449話 元お騒がせ偽装カップルの訪問
昨日、みんなと会える機会が出来てよかったと思ったけれど…
まだ覚醒しきっていない、頭を無理やりたたき起こすほどの呼び鈴の音。
「…早くない?」
昨日は、夜に。
そして、今日は朝に。
体内の時間、バグってないか?
「…早くあの音を止めて来い…」
ネロは、布団にもぐりながら、文句を言う。
無茶言うな。
私も、覚醒しきっていない頭で、フラフラなんだぞ?
ここは、ジャンケンに決まっているでしょーが。
「じゃあ、しばらくあのまま音を鳴らして置いてもらおう。俺はもう一度寝る。」
嘘でしょ?
呼び鈴を無視して、もう一度眠りにつくの?
一応、あの呼び鈴の主は、女王様からのお呼び出しなんだよ?
「気になるなら、チヒロが行けばいいだろ。俺は、もう少しこのままでもいいと思っている。」
えぇぇぇ…
ホントに?
ネロもここにきて、図太くなったね…
いや、ネロはもともと神経図太いのか。
驚いて、目が覚めちゃったよ。
「もう…分かったよ。でも、私が呼び鈴に出たら、どっちにしろ起きなきゃいけないと思うけどね。」
「…チヒロ、もう一度寝よう。そして、二時間後くらいにもう一度来てもらおう。」
何言ってるのさ。
「はいはい。冗談はそれくらいしてもらって。私がお客様の対応するんだから、それまでにちゃんと起きておくこと。」
「いやだぁ…」
文句を言うネロを置いて、私は人前に出れるよう、姿を整え、ドアへと向かう。
「お待たせしてすみません。」
ドアを開けると、そこにいたのは、また意外な組み合わせで。
「お寝坊かしら?」
「おーすごい寝ぐせだな。」
なぜ、この二人?
「アルビナ令嬢、クラト公子、おはようございます。本当に…本当に朝早くにいらっしゃいましたね。」
この二人の組み合わせ、久しぶりに見たかも。
「あら、ごめんなさいね。シンが、早く迎えに行かないと、逃げられるかもしれないって言うから。」
信用ないな…
「クラト公子は、なんで?」
「いやいや、もともと、チヒロとネロのお迎えを頼まれていたのは俺だからな。そこに、どうしてもという、アルビナ嬢が来たんだよ。」
「あら?ダメだったかしら?それに、私とクラト公子を見るのも新鮮でしょ?」
そりゃ、元…と言っていいのか分からないけど、婚約者ですものね…
お騒がせ偽装カップルといってもいい。
「シン王子が拗ねますよ?」
「それは、嬉しいわね。」
シン王子、もしかして、本当に尻に敷かれていますか?
拗ねた様子を、アルビナ令嬢が見ることは、ないかもしれないけどね。
シン王子の周りにいる人たち、ドンマイ。
「それに、クラト公子は、ルアルさんを放っておいていいんですか…?」
「いやいや、俺がいつルアルを放っておいているんだよ。」
「じゃあ、ちゃんと思いは伝えたと?」
ギクッとして、顔を逸らすクラト公子に、ため息をつく。
おいおい。
「朝早く来たからって、そう言う仕打ちはないだろ。」
「朝早く来ている自覚はあるんですね…」
「そ、それは、そうだが、当初の予定でも、早くに宿泊施設を出て、挨拶回りをする予定らしいと聞いたぞ?」
こんな早くから別れの挨拶回りなんて誰も受けてくれないって…
朝、七時ですけど?
そんなことをしたら、嫌われますよ?
「それで、ネロはどこに?」
「まだ寝てます。」
「そうなのか?」
「ネロ、寝起きが悪いので。」
アルビナ令嬢が来てくれて、良かったかもな。
私の予想なんだけど、シン王子&クラト公子だった場合、間違いなくネロは起きてこないから。
アルビナ令嬢は、女性ということもあり、ネロの中で丁寧に扱うべき相手なのだろう。
「ちなみになんですが、私も起きたばかりなので、何もしていないんですが…」
「あぁ、部屋の中で待たせてもらうから、大丈夫だ。」
…ですよね。
この人たち、本当に自由なんだから。
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