412話 約束を頭の端において置いたら問い詰められました
「チヒロ。見つけたぁ。」
アスガルさんとの話がまとまり、さてお見送り…とはいかなかった。
「メル?それから、ビスクートさん。」
「やっと会えた。ネロとアスガルさんも先ほどぶりです。」
メルも私たちのことを結構探してくれたみたい。
「どうしたの?」
「プティテーラ観光、一緒にしてくれるよね?」
…そう言えば、そんなことも言っていたかもしれない。
メルとビスクートさんに、デウィスリ夫人のコンジェラルチェ配布の手伝いをしてもらう代わりの交換条件だったっけ?
今さっき、アスガルさんと帰りの話をしたばかりなんだけど。
「プティテーラ観光?」
不思議そうにアスガルさんは首を傾げる。
そりゃあ、何の話だ…と言う感じだよね。
「メルとビスクートさんに、とある手伝いをして貰ったんですけど、その代わりに、一緒にプティテーラの観光をしようとお誘いを受けまして。」
「なるほど。それで、プティテーラ観光。これで、帰還はまた遅れそうだな。」
アスガルさん、そう言う意地悪を言わないでください。
「嫌なの?」
そして、メル。
首を傾げて、キョトンとした目で私を見るな。
あざといんだよ。
嫌じゃないよ。
そう、じゃないんだってば。
「予定を確認したら、返事をくれるって言ったよね?で、どうなの?」
「あ、いや。」
アスガルさんに、観光目的で滞在を、もう少し伸ばします…と言えと?
「もしかして、私との約束を忘れていたとか?」
なんで、デートの約束を忘れていた彼氏のような問い詰められ方をしているんだろう…?
「忘れてないって…」
いや、ごめん。
半分くらい、頭から抜けてた…
「アスガルさん、いいでしょうか…」
アスガルさん、お願い。
助けて。
私は、助けを求め、アスガルさんの方を見る。
良いも悪いもどっちでもいいんだけど、この状況から助けて欲しいです。
じっと見つめてくる、アスガルさんは、何を思っているのか分からない。
「アスガルさん、ダメでしょうか…」
あぁ、メルの眼力が怖いって。
私、浮気でもした?
「いいよ。企画宣伝課のメンバーには、多分そろそろ帰ってくると思う…って伝えておくね。」
それって、ポジティブな意味ですよね。
出来れば、多分とかそろそろは、要らないかなぁ…なんて。
「全く。そういう約束はしっかり守ること。それと、しっかり計画を立てて、コスモスの帰還の日程を決めること。分かった?」
「はい…」
「このままだと、ズルズルと滞在が伸びそうだからね。」
おっしゃる通りです。
なんだかんだ、ズルズルと滞在が伸びているのも事実だから。
「メルーレ王女、ビスクート殿下。チヒロとネロの事、よろしくお願いします。」
「こちらのわがままを聞いていただき、ありがとうございます。」
メルはにっこりと笑い、ビスクートさんは、アスガルさんにお辞儀をする。
「じゃあ、また明日ね。待ち合わせ場所は、観光案内所ってことで。」
「あ、ちょっと。メル、待ちなって…本当に悪いね。明日、よろしく頼むね。」
明日?
明日なの?
そう言い残して、メルとビスクートさんは、手を振りながら会場を後にした。
…明日の予定が決まったんだけど。
「相変わらず、怒涛の嵐の様だったな。」
「メルらしいと言えば、メルらしいんだけどね…」
あまりの怒涛さに私とネロは、二人が去った方を見つめて苦笑い。
「本当に仲が良いんだな…」
そんな、感心したように言わないでください。
「観光案内所って、世界の入り口だろう?」
「そうですね。異世界転送装置のすぐ傍です。」
「結構遠いだろ?それに時間がかかる。」
その通りです…
「明日のためにもパーティをそろそろお暇しようか。僕を異世界転送装置まで見送りしてくれるんだろう?」
「それは、さきほど言いましたので、当然です。」
「頑固だね。挨拶等は、もう大丈夫なのかい?」
会場を見渡しても、見知った顔の人は、もういない。
デウィスリ夫人や、ナンナル王子も、後片付けや回収作業に追われているのだろう。
「はい。大丈夫そうです。」
「じゃあ、帰ろう。プティテーラの話を聞かせてくれよ。」
「もちろんです。」
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