425話 火の街フーの職人たち
火の街、フーに着き、舟を停めて、降りる。
「ここの世界は、本当に面白いね。雫の街とも太陽の街とも全然、雰囲気が違う。ミシュティの自然エリアに似ているわね。」
「そうか?ミシュティの自然エリアよりは、賑わっていると思うが。」
「そうじゃなくて、自然な所が似ているのよ。」
プティテーラ全体を見た身からすると、ミシュティの自然エリアに似ているのは、確実にナトゥラの方だけど…
それに、建物自体もレンガや石で出来ていて、自然とはちょっと離れているだろう。
「火の街といえば、クラト公子の侯爵家が治める場所だよね。」
「そうそう。それに、メルたちは、ブラーさんとも会っているんだよね?ブラーさんも火の街の貴族の方だね。」
まぁ、火の街の貴族は、他の街の貴族とは少し様子が違うけど…
クラト公子もブラーさんも。
ちょっと、貴族の概念が、崩れそうなくらい…
「それで、火の街名物は、どこで食べるの?」
「それは、もう決めてあります。行きつけの所があるんですよね。」
「行きつけ?チヒロ達って、行きつけの店が出来るほど、プティテーラに滞在しているんだっけ?」
いや、滞在は半月そこらなので、行きつけの店が出来るほど、長いわけではないけど…プティテーラ滞在時間の中で、一番多く訪れ、そして一番長くいた場所…それが火の街だからなぁ。
そして、火の街に来たら、その店のフレーブにお世話になっていた。
「そこまで滞在しているわけではないんですけど、お店の店員さんが友人なんだ。あ、そうそう。シン王子とアルビナ令嬢の婚約パーティで身に着けていたものは、全てメイドインフー。火の街産の物だよ。」
アピさんのドレスもブラーさんの靴や小物も。
「えぇ。あのきれいな布で出来たドレスって、この世界で手に入れたものだったの?てっきり、コスモスから持ってきた物かと思っていたわ。」
「コスモスは、プティテーラの外交パーティから参加しているから、ドレスは上司からプレゼントしてもらったんだけどね。外交パーティで着ていたドレスは、ちょっと頼まれごとついでに、貰った物なの。」
ドレス自体は上質でセンスもよく、華やかだったから、いい広告塔になれたと思うんだけど…
さすが、アピさんとブラーさんである。
「そうなんだ。あのパーティドレス、火の街産なんだ。婚約パーティとして、派手過ぎないドレスであり、でも目を引くギリギリを攻めたドレス。いいね。そういうのは、嫌いじゃないよ。」
「それに、小物をさりげなく、ドレスを邪魔しない。でも埋もれるわけではないと…」
「どんな服飾職人の方なの?ぜひ会ってみたいな。」
服飾の人たちではないな…
アピさんの本職は、繊維を扱う工房の方であり、ブラーさんの本職は、ガラス職人だからな。
先に勘違いは訂正しておいた方がいいだろう。
「メル、ビスクートさん。私のドレスや小物を仕立ててくれたのは、服飾の職人さんではないんです。」
「え?あんなにセンスがいいのに、本職ではないの?」
センスがいいのは、否定しないけどね。
間違いなく、いいドレスといい小物だったもの。
そういう質に疎い私でも、このドレスはいい物だと気が付くくらいには、会場内で目を引いていた。
ドレスをちらちらと見てくる視線があったもの。
そのたびに、心の中でガッツポーズを決めてやりましたとも。
やりましたよ、アピさん、ブラーさんって…
「本職ではないんですけど、お店に居れば、声を掛けられますよ。」
今、思ったんだけど、アピさんはともかく、ブラーさんの細かい詳細については、聞いていないのかな?
パーティで会ったんだよね?
もしかして、パーティで会ったブラーさんは、貴族としてのブラーさんで職人としてのブラーさんのことは、知らない?
ブラーさんの所に二人を連れて行くのは、もしかしたらマズイ…??
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