」
…欲どおしくない?
ルームサービスのご飯が届き、ネロはもぐもぐと食べ始める。
もういい。
分かったよ…
「貴方たち、二人って本当に不思議な関係よね。」
「どういう意味ですか?」
「だって、いつもはチヒロがネロを振り回しているかと思えば、こういう日常ではネロがチヒロを振り回している。見ていて面白い関係よね。」
よく、ネロを振り回していると言われるが、そんなことないと思うんだよな…
「あぁ、チヒロに俺を振り回している自覚はないからな。俺は、それはどうかと思うが。」
「じゃあネロは、チヒロを振り回している自覚があるのか?」
「…まぁ。」
絶対にないだろ。
いや、今のは、振り回しているとは思っているが、それが悪いとは思っていないという…
自覚アリのタイプだろ。
なおさら、質が悪くない?
私がネロの方をキッと向くと、ネロはもぐもぐとしながら、鼻で笑った。
この猫…
「ふふふ。似た者同士ってやつなのかしらね。」
「あぁ、それ分かるわ。」
私とネロが似ている?
周りから見るとそう見えるのか。
確かに、ところどころ似ているところはあるかもしれないけど…
「あまりピンと来ていないかしら。それなら、長く一緒にいるから、似てきたっていう事もあるかもしれないわね。」
長く一緒にいるから似てくる。
聞いた事があるかも。
仲のいい友人、恋人、長年連れ添った夫婦は、動きや思考が似てくると。
でも、ネロと一緒にいて一年も経っていないんだよな。
「まぁ、似てきたんだとしたら、チヒロが俺に似てきたんじゃないか?俺がチヒロに似るなんて、あり得ないだろ?」
「どういう意味かな?」
ケンカか?
やるぞ??
あとさ…
「そんなことよりも、早く食べ終えて!」
ネロ待ちなのに。
私とネロが似ている…
そんなことないと思う。
カッコいいときのネロは、カッコいいけど、だらしないときは、あまりにもだらしなさすぎでしょ。
私がブーブーと文句を言うのを横目に、ケフッとご飯を食べ終えて、満足そうにアルビナ令嬢とクラト公子にお礼を言っていた。
そして、二人は、ニコニコと楽しそうに笑っている。
アルビナ令嬢は、何となく我が道を行くタイプだろうけど、クラト公子までそれでいいのか…
シン王子、お迎えに来てくれたお二人は、人選ミスではないでしょうか…?
読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!