432話 太陽を捕まえる宝石箱
アピさんのお店を出て、お次はブラーさん。
ブラーさんは、お店の準備をすると言っていたけれど、準備は終わったのだろうか?
お店のドアを一応ノックしておこう。
「あぁ、ちょっと待って。」
ん?
「今、中から聞こえた声って…」
「公子だったな。」
あぁ、ブラーさんに呼び出されて、クラト公子もお手伝いしているのかな?
クラト公子のフットワークが軽いのか、ブラーさんの押しが強いのか…
言葉通り、しばらく待つと、中からクラト公子が出てくる。
「待たせたな。」
クラト公子は、本当にいろんなところに出没するよね。
もう、どこから出て来ても驚きません。
今日だけで、どれだけ驚き耐性が付いたんだろうか。
「あれ?クラト公子?」
「もしかして、ここはクラト公子のお店ですか?」
「昨日ぶりです。メルーレ王女、ビスクート様。私は、本日手伝いでここに来ております。この店は、別の者がやっている店ですよ。」
クラト公子の登場に、メルとビスクートさんは、驚いている。
昨日会った時は、バチバチに貴族様といった装いだったのに、今日は作業着だもんね。
それは、驚くよ。
「では、ご案内しますね。」
案内はクラト公子がしてくれるみたい。
ブラーさんのお店って、毎回楽しみなんだよな。
ガラスが、なんたって綺麗だから。
そして、クラト公子が扉を開けると、前回来た時とは全く異なる内装。
窓際に並べられた、装飾が太陽の光を受けて、不思議な光を出している。
よく見ると、小さいビー玉ぐらいのガラスを一本のひもに通して、何連にもつなげ、窓の縁からぶら下げているみたいなんだけど、その小さいガラス一つ一つが光を反射させ、光を放っているみたい。
ガラスの形もハート形、星型、雫型といろんな形が連なっている。
そして、その光を受けて、お店の中もキラキラとすべてが輝いているように見える。
まるで、宝石箱だな。
「すごい…」
「すごいな…」
ガラスのレパートリーも見る限り、めちゃくちゃ増えているんだよね…
ガラスドームや一緒に考えた小瓶も並んでいる。
「ここが、チヒロが紹介したかった場所なんだね。」
「こんなに美しい場所だとは知らなかった。」
私も、ここまで綺麗なお店になっているとは、思わなかったです。
「あの…クラト公子。」
「なんだ?」
「ちなみに、ブラーさんは、どこに?」
「奥で注文を受けたガラス細工を作っていると思う。待っている間も、作っていたからな。奥から呼んでくる。」
今、仕事中?
本当に来てよかったのかな?
でも、先ほどブラーさんと別れた時に、来ていい雰囲気だったから、遠慮なく来ちゃったけど、仕事あるのかい…
「おまたせ。」
そして、奥から出てきたのは、作業着姿のブラーさんだった。
「あれ?ブラー公子…ですよね?」
先に気が付いたのはビスクートさん。
貴族の恰好をしていたブラーさんとも、先ほど会ったかっちり目のブラーさんとも違う、作業に没頭した後のブラーさん。
「こんな格好ですみません。お越しくださり光栄です。」
「このお店って、ブラー公子のお店なんですか?」
「はい。僕が経営している店になります。ここではただの一職人なので、公子とつけていただかなくて大丈夫ですよ。」
職人としてのブラーさんが奥から出てきた時、ちょっとだけ安心した。
貴族としてのブラーさんもいいとは思うけど、私がメルとビスクートさんに紹介したかったのは、職人としてのブラーさんだから。
どちらもブラーさんであることに変わりはないんだけどね?
言葉遣いや立ち振る舞いは、いまだに猫を被っているとはいえ、それは、マナーの一環ということで。
「じゃあ、お言葉に甘えて。ブラーさん。このお店に置かれているものは、とても綺麗ですね。」
「ありがとうございます、メルーレ王女。ここにあるものは、ガラスで出来ています。私は、ガラス職人なんです。」
読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!