435話 友との観光記念は、お揃いのボトル
「そもそも、話題に困る相手と二人で出かけること自体、間違っていないか?」
「恋心というものは、緊張してうまくしゃべれなかったりするんだよ。」
ネロ君…
そういう恋心というモノもあるんです。
「緊張するということは、相手に自分が持っている以上の物を見せようとすることによって起こるものじゃないか?」
「相手によく見られたいって思うことは、よくありますよね?」
「だが、それだと続かなくないか?」
クラト公子、初めのうちは、外面を固めていることもあるでしょ。
付き合っていくうちに、お互いを知っていくこともあるはずでしょ。
「それに、クラト公子?クラト公子も、ルアルさんに対して、結構カッコつけていると思いますけどね。」
「俺もそう思う。」
「な、な、…」
私が、ルアルさんの話題を出すと、クラト公子は顔を真っ赤にして、言葉に詰まる。
よくそれで、ルアルさんの前で、あそこまでカッコつけられるよね…
ルアルさんは、クラト公子のカッコつけを分かっているようですけどね。
もちろん、それをクラト公子に言ってあげることはしませんけど?
「クラト公子は、初々しい恋愛中なんですから…恋愛に関してツッコむことなんてできないと思います。」
「そんなんじゃない。」
「だって、緊張してうまくしゃべられないし、カッコつけて、いいたいこともしっかり伝えないというミスを実際に起こしていますからね。」
ミルキーウェイをルアルさんに渡したときの様子を忘れたとは言わせないぞ。
「…そういうことも恋愛をする上では、あるんだよ。」
「言っていることが、めちゃくちゃなんですけど。」
先ほどといっていることが、真逆なんですが。
「クラト公子って、あの後、偶然を装って、またルアルさんに会いに行っているんですか?」
「偶然を装って…ってなんだよ。」
「ちがうんですか?」
「一応、俺にも用事があるんだよ。用事のついでに、ルアルに会いに行っているんだ。」
ルアルさんに会うために用事をわざわざ作っている…の間違いでは?
「なんだよ。その生暖かい目は。やめろ。」
「クラト公子は、可愛らしい性格をしていますね。ねぇ、ネロ。」
「そうだな。チャラそうに見えて、実は初心というのは、ポイント高いんじゃないか?」
「君たちは、人を揶揄うことに命でもかけているのかい?」
もちろん、餌があったら、全力で食いつかせていただいています。
もちろん、関係性はちゃんと考えたうえで。
「もういい。分かったって。俺は、初々しい恋愛を今後もしていくよ。」
「まあまあ、一途なことはいいことですから。」
ルアルさんも、クラト公子のそういう可愛いところが好きなんだろうしね。
「チヒロ、お土産、買えたわ。」
「それは良かった。」
興奮して、報告に来てくれたよ。
「それで、これ。チヒロとネロに。」
メルから差し出されたのは、二本のボトル。
これって、ミルキーウェイだよね?
「これ、個別のボトルにお揃いのチャームを付けたものなんだけど。私と、叔父さん、チヒロとネロ。四人でお揃いにしてみたの。異世界で会えたことも奇跡だし、こうして観光できることも奇跡みたいな物でしょ?だから、四人の異世界の観光記念ということで、何か欲しくて。」
「それで、このボトル?」
「うん。だって、チヒロとネロが関わったボトルを、私もお揃いで持ってみたかったんだ。叔父さんと二人で相談して決めたんだ。二人は、もうボトルを持っているかもしれないけど…ダメかな?」
うわぁ…なんだろう。
嬉しいんだが?
恋愛成就として作ったボトルは、友情にもいいらしい。
…というか、大切な人から貰えば、どんな意味を持っていても嬉しい。
まさか、メルとビスクートさんから、ボトルを貰うとは思わなかった。
不安そうに伺うメルと、少し緊張気味のビスクートさん。
一生懸命、選んでくれたんだろうな。
これだから、想いのこもったプレゼントって、嬉しい。
私とネロは、顔を見合わせえて、メルからボトルを受け取る。
「すごく嬉しい。ありがとう。」
「貰えると思わなかった。ありがとう。」
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