422話 ここからここまでお願いします
うーん…どれにしようかな。
太陽の街らしく、ウォーターフルーツにしようか、それとも可愛いカフェならではのお店おススメ、シャキシャキシャーベットにしようか。
ん?
メニューをめくっていると、気になる商品文句を見つける。
これは…
ウォーターフルーツの中に、モチモチ団子を入れた虹と太陽のコラボ商品。
ま、まさか。
ウォーターフルーツの中に、水団子をいれたってこと?
そして、ストローで吸いやすいように、水団子をすごく小さくしているということ?
雫の街と火の街がコラボしていたから、その時ほど驚きはしないけど、それぞれの街のコラボ商品が実現していることが面白い。
虹の街リスペクトのお店だとは思っていたけど、まさか、コラボまで実現しているとは…
「私は決めました。」
これにするしかないでしょ。
ウォーターフルーツも飲んだことがあり、水団子も食べたことがある…
ならば、二つが合わさった時、どんな感じになるのか気になるというもの。
「俺もそれ飲む。」
ネロも気になっていたらしい。
やっぱり気になるよね。
太陽×虹コラボ。
「メルとビスクートさんは、決まりましたか?」
真剣に二人で話し合いながら、メニューを決めているため、もうしばらく待とうかな。
私は、二人が決まるまで、もう一度お店の中をキョロキョロと見渡すことにした。
「綺麗な布だよね。」
「そうだな。プティテーラの繊維については、コロロヴァードくらいしか知らなかったが、他にも目玉になりそうなものが、あるってことだろう。」
コロロヴァードは、布の見た目もそうだけど、心の在り方が分かるという、糸に付与された能力が注目されるべき点だからね。
他にもカフェの内容は、おしゃれな装飾により、私の胸を躍らせる。
いやぁ…こういうカフェも入ってみる物だな。
室内を一通り見まわして、再び、テーブルの反対側へと視線を向ける。
話し合いは終わったのだろうか。
メルとビスクートさんは、今度は、腕を組み、厳しい顔をして黙り込んでいた。
…どういう話し合いをしたら、そんな顔になるんだ?
カフェにお茶をしに来ただけなんだけど。
「あの…大丈夫でしょうか?何か決めかねているものがあるなら、私たちに遠慮せず、頼んでいただいても、大丈夫ですよ。」
そんな圧倒的兵力の前に打つ手が無くなりました…みたいな、そんな顔しないでくれ。
私たちに気を使っているのであれば、そんなもの必要ない。
好きに頼んで、好きなだけ調査すればいいと思う。
決めかねているのであれば、二つでも三つでも頼めばいいよ。
食べ切れるなら、お店の人も怒らないでしょ。
「本当にいいのかい?」
神妙な顔で、ビスクートさんが私たちの顔色を窺ってくる。
「はい。せっかくの観光ですし…ただ、どうしても気になるのであれば、お店の人に聞いてみればいいのでは?それでいいと言ってもらえれば、メルとビスクートさんも気兼ねなく食べられるでしょうし。」
お店が今、忙しかったら、メニューを何個も頼むのは、申し訳ないけど、いいと言ってもらえれば、遠慮する必要もないだろう。
「…そうね。そうするわ。」
メルとビスクートさんは、もう一度メニューを見て、その後、二人で顔を合わせ頷き合う。
決まった…かな?
「決まったわ。待たせてごめんね。」
待ったことは、あまり気にしていないけれど、ちょっと意外かも。
二人とも、即断即決をしそうなイメージだったから。
特に、ビスクートさん。
グラースさんの代わりに、代理で王様もやっていたくらいだし…
カフェのメニュー、一つでこんなに長考すると思わなかったな。
「じゃあ、注文してしまいましょうか。」
店員さんを呼ぶと、にっこりと優しい笑みを浮かべて、私たちの席の方へ来てくれた。
「太陽と虹の街コラボのウォーターフルーツを二つください。」
メニューを指さしながら、メニュー表に書かれた文字を読み上げる。
「太陽と虹の街コラボのウォーターフルーツをお二つ」
店員さんは、私たちの注文を確認し、テーブルの反対側の方へと視線を向ける。
「あの、お聞きしたいことがあるんですが…」
そして、メルに話しかけられたことで、店員さんは一瞬固まったが、そこはさすがプロ、すぐに微笑む。
「何でしょうか?」
「注文したいものがたくさんあるんですが、今、しても大丈夫でしょうか?」
たくさん?
メルたち、何をしようとしている?
「え?あ、はぁ。大丈夫ですよ。」
予想外の質問だったのだろうが、店員さんは、厨房の方をチラリと見て、頷いてくれた。
頷いてくれたことで、メルとビスクートさんは、安心したようだが、私はとても嫌な予感がしている。
「じゃあ、注文します。まず…」
そして、メルが読み上げていくメニューの名前に、店員さんは目を回し、私は頭を抱えた。
やりおった。
いちいち、メニューを読み上げているけど、それ要するに、ここからここまで全部くださいと変わらないよね?
選べないなら、両方買えば?じゃなく、調査のためなら選ぶ必要がない、全部買おうという思考になるのか…
そんな様子にも我関せずのネロが強いなと思った。
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