44話 交渉するには、知識が必要
情報戦と言っても、お互いが持っている情報をいかにうまく引き出すか、なんだけどね。
そもそも、どうして観光職員でもないグラースさんが、観光客の情報が欲しいのか分からない。
やっぱり、自分の世界の観光客数って気になるもの?
私が、地球にいたときは、観光客の人たちが来てくれるのはうれしいけど、人数の増減とか気にならなかったけどな。
観光客の方達は、滞在するのがキツイと聞いたことがありますから。
何気なく聞かれていたら、「そんなことないですよ。いい所ですね」って絶対、言ってた。
でも、グラースさんの笑顔の目が鋭すぎて、それを言わせてもらえない雰囲気が出ている。
「観光部の人なら何か知っていますよね?」
って、目で語ってきている。
いやいや。
確かに気になったから、いろいろ考えたけどさ。
そもそも、ここに来たのも偶然で、「ついでに何かわかったら教えてね」程度に、送り出されただけなのに。
そこまで、確信めいた感じで見られても困る。
とはいえ、ネロと意見が一致しているし、原因は割と間違いないと思う。
実際、他の人に調査したわけじゃないから、分かんないけど。
私が考えている間も、グレースさんは笑みを崩さず、私を見ていた。
うーん…どうしようかな。
「人が多くて、疲れてしまう方も多いんじゃないですか?特に、恋愛のジンクスってロマンティックな反面、割と繊細なイメージありますけど」
「家族連れや、おひとり様で来られた方も、キツイと聞いたことがありますね。」
よく知っていますね…。
観光客層も調査済みなわけか。
「宿泊施設が足りないとかじゃないですか?滞在できなければ帰るしかありません。」
「しっかり予約できるシステムにしてますし、お困りの場合は、観光職員の人たちが手助けしてくれるはずなんですけどね」
確かに、その通りでした。
一般の人たちにも、そのサービスをしてるのかい。
そこまでするの?
サービスの鬼だな。
…すごいなぁ。
話が全く逸れないし、私の話をいなしつつ、回答を要求してる。
なにがなんでも、聞き出す精神。
ミシュティって、それほどまでに切羽詰まっているってこと?
正直、ふたを開けると、理由があまりにも呆気ないため、言いにくいんだよな。
「胃もたれだと思います。」
と言われて、納得できるかって話よ。
しょうがないから、こっちからも質問してみようかな。
「確かに、私もそのサポート受けました。あまりに観光に夢中で、宿を探すのを忘れてて。ミシュティっていろんな所があるから。そういえば、お菓子のエリアって、ほんとに全部お菓子ですごいですよね。」
「え…はい。そうですね。」
おぉ、グレースさん戸惑ってますね。
乗っかりつつも、話を逸らされたから困ってるのかな。
「特にあれ。ね、ネロ。」
「あぁ。花の庭園」
「そうそう。飴細工で出来ているのに、蕾から花が咲くなんて、まるで生きてるみたい」
「触ろうとすると、何かに弾かれるのに、落ちた花には触れるなんて不思議だよな」
「うんうん」
ネロに話を振って、援護支援をしてもらおう。
二人で、気になるところを、話し合っておいてよかったぁぁぁ。
私たちが知りたいこと。
それは、この世界のお菓子の存在。
お菓子で出来ているのに、生き物は成長しているし、建物は崩れない。
甘いにおいはあたりに充満しているというのに。
いままで、このことを疑問に思った人はいなかったのだろうか。
いたけど、知ることが出来なかったのかな?
この世界の世界規模の秘密となると、さすがに諦めるしかないんだけど。
それぞれ、企業秘密みたいなものはあるとは思うし。
今度は、私とネロがグレースさんとメルを伺う番。
グレースさんとメルからは、さっきとは違い、笑顔は消えている。
さて、どうかな…
教えてくれるだろうか。
読んでいただき、ありがとうございます
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです
よろしくお願いします!




