424話 お菓子作りの職人とモノづくりの職人
まるで大食い大会に優勝したかのような、称賛を送られながら、おしゃれで可愛いメルヘンなカフェを出る。
店の中から称賛にのり、戦いを終えた戦士のようにどや顔でドアからでるメル。
こんなに可愛い店から出るはずなのに、なんでそんなに勇ましい感じで、ドアから出るの…
ほら、外にいる人たちが、不審な目で見ているじゃないか…
ビスクートさんも思わず苦笑い。
メル…ノリがいいのは知っていたけど、そこまでするか。
まぁ、メルが楽しければいいんですけどね。
「店に寄るだけで、ここまで目立ちまくる奴、なかなかいないだろうな。」
「あはは…」
全く、同意です。
この後、火の街に行くつもりだったけど、ご飯はもういいよね。
「次はどこに行く予定なの?」
「火の街に行くつもりなんだけど…」
「もしかして、火の街のフレーブというものを食べられるということ?」
…まだ食べるの?
「メル、もしかして、料理を食べるつもり?」
「え?だって、火の街のフレーブをまだ食べてないよね?」
本気か。
カフェで、ここからここまで…の買い物をしたばかりだよ?
もう一度、聞きたい。
まだ食べるのか?
「ビスクートさんは、どうですか?」
メルに聞くのは、一旦やめよう。
規格外過ぎです。
「そうだな。太陽の街の料理も雫の街の料理もどちらも美味しかった。火の街の料理もきっと美味しいんだろうな。」
あれ?
「雫の街の料理と太陽の街の料理のコラボ。フレーブサンド。あの生地が、フレーブという料理に使われているんだろう?」
「そうですね。フレーブに使われている生地は、もう少ししっかりとした生地です。フレーブサンドに使われている生地は、よりモッチリしていますね。」
コラボ料理のために、調整されたんだろうな。
魔水魚の触感を邪魔しないための、生地の改良。
おいしい物をただ掛け合わせたところで、よりおいしい物にはならない。
でも、魔水魚のフレーブサンドは美味しかった。
「それは、ぜひ食べてみたいね。」
え…?
ビスクートさんもまだ食べられるってこと?
「なかなかの胃袋だな…」
「じゃあ、火の街にフレーブ…食べに行きます?」
「そうだね。そうだね。ぜひ行こう。絶対に行こう。」
メルもビスクートさんも行く気満々ということで、太陽の街から舟に乗り、火の街に向かうことにした。
当初の予定通り、火の街に行くことになった訳だけど、元のプラン通り、フレーブを食べに行って、それからブラーさんの所に行く…でいいんだろうか?
あぁ、カフェで食べ過ぎないで良かった。
気になる料理も多かったけど、私の判断は間違っていなかった。
食べ過ぎた体に、食べ物の匂いは、ちょっと、きつ過ぎるからね。
「分かりました。火の街のフレーブを食べに行きましょう。」
停めていた舟の所まで行き、乗り込む。
次の目的地は、はっきりしているため、最初からスピードを速める。
「火の街は、どんな所なの?」
外の景色を眺めながら、メルが聞いてきた。
「そうだね…火の街は、モノづくりの街。職人の住む街かな。」
「職人?」
「そう。モノづくりの職人たちがたくさんいるの。プティテーラの技術の中心といっても過言じゃないと思う。多くの技術を発信し続ける技術者の街だよ。」
「へぇ…職人の街ねぇ。」
そうそう。
ミシュティの人たちが一番興味を持ちそうなのは、この街だと思う。
お菓子作りの職人たちは、同じ技術者たちに目がないでしょ。
「それに、魔力の操作もモノづくりに応用されている。メルとビスクートさんは、楽しいと思うよ。」
「それを聞いたら、早く行きたくなるじゃん。」
「同じ職人として、楽しみだな。」
私も、レベルの高い職人さんたちの邂逅がとても楽しみです。
話を聞いて、私に分かるかなぁ。
「チヒロ、面白がっているだろ?」
「別の世界の職人たちが出会うのを目撃するなんて、そうそうないって。楽しくないわけがない。」
本来なら、出会うはずのなかった技術が出会う。
それに、火の街の人たちって面白いから、メルやビスクートさんと気が合うと思うんだよね。
その様子を思い浮かべて、クスクスと笑ってしまった。
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