443話 素直に褒められたので、驚きました
言ったぞ。
ついに私は言った。
もう後には引けない。
『あの…お帰りになるんですか…そうですよね。』
「いきなり、何って言う感じですよね…」
いきなり、帰る日を宣言されても、困るよね。
なんで、そんなこと言われているんだっていう感じだもんね。
「それでですね。クラト公子に帰界する日を決めたら、観光案内所の方に伝えて欲しいと言われまして…クラト公子に伝言を頼みたいんですが、良いでしょうか?」
『あぁ、なるほど。伝言ですか。…クラトも私をいいように使いますね…まったく。』
いいように使っているのではなく、ルアルさんに会うためのきっかけを必死に作っているだけですよ。
『それに、私にお二人の帰界日を教えさせるなんて、クラトもひどいですね。』
「え?」
『私も寂しいんですよ?』
「なんか、すみません…」
こんなことを頼んでしまって…
『でも、ある意味、特権ですね。』
「特権?」
『私は、一番初めに教えて貰えたってことですもんね。違いますか?』
「いえ、そうです…ね。」
そうとも言う…けど。
『じゃあ、やっぱり役得です。だって、他にも仲が良い人がいるはずなのに、私が一番に聞けるなら、ちょっとだけ嬉しいですね。なので、お二人の伝言、しっかり伝えさせえていただくので、安心してください。』
「あ、あの。ご迷惑かけていませんか?」
『そんなことないですよ。任せてください。』
「ありがとうございます。」
『それでは、お見送りには行きますので。また!』
そして、電話は切れた。
ルアルさんに伝えることは出来た。
「とりあえず、終わったな。」
「…そうだね。」
「ルアルの反応は、面白かったな。」
「そうだね。」
ああいってもらえるのは、嬉しかった。
あぁ、もっともっと、ルアルさんとお話ししたかったなぁ。
「おいおい。決意を口にして、まだその顔をするか。」
「いいじゃん。寂しがったって。」
決意することと寂しく思わないことは別問題なの。
日々、感情は変化するの。
一分一秒…全てが変化の連続なの。
「まぁ、おつかれ様…なんじゃないか?」
「え?」
「あんなにも、うじうじと悩んでいたからな。褒めてやらないこともない。」
なにそれ。
「だったら、もっと素直に褒めて。」
「お前なぁ…図々しい。」
「違います。褒められるなら、素直に褒められたいなって思っただけですぅ。」
頑張ったというご褒美なら、素直に言ってくれてもいいと思う。
まぁ、ネロは素直に褒めないだろうけど。
「はぁ…分かったよ。よく頑張ったな。」
「え?」
仕方なそうな顔をして、ネロが私の頭をポンポンと撫でている。
まさか、あのネロが?
ちょ…
「なんだよ。素直に褒めてやったのに、今度は何が不満なんだ?」
いや、不満というか、え?
ネロがこんなにも照れそうなことを、私のお願いでやってくれるなんて…
いままで無意識に、甘やかしてくれることはあったけど、私のお願いを聞き入れてくれるなんて…
「ふん。素直に褒めてやるのも、まぁ、悪くないな。」
「いたっ。」
頭に置いてあった手をおでこの方に持って来て、そのままペチンと叩いてきやがった。
「ちょっと。」
「やれって言ったくせに、照れないでもらってもいいか?面白いから。いや、チヒロに主導権握られず、俺が握るというのであれば…」
何の話をしているの?
この猫。
「仕方ないから、今後も褒めてやってもいいぞ。」
「そんな上から目線な褒められ方嬉しくない。」
「そうか?さっきの顔は、照れた顔だろ?嬉しそうにしてただろ?」
うぐ…
だって、ネロが素直に褒めるなんてレアなんだもの。
それが自分に向けてなんて、嬉しいに決まっている。
「俺に素直になれ…というが、チヒロも素直になった方がいいかもな。」
「うるさい。そういうことは、黙って、さりげなく察してくれればいいんだよ。」
「それ、俺が言ったやつだろ…」
…もう、ネロめ。
「そんなことは、もういいの。さっさと、帰る準備をするんだから。」
「話を逸らしたな。」
気のせいです。
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