414話 アスガルさん、楽しみに待っていてください
「それじゃあ、まだしばらくプティテーラにいるみたいだし、いろいろと気を付けること。」
アスガルさん、いろいろにニュアンスを込めすぎでは?
私って、そんなに問題を起こしているように見えますか…
実際、問題事という問題は起こしていないと思います。
「不服そうな顔をしないの。何度も言っているだろう?気を付けるに越したことはないんだよ。」
「分かりました。」
私が肯定の返事をすると、やれやれと言った感じで微笑んでくれた。
「明日の予定は決まっているみたいだが、羽目は外さない様に。」
学校の先生かな?
「でも、楽しむことは悪いことじゃないから、しっかり楽しんでくれ。そして、お土産話を楽しみにしているよ。釘を刺すような言い方をしているが、君たちの旅行の話は、なかなか面白かったからね。プティテーラ滞在の成果と共に、聞かせてくれ。」
もしかして、ミシュティのお土産を渡しに言った時の話かな?
あの時は、初めての観光職員としての仕事の達成感と、異世界旅行という未知の大変で、とにかく誰彼構わず、自分の中の喜びを人と共有したかったからなぁ。
お土産もお世話になった人、全員に買って帰ったし、ミシュティで作った料理もコスモスで作ったし、人を捕まえては、ミシュティの話ばかりしていたかもしれない。
「俺は、何かを話したつもりないんだが?」
「ネロは、チヒロにいろんな場所に連れ回されたんだろうということが、伺えたからいいんだよ。チヒロが何か話すたびに、顔が面白いくらい動いていたからね。」
「…そんなわけあるか。」
ネロって、やっぱり顔に出やすいのかもね。
でも、これだけは訂正しておかないと。
「あの、アスガルさん?私は、別にネロを連れ回していませんよ?」
「チヒロが振り回していないと言うのは、嘘だが?まぁ、ミシュティの時は、王や王女の方が大変だったからな…」
そうだねぇ…
ビスクートさんが王様やっている時なんか、威圧感あり過ぎて、吐きそうだったし、かと思ったら、ミシュティを案内してくれるし…
「初めての異世界旅行で、緊張していたんだよ。気軽な感じで、メルの手伝いをしていただけなのに、ミシュティの王族に会う流れになっちゃうし…」
メルと初めて会った時は、メルがミシュティの王女だって知らなかったから、凄く気軽な関係を気づいていたんだよね。
もちろん、メルのお父さんのグラースさんとも。
しかもさ、何がやばいって、ミシュティにおける問題事を大体、解決して、さぁ、コスモスに帰るか…みたいなテンションの時に、メルやグラースさん、ビスクートさんの身分を知ると言う…
これは、もう仕方なくないか?
私は、悪くないと思うんだよね。
「ただ、ミシュティでもいろいろあったが、プティテーラでも、それ以上にいろいろあったと思う。アスガルが面白がる話をチヒロは、たくさんしてくれるだろう。」
ちょっと。
なんで、ネロは他人事なの?
「今回、俺は見守りがメインで、チヒロがいろんなことに巻き込まれているのを、見ている感じだったからな。俺が、チヒロに何かしてやる必要もそこまでなくて、俺的には楽だった。」
巻き込まれているのが分かっているなら、そこは、助けてくださいよ。
「チヒロが、バタバタしているのを一番傍で見ていることが出来たしな。ある意味、特等席だろ?」
人の事を、エンタメのように語らないでください、
ネロって、私のことをそんなふうに思っていたの。
はぁ…キレそう。
「ネロがそこまで言うのであれば、期待してコスモスで待っていようかな。」
そういう期待のされ方は、とても不本意です。
「じゃあ、僕は帰るよ。それではね。」
「アスガルさんも、気を付けてくださいね。」
「またな。」
アスガルさんは、私とネロの頭を一回ずつ、ポンと叩くと、そのまま異世界転送装置の方へと歩いて行った。
「アスガルさーん。またー!」
私は、アスガルさんが見えなくなるまで、大きく手を振り続ける。
転送装置の中から、アスガルさんは、小さく手を振ってくれた。
そして、そのまま姿を消す。
アスガルさんは、コスモスの方へと、転送されたのだろう。
今までは、異世界転送装置に乗って、見送られる方だったけど、お見送りってこんな感じなんだ。
「いつまで、ここにいるんだ?明日もここに来なくては、いけないだろ?さっさと帰るぞ。」
異世界転送装置をじっと見つめていると、後頭部辺りにポスっと衝撃が来る。
「はいはい。帰ろうか。」
私とネロは、異世界転送装置を背に、虹の街の宿泊施設へと帰ることにした。
読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!