446話 帰る予定ですけど、なにか?
今現在、シン王子とクヴェレ殿下を部屋の中に招き入れて、ネロと二人でこそこそと作戦会議中である。
「これさぁ、どういう状況なんだろう?」
「さあな。プティテーラの人間たちの考えることは、もうわからん。」
そんなバッサリと切り捨てるようなことを言うなよ…
朝のアポなし訪問には慣れてきたけど、夜に第一王子と王配殿下が一宿舎に訪れる状況って、なんだろう。
緊急性の物かと思えば、クヴェレ殿下もシン王子も私たちが来るのを待ち、先ほど出したお茶を優雅に啜っている。
その様子を陰から眺めて、乾いた笑いが出てきた。
「考えて分からないことを、いつまでも考えるのは、無意味だろ?さっさとあの二人に聞いたほうがいい。このまま時間をかけたところで、答えなんか出ないぞ。」
そうだよね。
たださぁ、こういう雰囲気になると、知らない間に私、何かしちゃったっけな?…って思うというか。
聞くのも怖いんだよね。
私の心を見抜いているのか、ジッとっとした目で見てくるネロに動かされ、一つ大きく深呼吸をして、シン王子とクヴェレ殿下の方へと向かった。
「お待たせしました。」
顔には不安を出さない。
顔には、絶対に出さないんだからな。
「いやいや、突然、来てしまってすまなかったね。」
「いえ、そんなことは。驚きはしましたけど、お会いできてうれしいです。」
「入り口で私を見た時、とても戸惑った顔をしていたけどね。」
分かっているのなら、ほっといてください。
「そりゃは、戸惑いますって。ここにいるはずのない方たちが、いるんですから。何かしてしまっただろうかと、本当に思いました。」
「何か?何かしたのかい?」
覚えがないから、戸惑っているんです。
シン王子とクヴェレ殿下が、ここに訪れる何かを気が付かないうちにしてしまったのではないかと…
「心配するなよ。チヒロ達が何かをしたから、俺たちがここに来たわけではないからな。」
クヴェレ殿下にいいように転がされているのを、シン王子に助けてもらう。
でも、何もしていないのであれば、なぜお二人はここに?
「じゃあ、ここに何しに来たんだ?」
そして、どストレートにネロがシン王子に聞いている。
ネロとシン王子、本当にお互いに容赦なくなったよね。
「あぁ、クラトから聞いたんだ。お前たち二人、明日コスモスに帰るんだろう?」
シン王子の言葉に、なるほどと納得する。
確かに、私とネロは、明日コスモスに帰る。
ルアルさんと、それからクラト公子、仕事が早い。
だって、ルアルさんに電話して、帰りますって伝えたのが、今朝でしょ?
その夜に、シン王子やクヴェレ殿下にまで伝わっているのって、すごくない?
まぁ、伝達の速さもそうだけど、情報が伝わっている人たちの大物さ加減も凄い。
そっか、シン王子はともかく、クヴェレ殿下も、私たちがコスモスに帰ることを気にしてくれたのか。
…で?
私たちが、コスモスに帰るから、わざわざ前日の夜に挨拶をその世界の王族の人たちがしに来てくれたというのか?
…まさかねぇ。
「はい。帰ります。プティテーラでの観光も一段落ついたかな…と思うので。まだまだ魅力は、あると思うんですけど、それを言い出すと、コスモスに帰れなくなっちゃうので。」
「そうか。」
…それだけ?
え、もしかして、本当に帰るかどうかの確認をしに来ただけ?
嘘だろ?
「そんな困惑した顔をしないでくれ。聞きたいことがあって、ここには来たんだ。」
「聞きたいこと?」
だよね。
何か大事な用事があって、ここに来たんだよね?
「まぁ、俺は元気にやっているか、見に来たんだがな。」
シン王子
…いや、嬉しいんですけど、シン王子がここに来た時って、巻き込まれ案件なので、ちょっとドキドキしてるんですが。
「シンが、ごめんね。私たちは、君たちの明日の予定を聞きに来たんだ。」
「明日の…」
「予定…?」
クヴェレ殿下は、ニコニコと私たちを見ている。
ネロと私は首を傾げる。
えっと、コスモスに帰る予定なのですが、なにか?
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