441話 明後日、それが帰界日
ブスッと膨れて、ベッドのド真ん中で丸まっているネロ。
絶賛、不貞腐れ中。
「ネロ、そんなに膨れないで。」
「誰のせいだ。誰の。」
私のせいだね…
「でも、お風呂、気持ちよかったじゃん。」
ネロの体をチョンチョンと突っつくと、ギロリと顔だけこちらに向けてくる。
「お前、本当に悪いと思っているのか?」
「思っているけど?でも、お風呂気持ちよかったのも事実だよね?」
「はぁ?」
何を言っているか分からないという顔を向けられているが、私は知っている。
「私、気が付いているんだよ。そうツンとした態度をとっていても、私が体を洗っている時に、顔を緩ませていたの知っているけどね?」
「な、何を言っているんだよ。」
「え?違うの?」
ネロがあんまりにも不貞腐れて、嫌だったんだってアピールしてくるから、私だって、そういうことしちゃうもんね。
「違う。」
「じゃあ、首元を洗っている時にゴロゴロしてきたのも違うし、しっぽの付け根あたりを洗った時にしっぽを腕に巻きつけてきたのを違うと…」
「違うって言っているだろ。ただな、もし、もしそうだった場合、気が付いていても言わないというのが、優しさだろうが。」
私が次々という言葉が、あまりにも恥ずかしかったのか、ベッド中央を陣取っていたネロは、飛び上がり、私の頬をペシペシと叩き、頭をしっぽでペシペシと叩くという器用なことをやってのけている。
パニック?
「だって、ここでその優しさ見せたら、ネロが嫌だったアピールするんだもん。せっかく、丁寧に洗って、ネロが気持ちいいようにしたのにさ。」
「だから、そういう話をするな。」
うわぉ。
見事に顔を真っ赤にさせたネロに、少々驚きだ。
そして、無事ベッドをネロから取り戻し、私はベッドへダイブ。
お風呂に入る前にダイブした時とは、全然違う気持ちになっていることに気が付く。
アニマルセラピーって、やっぱり効果あるじゃんか。
そして、ベッドに横になり、私の横の空いてるスペースをポンポンと叩く。
「何だよ…」
「話を止めて欲しかったら、ネロはここね。」
「脅しか…?」
なんでよ。
「いつも通りだと思いますけど?なんで、私の横に寝ることが脅しになるのさ。」
「男女で風呂に入って、その後、同じベッドに横になるなんて…チヒロは恥ずかしいという気持ちを覚えた方がいいな。」
そう言いながら、私の隣の空いたスペースに降りてきて、横になった。
え?
なんだろう。
今、すごくバカにされた気分なんだけど、気のせい?
「はいはい。そうだね。」
「お前なぁ…前にも行ったと思うけど、俺は男だからな。」
「そうだね。聞いたことあるような気がする。」
「本当に分かっているのかよ。」
分かっていると思うけど。
降りてきたネロを、抱きしめて目を閉じる。
「はぁ…分かっていないな。」
ネロとの言い合いは、心地がいい。
それに、さっきまで寂しいという感情から抜け出せなかったのに、ネロのおかげで楽しい。
「お前、さっきまで駄々こねていたの…どこに行ったんだ?」
「ネロのおかげで、復活しました。」
「なんだ、それ。」
うん。
このもふもふを抱きしめていると、なんだか安心する。
「ねぇ、ネロ。」
「なんだ?」
「明後日、帰ろうか。」
「決めたのか?」
うん。
決めた。
「本当は、私が二人に分裂して、一人をプティテーラに置いておけるなら、そうするんだけど…」
「本当に何を言っているんだ?」
「そんなことできないのは、分かっているんで。」
そんなにガチで、引かなくてもよくないか?
「だから帰るよ。ちゃんと決めた。」
「いいんじゃないか?」
「ネロもお別れ、本当は寂しいくせに。」
「うるせー。でも、俺たちはやることがあるだろ。」
そんなこと分かっている。
仕事で来たんだから、やることはしっかり果たしますよ。
こう思うのは、何度目だって感じだけど…
今度こそ、しっかり決めた。
「明日の朝一で、ルアルさんに連絡入れようか。」
「それがいいだろうな。」
明日の夜に急に連絡貰っても、困るだろから。
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