442話 ルアルさんに、電話します
「おはよう。ネロ。」
昨日は、結局ネロを抱きしめたまま、眠ったらしい。
いまだに腕の中ですやすやと眠っているネロに、そっと声をかけて、起きあがる。
さっそく、昨日の夜に決意したことをしなくてはならない。
確か、クラト公子との約束だと、ルアルさんに帰界日を伝えておけばいいと言っていた。
宿泊施設から観光案内所に連絡を入れれば、ルアルさんに伝わるという話だったし、エントランスの方に行ってこようかな。
すると、ベッドの上でネロがもぞもぞと動き出す。
「どこか行くのか…?」
眠そう…
寝起きの掠れた声って、エロいらしいよ。
グッジョブ、ネロ。
「観光案内所の方に帰界日を伝えに、エントランスの方に行ってくるよ。ネロは、まだ寝てる?」
「いや、一緒に行く。」
起きるのか。
ネロは、寝て待っているかと思ったけど。
じゃあ、ネロの準備が出来るまで、待っていようかな。
窓の近くに座って、外を眺める。
虹の街の景色も帰ると決意したら、なんだか愛おしく感じてくるなんて…
本当に人というモノは、感情に左右される生き物ですね…
「待たせたな。」
「そんなに待ってないよ。さて、下に行こうか。」
ネロの朝の準備も終わったみたいだし。
部屋を出て、エントランスにいる人に、声をかける。
すると、電話を貸してくれた。
「こちらで、観光案内所に繋がります。」
「お貸しいただき、ありがとうございます。」
エントランスの人から、受話器らしきものを受け取る。
ここ、固定電話以外にもあったってこと?
「こちらは、この宿泊施設専用のものなので、ここから出ると使えなくなってしまいます。なので、宿泊施設内でご連絡をお願いします。」
なるほど。
固定電話の子機みたいな物かな?
それでも、宿泊施設内でなら、どこでも使えるのなら、結構便利だね。
宿泊施設のエントランスで、電話するのは失礼だよね。
お言葉に甘えて、部屋の方で連絡させてもらおうかな。
エントランスに行っても、大丈夫な様に準備をしていったのに…
「ふん。帰るか。」
「そうだね。」
部屋に帰って、二人でベッドに座る。
さっき、部屋を出る時に決意したんだけど、結局ここに戻ってきてしまった。
「お前の決意は、なかなか実行されないな。」
「ほんとだよ…何かに阻まれているのかな?」
そうだとしたら、まだ帰らない方がいいとか?
「まぁ、ここまで来たら、阻まれることもない。よかったな。」
ここまできたら、阻まれてくれた方が、私の心はゆとりが出てくるというモノ…
私は、そっとドアの方を向く。
まぁ、都合よくドアから誰か出てくることもないよね…
「じゃあ、電話をかけようか。」
エントランスで聞いた番号を押して、耳にあてる。
電話をかけるだけで、こんなにも緊張するのかぁ。
『はい。こちら、観光案内所です。』
出た…
ルアルさんの声…
『あの…どちら様でしょうか?』
「早く何かを言え…不審がられているぞ。」
「あの…あー…ルアルさんでしょうか?」
おいおい…いきなり相手の名前を呼んでどうする。
まず名乗るべきだったぁ。
『そうですが…もしかして、チヒロさん?』
「あれ、あ、はい。なんで…?」
『ふふ…声がチヒロさんの物かなって。』
声かぁ…そうか。
『ネロさんもいるみたいですね。』
「はい。そうですね…」
全部、バレている。
『どうされましたか?ずいぶん緊張、なされているみたいですけど…』
「あぁ、いやぁ。ルアルさん、今何しているかな…なんて?」
『はい?』
「お前、本気で大丈夫か?」
全く大丈夫じゃないね…
完全に挙動不審の人になってしまっている。
『落ち着いてください。ゆっくりで大丈夫ですので。』
そして、気を使われている。
今日の朝、言うって決めたんだから…
『チヒロさん?』
「ルアルさん、私とネロ、明日コスモスに帰ろうと思います。」
『え?』
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