413話 好きと嫌いと無関心
セレーネギアと異世界転送装置は、反対側にあるため、アスガルさんといろんな話をすることが出来た。
出会った人たち、プティテーラの食べ物、名産品、それから図書館で得た知識。
こんなにアスガルさんとゆっくり話したのが久しぶりなため、私もネロもノリノリでしゃべり続けたし、アスガルさんも、うんうんと頷いてくれた。
「プティテーラでも、手伝いをしていたんだね。ミシュティの時は、観光客の減少の原因追及を兼ねていたから分かるけど、何もないプティテーラでも同じことをしているとは思わなかったよ。」
ミシュティの観光客減少…あったねぇ。
お菓子の世界に行きたいと言い出して、いろいろと事前準備をしていた時に、気になった点。
リピーターがあまりにも少ない。
観光部としては、原因が何なのか、調査してきてほしいと言うことで、初仕事はミシュティ調査になった。
「…たまたま、流れでそうなったと言うか…」
クラト公子やブラーさんの話を聞いたら、どうしても気になってしまったし、それに商品自体がとてもいいし、可愛いのにもったいないと思ってしまったのだ。
「たまたまで、今後もいろんなことに巻き込まれそうで僕はひやひやしているよ。」
「危ないことに巻き込まれるのは、私も嫌ですね。」
「いいかい?何度も言っているが、世界によって価値観の違いというのは、どうしてもあるからね?そこを測りかねてはいけないよ?」
価値観の違いは、争いの元。
それは、分かっているつもり。
「でも、私は誰にでも手を貸したいと思えるいい人ではないので。」
「そうかい?」
「はい。私は、誰に対しても無条件で手を貸せる人ではないと思います。」
そんなに善人じゃないですって。
「じゃあ、どういう相手に手を貸すんだい?」
そうだなぁ。
「私が好きな人に…ですかね?何となく好きだなぁって思う人や、好感が持てる人に手を貸したいって思います。だから、誰に対しても、お手伝いしたいって、思っているわけではないですよ?」
そんなにいろんな人を助けられるほど、私の器は出来ていない。
どちらかというと、自分の時間が大好きな人間だから。
「お前、嫌いな奴いるのか?」
「この人嫌いって、いう人はいないかも。」
「じゃあ、結局全員助けることになるんじゃないのか?」
そんなわけあるか。
「そもそも好きの反対は、嫌いじゃないでしょ。」
「なんだよ。」
「無関心…じゃない?」
嫌いって思う事って、労力と時間を割かなきゃいけない。
むしろ、好きだと思う事よりも、大変だと思う。
だからこそ、嫌いは好きの裏返し…と言われたりするわけだし。
私は、そんな時間があったら、別のことをしたいと思う。
だから、嫌いという感情は、そんなに湧いてこないんだろうな。
「私の中の分布は、好きだと思う人と、その他大勢って感じで別れていると思います。私の中で、何となくでも好きだなぁって思えば、好き。私の中で何とも思わなければ、その他…ですかね。」
世の中全員を救いたいなんて、私には、まぁ無理だ。
「でも、自分の中に入れた…自分の手のひらに乗る分くらいは、私でも大切にできるかなと…」
それ以上持ちすぎると、手のひらから零れ落ちて壊しちゃうから、しないけどね。
「プティテーラでチヒロが出会った人たちは、なんか好き…という琴線に引っかかったという訳だな。」
「そうですね。シン王子もアルビナ令嬢も…他にもいろんな人たちと出会いましたけど、みんなカッコよかったです。なんか好き…でも今は、ちゃんと好きですかね。」
人として好き。
カッコいい生き方をしている人には、やっぱり惹かれるでしょ。
そういう人たちにが、多少無茶なことを言ってきたところで、私に何かできるなら、手伝いたいと思う。
「…チヒロは、いい出会いをしてきていると思うよ。」
…やっぱり、そうですかね?
私も、それはそう思います。
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