450話 アルビナ令嬢は、容赦がない
私の目の前で、アルビナ令嬢とクラト公子がお茶を啜っている。
最近、異世界の顔面に慣れてきたと思ったんだけど、だれだ?
美人は三日で飽きるとか言ったの。
いやぁ、眺めてられるわ。
やっぱ、人間は美しい物には目がないとも言うってことだな。
「何か顔についているかしら?」
「美しい顔がついていますね…」
「何、言っているんだ?」
はぁ?
事実ですけど?
「それより、ネロはまだ起きてこないのか?」
「クラト公子達が来たときに、起きるように言ったので、起きているとは思うんですけど、布団から出たくないんでしょうね。それか二度寝をしている可能性があります。」
「起こしてきてくれよ…」
「大丈夫ですって。そのうち起きてきますよ。」
すると、ベッドが置いてある方から、音が聞こえてくる。
「ほら、起きてきますって。お茶でも飲んで待っていてください。」
そして、しばらく経つと、ネロがのろのろと起きて、私たちの方へとやってきた。
そして、目の前の光景を見て、固まった。
私も、二人がドアの前にいた時、おそらくこんな感じだったんだろうな。
固まるネロに笑いを堪えつつ、なんだか複雑な気持ちになった。
「なんでいるんだ?」
ネロの戸惑いも、物ともせず、二人は優雅にお茶を啜って、私たちの部屋で寛いでいる。
「邪魔してるぞー。」
「お寝坊さんですね。」
「はぁ…?」
あはははは…
わぁ、すごい、ネロのきょとんからのドン引き顔。
「今日のお迎えは、アルビナ令嬢とクラト公子らしいよ。」
「なぜ、その二人?」
だよねぇ。
全く同じ疑問で面白い。
「決してやましいことなんかないからな。」
そう言い訳は、やましいときに出てくるんですよ、クラト公子。
まぁ、クラト公子がそんなこと出来るわけがないと、私もネロも思っているんだけれど。
「違うからな。さきほど、チヒロにも説明したが、俺がシンに君たち二人の迎えを頼まれた。そして、その情報を聞きつけたアルビナ嬢が、俺についてきたんだ。俺が、ここへ向かう時にたまたまシンやルアルに目撃された…どちらかといえば、俺は被害者なんだ。お前たちに俺の気持ちが分かるか?」
うわ…お気の毒としか言いようがない。
アルビナ令嬢と一緒にいる所を、シン王子とルアルさんに目撃されるなんて、そんな偶然あるんだ…
悪いことはできないねぇ。
シン王子は、拗ねただろうし、ルアルさんは、にっこりと笑ってクラト公子を見たのだろう。
クラト公子って、ここにきて不憫枠なのか?
「その可哀そうな目で見るのはやめてくれるか…?」
「いえ、ドンマイと思っただけです。」
「だったら、少しは、可哀そうだと思ってくれていいぞ。」
どっちよ…
「大丈夫よ。シンもルアルもそんな誤解はしていないと思うわ。」
「していたら、アルビナ嬢の事を俺は恨みますからね…」
誤解はしていないだろうけど、良い気もしていないだろうね。
「シンが拗ねるのは、ともかくルアルに俺が軽い男だと思われるのが嫌なんですよ。」
「それならば、大丈夫じゃない?私とシンがお互い想い合っていて、クラト公子が入りこむ隙なんてありえないって、ルアルなら分かっていると思うけど。」
それを自分で言いきってしまう、アルビナ令嬢さすがです。
って、思ったけれど、確かにアルビナ令嬢とシン王子に対して、他がどうこうする…なんて考え浮かびそうもない。
「それに、クラト公子には言っておきたいことがあったのだけれど、想いも伝えていないのに、いっちょ前に嫉妬と気遣いなんて、しない方がいいわよ?ルアルがいつまでもフリーだと思わないことね。」
アルビナ令嬢、容赦ねぇ…
まぁ、そうか。
恋愛に振り回されてきた人のいうことは違う…
そして、同じくらいご本人も振り回してきているんだけれど。
「アルビナ嬢…そんなにはっきり言わなくても、いいじゃないですか。」
「誤解、誤解とよく分からないことを言っているからよ。誤解されたくなかったら、しっかりと言葉で伝えればいいのよ。」
ニコニコと笑いながら、お茶を啜るアルビナ嬢に、クラト公子は完敗していた。
「まぁまぁ、アルビナ令嬢のいうことは、ごもっともかもしれないですけど、クラト公子は、生粋の格好つけなので。そこは、クラト公子のペースで頑張ってもらって。」
「おい、チヒロ。何もフォローになっていないぞ…」
あ、あれ?
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