45話 もしかして好奇心で、墓穴を掘った?
思い切ったことを聞きすぎただろうか。
でも、あの調子で質問攻めをされていたら、私が言うしかなくなっていたと思う。
「なるほど。知りたいのは、ミシュティのお菓子の在り方ということでしょうか」
うん、
その通りなんだけど、反応を見るにどうだろ。
私は、グラースさんの顔をじっと見つめる。
グラースさんは、大きく息を吐いた。
「チヒロさん達は気が付いていると思いますが、我々が知りたいのは、ミシュティの観光客の減少についてです。お二人の知りたいことを、お伝えしたら、我々が知りたいことを教えてもらえますか。」
折れてきた。
そんなに観光客の減少の話が知りたいんだ。
「ネロ」
「任せる」
ネロは、私の方をしっかりと見て、伝えてくれた。
ありがと、ネロ
心の中で、ネロにお礼を言い、グラースさんとメルに向きなおる。
「それは、もちろんです。ですが、確認なのですが、それは言っても大丈夫な情報ですか?ここまで、言わせておいてなんですが、世界のレベルの秘密ならば、無理に教えてもらうことは、しなくても大丈夫です。」
私の言葉に、グラースさんとメルは、意外そうな顔をする。
交渉というわけではないけど、自分が持っている情報を強く見せるための強気な姿勢をしただけで、私たちが持っている情報はホントにたいしたことはない。
だって、胃もたれだからね。
「なるほど。ですが、我々の情報を先出しさせていただきましょう。コスモス観光部と言う名前と、少し話しただけですが、あなた方の人柄を信じて」
グラースさん、そしてメルは、初めて出会ったときと同じような優しい笑みを浮かべた。
「ミシュティのお菓子の建造物や、花の庭園などの植物はカラメオという鉱物の魔力から作られているんです。」
カラメオ…噴水の所に沈んでいた石か。
確か、宝飴の石だったっけ。
「噴水の所にあった石のことだよな。あの石には魔力が感じられなかったが?」
「あそこに置いてある石は、魔力の抽出が終わった後の石なんです。ミシュティにとって、宝飴の石は大切なものです。噴水は、お菓子のエリアの中心に位置する場所なので、守り石として、あそこに置いているんです。」
魔力の抽出…
ということは
「あの、花の庭園にあるものは、飴の細工を魔力の力で動かしているということですか?」
「いいえ、ここにある植物はすべて種から育てています。実は、宝飴の石は食べることができるお菓子の宝石なんです。花の種に、宝飴の石の魔力を入れることによって、花の庭園にあるお菓子の花や、お菓子エリアの植物が育つのです。」
初めは普通の種だけど、魔力を流すことによって、お菓子の植物へと成長するのか。
「お菓子の建造物はどうなんだ?」
「お菓子の建物も宝飴の石の魔力で練り上げられた生地や材料で作られています。石の魔力と自分が持っている魔力を共鳴させて、操っているので形成が自由自在なんです。クレーム・アラ・シャンティや噴水も魔力を操り、形成しているので、細かい装飾など、しっかり凝られたデザインになっているんですよ。」
魔力って炎などを出す魔法だけじゃなくて、共鳴させて操ることもできるんだ。
それにしても、これホントに教えてもらってよかったのだろうか。
私としては、好奇心と仕事を両方クリアしたから満足なんだけど。
今のミシュティにおける重要な情報だよね。
ふと気が付き、私は、グレースさんの方を見た
あ…やられた?
話を聞いた私たちを見て、グレースさんは、意地の悪い笑みを浮かべていた。
もしかして、私は、何か見誤ったのだろうか。
優位に立ったと思っていたけど、向こうには、まだ他の目的があるってこと?
ネロの方を勢いよく向くと、馬鹿にしたような目で見てくる。
私に任せるって言ってたけど、なにかあるって分かっていたなら教えてくれても良くない?
私は、グレースさんの悪い笑顔を見て、何かに巻き込まれる予感しかしないのであった。
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