437話 冗談の中にある本音?
「そうか、帰るのか。」
さっきから、一体どうしたというのだ。
「いや、困らせるつもりはないんだが。ほら、チヒロ達は、プティテーラに半月ほど滞在しただろう?そして、いろんな影響を与えてくれたわけだ。だから、いざいなくなると考えると、違和感が凄くてだな…」
「虹の街に行けば、いつでも会える状況から、気軽に会えなくなるわけでしょ?なんかそれは、複雑なんだよね。」
これは、もしや、私とネロがコスモスに帰ることが寂しいと言ってくれている?
「それ、分かる。ミシュティでも、チヒロ達に結構お世話になったんだけど、やることやったら、帰るねって言って、帰っちゃうから、全然二人と遊べなかったんだよね。」
メルちゃん、私とネロは、一応仕事でミシュティに行ったんだからね。
「そうだな。たいしてお礼をさせて貰えなかったことが心残りだな。」
ミシュティでは、お城のパーティに招待されて、楽しませてもらいましたが?
あれ以上、何を受け取れと?
「そうだったのか。もしかして、プティテーラでも急に帰ると言い出したりしないだろうな。」
「それは許せないんだけど。」
「そうだ、そうだ。もっと私たちと、遊んでほしかった。」
クラト公子もブラーさんも落ち着いてください。
メルは、それもう関係ないよね?
「もう、めちゃくちゃだな…」
こら、ネロ。
冷静に、そんなことを言うんじゃありません。
「皆さんになにも告げずに、突然帰ることはしないと思いますけど。」
お礼も言いたいし、お世話になった記念のプレゼントも渡すつもりだし。
それに、プティテーラを見て回っていたら、会いたくなるだろうし。
まぁ、簡単に会える人たちじゃないのは、知っているんだけど。
「チヒロ達は、シンとアルビナ嬢の結婚パーティまでいるんだと思っていた。」
「結婚式?あの、ちなみに聞きますけど、それっていつなんでしょうか…?」
私が問いかけると、クラト公子とブラーさんは、フイっと顔を逸らす。
シン王子とアルビナ令嬢の結婚パーティも見たいよ?
でも、そんないつ行われるかまだ分からないパーティのために、いつまでも滞在できる訳がないでしょう…
「シンとアルビナ嬢も寂しがるだろうな…」
クラト公子にそう言われると、心が揺らぐのでやめて貰っても?
「おい…」
ネロ、その顔はやめて。
分かっているから、流されないから。
「それに、甘い物もいっぱい食べられるかもしれないよ。」
こら、ネロ、耳がぴくぴくしているけど?
ちょっと惹かれているんじゃない?
ブラーさん、ネロを誘惑するのは、やめてください。
「そうか。そうすれば、ミシュティにも、もう少し滞在してくれたのか。」
「お菓子食べ放題にすれば、ネロは釣れたんじゃないか?」
…ネロを釣るのは、やめて貰っても?
「本当に帰るのか?」
「本当に帰るの?」
良い顔二人に、迫られている…
「あの、帰ると言っても、すぐに帰る訳ではないですし、明日はまだプティテーラにいる予定ですよ?それに、挨拶回りで、また会いに来ますし…」
なんで私は、こんな言い訳っぽいことを言っているんだ?
「それを帰り支度というんだよな?」
「それが終わったら、帰るっていうことだよね?」
「そっか。せっかくプティテーラで会えたのに、またチヒロ達とお別れか。」
「次に会えるのはいつだろうな…?」
全員シュンとした顔をして、下を向く。
メルとビスクートさんまで参戦されると、収拾がつかなくなるんですけど。
そして、四人をよく見ると、下を向きプルプルと震えていることに気が付いた。
「あの、もしかして、私は揶揄われました?」
ムスッとした声で、言い放つと、四人が下を向いたまま、ブフッと噴き出した。
はい、これは揶揄われていました。
「ごめん、ごめん。ついね?でも、二人が帰ってしまうのは寂しい。本当だよ。」
笑いながら言われても、全然、説得力ありませんけど?
「だって、本当に寂しいじゃないか。」
そして、爆笑を止め、私とネロをじっと見つめて、哀愁漂う笑みをクラト公子は浮かべたのだった。
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