428話 アピさんに紹介するタイミングを逃しました
五人でアピさんがお手伝いをしているお店のフレーブを食べきる。
私とネロの方が圧倒的にフレーブの量が少ないにも関わらず、食べ終わりに大差がないって、一体どういう事なんだろう?
フレーブは、飲み物なのだろうか?
胃の中に吸い込まれているのだろうか?
よく分からない現象を疑問に思いつつ、アピさんがお店の手伝いを終えるのを待った。
「お待たせしました。」
「アピさん、お仕事おつかれ様です。」
「ありがとうございます。」
私たち…いや、メルとビスクートさんの対応もおつかれ様です。
「アピさんは、どこか寄る予定はありますか?」
「いいえ。このまま一度、お店に戻る予定です。」
「ご一緒しても?」
店の準備とか、あるかな?
どこかで時間潰した方がいいかな?
「はい。一緒に行きましょう。」
了承得ました。
「ブラーさんは、どうしますか?」
「僕は一旦、自分の店に帰るから、ここで失礼するよ。さすがに、異世界の王族を招待できるようには、なっていない。ここには、休憩がてら寄っただけの予定だったから。」
「それにしては、外に出る服装はしっかりとしているんですね。」
私が、ブラーさんの服をまじまじと見ていると、頭の上からチョップが飛んでくる。
「いたぁ。」
「じろじろ見るな。それに当たり前でしょ?僕、一応、火の街の貴族なんだけど。さすがに外を何も考えていないような服装で歩くことはないよ。」
そうか。
私は、近所のコンビニに行くくらいだったら、余裕で、ジャージで外に出られる人だったからなぁ。
隣町の駅近くのスーパー…いや、人と会わないんだったら、都心の行きつけのお店くらいは、ジャージで行けるかもしれない。
だって、ジャージ動きやすいし。
ブラーさんは、そういう所をちゃんとするタイプなのか。
「何?」
「いえ、何でも。」
ちょっと失礼なことを考えた自覚はあるので、顔をスッと逸らし、なかったことにする。
「じゃあ、僕は行くよ。」
「あれ、ブラー公子は、一緒に行かないんですか?」
「はい。この後、少し用事があるため、先に失礼させていただきます。チヒロから、これから、火の街の観光をなさると聞きました。いろんなところを見て貰えると、嬉しいです。」
さすが、火の街をしっかりとアピールしているところは、火の街の貴族だなと思う。
お互い頭を下げ、ブラーさんは、お店へと戻っていった。
ブラーさんとメルたちのやり取りを、不思議そうに眺めていたアピさん。
「ブラーさんのことを公子って呼んでいる方、珍しいですね。」
そういえば、アピさんにメルたちの事、ちゃんと説明したっけな?
してないかもしれない。
「それにブラーさんの対応もいつにも増して丁寧な気がしました。何かあったんですかね?」
それはですね…
アピさんの目の前にいるこの二人は、異世界の王族だからです…なんて今更言えないなぁ。
まぁ、タイミングがあったら、それとなく伝えて、アピさんにメルとビスクートさんを紹介しよう。
アピさんの仕立ててくれたドレス、この二人が気になるって言ってくれました…って。
「着きました。ただいまー」
中に誰かいるのだろうか?
「おかえり、アピ。遅かったね。お店は、何事もなく…だいじょ…うぶ?あれ?チヒロさん。ネロさん?」
中から出てきた人は、ファイさんだった。
「今日は、本当は何もなかった日なんですけど、急にお店の手伝いが入ってしまったので、ファイに助っ人で来て貰ったんです。」
なるほどね。
「ファイさん、お久しぶりですね。」
久しぶりだよな?
ファイさんに最後に会ったのって、プティテーラに婚約発表がなされた時だから、一週間ぶりかな?
…久しぶりかな?
火の街には、通い詰めていた割に、ファイさんには会えていなかったから、久しぶりということでいいだろう。
「こんな所で立ち話も何なので、お店の中に入ってください。」
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