426話 友人に火の街を案内します
「アピさーん。」
「チヒロさん。いらっしゃいませ。来てくれたんですね。」
笑顔でお出迎えをしてくれたアピさんにつられて笑顔になる。
初めて見た時と変わらない、とてもいい笑顔。
そして、アピさんは、私とネロの後ろにメルとビスクートさんがいることに気が付く。
「えっと…」
「友人のメルとビスクートさんです。」
私が横にずれて、二人を紹介すると、再び花のような笑顔でにっこりと笑った。
「ご友人の方でしたか。チヒロさんとネロさんに、仲良くしていただいております。アピといいます。」
「アピさん。メルーレといいます。チヒロやネロには、メルと呼ばれているわ。」
「ビスクートです。」
「お店に来ていただいて、嬉しいです。お席にご案内しますね。」
そう言って、アピさんは、四人用のテーブルの方に案内をしてくれて、メニューを渡してくれる。
「それでは、チヒロさん。ご注文が決まりましたら、呼んでくださいね。」
「はい。ありがとうございます。」
アピさん…本当に癒し。
「ここが、チヒロが火の街でお世話になっているお店なのね。」
「そうだよ。私もここの店を紹介してもらったんだけどね。火の街に来たときは、このフレーブのお店にお世話になっているんだ。」
「紹介?」
「そう。ここは、もともとクラト公子の行きつけの店でね。クラト公子にこの店に連れて来てもらったのが、一番初めかな。」
一番初めに来たときは、クラト公子とシン王子と一緒だったっけ?
クラト公子が、ずっとアピさんのことを見ているから、てっきりアピさんのことが好きなのかな…なんて誤解もしていたな。
クラト公子とアピさんは、兄弟みたいに仲が良くて、それはそれで見ていて楽しい。
「クラト公子の行きつけに紹介してもらえるなんて…侯爵家のご子息でしょ?
「そうなんだけど…クラト公子との出会いが特殊で、その後も仲良くしてくれて、本当にうれしい限りなんだよね。」
「最初は、事故。そして、その後は、頼まれごとで振り回された…の間違いじゃないか?」
こらこら。
そうなんだけどね。
事故というか、パーティでやらかす原因を作ってくれた…というか。
「なになに?プティテーラでも面白いことやってるの?」
「そんなことないって。そう言えば、メルとビスクートさんもクラト公子と会ったんだよね?」
「すごく好青年って感じだったよ。」
…どこのクラト公子だろう?
第一印象は、だいぶチャラくないか?
「そうなんだ。」
よく分からないけど、深く聞かないでおこう。
私は、メニューを開いて、メルとビスクートさんの方に向ける。
「さぁさぁ、好きなもの頼んで。フレーブ専門店の味は、本当に美味しいんだから。」
私はどうしようかな…
魔水魚料理が、結構お腹に溜まっているんだよなぁ。
それに、ウォーターフルーツも中に水団子が入っていて、お腹に溜まりやすい仕様だった。
食べてすぐは、平気だったんだけど、時間が経つにつれて、自分のお腹の具合を把握し始めた。
一個食べ切るのは、無理そうだなぁ。
でも、せっかく来たし、何か頼めるもの…
「俺、これとこれ食べる。」
ネロが突然二つのフレーブを指さした。
ネロ…そんなに食べるのかい?
「決められないから、両方食べたいが、食べ切れるか分からない。チヒロ、良かったら半分食べないか?」
「いいの?」
半分なら、食べられるかも。
それに、味もトマトとピクルスが使われているさっぱりとした味のフレーブ。
お言葉に甘えさせてもらおうかな。
「じゃあ、ネロ。私に半分ちょうだい。」
「あぁ。」
私とネロは無事食べる物が決定。
メルとビスクートさんはというと…
おかず系のフレーブをそれぞれ一種類ずつと、スイーツ系を頼めるだけ頼んだ。
もう驚かないから。
注文を取りに来てくれたアピさんは、目をパチクリとさせ、私の方に戸惑った顔を向けたが、苦笑いで一回頷くと、頷き返してくれて冗談ではないことを分かってくれた。
メルたちをお店に連れて行くときは、今後予約というものをしていこう。
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