433話 プティテーラとミシュティの職人たち
「ガラス職人。なるほど、こんなにきれいに輝いているので、宝石かと思いましたが、ガラスなんですね。」
「宝石だなんて、そんな。ですが、そう言ってもらえることは、とても嬉しいことですね。」
マジで、宝石かと思いました。
窓際に行き、じっくりと吊るされているガラスを見る。
「よく見ると、ガラスがカットされているな。」
「うん。こういうカット、宝石で見たことあるかも。」
宝石は、美しく見えるように、カットされると聞いた事があるけど、これもそのたぐいの物だろうか?
「このカットのおかげで、光が反射して、輝いているように見えるんだろうな。」
いつの間にこんなことになっているの?
お店をリフォームしてから、そんなに日も経っていないよね?
私とネロが、メルたちをそっちのけで、新たに見るガラスの技術を観察していると、クラト公子が声をかけてくる。
「いいのか?ご友人、二人をそっちのけで。」
「ブラーさんが気合十分だったので、お任せした方がいいかと。」
アピさんと同じ。
専門知識を持っている人が、案内した方が、きっと二人も楽しめるだろう。
私とネロは、二人が楽しんでいる様子を見守る保護者にでもなっていればいいのさ。
「どう?ブラーの店。」
「どうって…?」
「リフォームを手伝った身としては、この出来はどうってこと。」
それはもちろん。
「驚きました。最後にお店に来て、そんなに時間が経っていないのに、ここまで変わっているなんて思わなかったです。」
こんなにも宝石箱のように輝くとは、思わなかった。
「ガラスって、見せ方によって、こんなに輝くんですね。」
「チヒロ達にリフォームの話をされてさ。見せ方によって、人の感じ方が違うと言われたときから、ブラーはいろいろと考えたみたいでな。さすがブラーだなって。」
きっかけの一つを作れたのは、良かったと思う。
「それに、チヒロとネロが、パーティで大暴れをしてくれたおかげで、ミルキーウェイも評判が良かったんだぜ。」
大暴れはしていませんけど?
普通に宣伝をしていたら、偶然が重なっただけですけど?
「あの後、デウィスリ夫人を通して、問い合わせがたくさん来たらしいぞ。」
「デウィスリ夫人が分かりやすく、案内してくれましたからね。」
人が集まっているところで、しっかりと。
「えぇ、このボトル、チヒロとネロが?」
メルが今見ているボトルは、ミルキーウェイ…かな?
「本当にあのアイデア、ブラーに渡して良かったのか?」
「私が持っていた所で、意味のない物ですし。」
私が持っていても、ガラス細工という私にはない技術が必要だしね。
あのミルキーウェイは、ブラーさんが持っていてこそ輝くアイデアだろう。
宝の持ち腐れをするくらいなら、それをうまく扱ってくれる人に、使ってもらった方が、宝も腐らなくていいですし。
「誰かに頼んで、作ってもらう…とか、いくらでも方法はあると思うけどな。」
「それこそ、ブラーさんでいいじゃないですか。自分が納得できる職人さんと出会うなんて、そうそう出来ることじゃないんで。」
わざわざ、私が思い描いたガラスのデザインを形にしてくれる人を探す時間も気力もない。ブラーさんに全て渡した方が、私としても楽なのだ。
それに、私が作ったのは、あくまできっかけであり、それを形にしたのはブラーさんだから、やっぱりこれはブラーさんの技術だろうな。
「ブラーは、とても楽しそうだ。あの二人を連れて来てくれたこと、感謝するよ。」
「メルとビスクートさんもミシュティでは、職人なので、火の街の職人の方たちとは、気が合うと思ったんですよね。メルと、ビスクートさんも楽しさそうなので、オッケイです。」
「職人?」
「はい。ミシュティは、魔力操作の達人、そしてお菓子作りの職人がいる世界ですから。二人とも、火の街の職人と聞いて、目の色を変えていましたから。同じ職人として、通ずるものでもあったのかもしれませんね。」
違う世界の職人たちが出会った。
職人たちが、技術を作り、今後、異世界へと発信していく未来があるかもしれない。
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