436話 本当に帰るの?と言われても…
「はぁ、満足、満足。ガラスができる工房まで見せて貰えるなんて、思わなかったわ。」
「ここに置いてあるガラスは、あのようにして出来ているなんてね。」
メルもビスクートさんも、火の街観光は、満足が行くものになったみたい。
良かった。
「職人たちの魔力操作。面白かったな。」
「うん。勉強になったわ。ありがとう。ブラーさん、クラト公子。」
気が合うだろうなと思ってはいたけど、最後の方は、ほぼ意気投合。
やっぱり、共通の話題で盛り上がれるというのは、仲良くなりやすいみたいだ。
「こちらこそ、異世界の職人と話が出来たこと、嬉しく思います。」
改めて、異世界の人間同士の関係が結ばれるのを見るのって、感慨深いものがある。
ミシュティとプティテーラ、そして今後、出会うであろう世界がこうやって、どんどん繋がっていくのだろうか。
コスモスでの仕事は、観光だと思っていたけれど、思ったよりも奥が深いのかもしれない。
「メルーレ王女たちは、プティテーラにどのくらい滞在する予定なのですか?」
「しばらくは、プティテーラを観光したいと思います。そういえば、チヒロとネロは、そろそろ滞在して半月になると聞きました。」
正確に言うと、半月はもう過ぎました。
「そうだね。プティテーラは魅力いっぱいだから、半月たった今でも、プティテーラの魅力を見尽くせていないと思うよ。」
「そりゃそうだろ。半月で見終えることが出来るほど、プティテーラは狭くないさ。」
「だってよ。クラト公子が言うには、プティテーラには見ることがいっぱいだから、半月じゃ足りないって。」
それは、そうかも。
まだまだ、あるんだろうな。
プティテーラの魅力ある場所。
「じゃあ、メルたちは、明日もプティテーラの観光?」
「うん。明日は、チヒロとネロのおススメ通り、ナトゥラの方に行こうと思っているんだ。」
いいね。
カナリスの観光をした後に、ナトゥラに行くと、また違った魅力があっていい。
そして、ナトゥラの後に、またカナリス観光をし直すと、新鮮な気分になれるんだよね。
「ナトゥラの観光ですか。なら、気球に乗っていくことをお薦めします。」
「気球?」
不思議そうに、首を傾げるメル。
うーん。
「空を飛ぶ装置かな。その機械を使って、ナトゥラを上から観光するの。ナトゥラって、すごく大きいから、景色が綺麗だよ。」
「空飛ぶ機械?それは、ぜひ乗ってみたいわ。」
「機械が空を飛ぶ原理が分かるというのか。」
ミシュティでは、空飛ぶ機械って見なかったもんね。
テーマパークエリアに、ジェットコースターとかの乗り物はあったけど。
メルとビスクートさんは、どんな反応するんだろうな。
機械で空を飛ぶ感覚が初めてなら、緊張しそう。
「チヒロ達は、明日はどうするの?」
「私たちは、そろそろ帰界準備かな。」
「明日一日は、帰る準備にあてるつもりだ。」
「え?」
私とネロが、そう言うと、なんだか微妙な空気になる。
え?ってなに?
「え?どうかしたんですか?」
「あぁ、いや。」
うん?
なんか言いにくいことでもあるのだろうか。
それとも何かやり忘れたことがあったりする?
「あの?本当にどうかしました?」
「いや、いつかは帰ると思っていたんだけど、こう、いざチヒロ達から、帰るという言葉を口にされると、なんだかな…」
クラト公子は、いいにくそうに口どもりながら、頭をガシガシと掻いている。
「…本当に帰るの?」
そして、あざといブラーさん。
「いやいや、帰りますけど?」
「そうだな。それに、本来だったら、ここまで長く滞在する予定じゃなかったんだよな。婚約パーティの時に、上司に会って、いつ帰ってくるのか催促されたし、そろそろ帰界準備をしないといけない。」
帰ると言っただけで、そこまで引かれるとは、思いませんでしたけど?
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