408話 誓いと呪い
「では、誓いの品の交換を。」
誓いの品の交換?
「それって、指輪交換みたいな物かな?」
「チヒロの世界の指輪交換は、相手の心臓を握るためのモノだろ?そんな物騒なことをこの場でやるとは思えないが。」
どうして、そうなった?
別に相手の心臓を握るためじゃないけど?
「心臓に繋がる血管を握られたら、心臓を握られたも同然だろう?」
あぁ、そういう事。
そういう風に捉えたのね。
「別に握らないって。血管が通っているであろう場所に誓いを立てるだけで。」
「誓いを立てると言うことは、命をかけることと何が違うんだ?」
誓いって、異世界では、そんなに重い物なの?
さすがに、私の世界に結婚式に命を懸ける人は、そんなに多くないと思う。
知らないけど。
一生愛すると誓っても、浮気をする場合もある訳だしね。
命を懸けたら、命を取られてしまう人が出てくるだろう。
「チヒロの世界の誓いは、効力が弱いのか?」
「さぁ。でも、命はとられないじゃない?」
「なら、効力が弱い。…そうか。チヒロも最初は、魔力が体に馴染んでいなかったよな。それならば、納得だ。」
魔力と誓いに何か関係でもあるのか?
「呪いって、あるだろ?」
「呪い?」
呪いって、相手を呪ってやるみたいな、あれ?
「自分が言ったことは、魔力によって聞き入れられ、契約が成立する。チヒロの世界では知らないが、大体の世界での誓いとは、そう言うものだ。意志ある誓いならば、なおさらだな。だから、下手に誓いを破ると、命を落としかねないと思われているわけだ。」
こっわ。
指輪よりも怖いって。
「こういう場所で行う誓いは、お膳立てを万全にしてからの誓いだろう?結構強い誓いになっていると思うぞ?」
「それで、呪いというのは?」
「強い効力を持つ誓いを解除するための方法に、解呪というのがあるんだ。呪いを解除すると言う意味な。だから、誓いは呪いと一緒なんだと。」
婚約パーティで誓った言葉が呪いなのね。
思ったんだけど、わざわざ指輪やネックレスで枷を作らなくても、より強力な言葉という枷に縛られることになるから、アクセサリーで縛る必要がないんじゃないの?
しかも何が怖いって、それが当たり前だと言わんばかりのネロ。
「ただ、諸説あるからな。信仰や土地柄によっても考え方が違う。だが、そういう思いからか、誓いというのは、本当に大切な行為であることは、間違いない。」
「間違えて誓いますとか言ったら、大変なんじゃないの?」
「言ったろ?意志ある誓いだと。誓いというのは、解除するのも大変だが、誓うのも時間と労力がかかるんだよ。」
じゃあ、普通に生活していれば、命の危険にさらされることはないと。
「じゃあ、そう簡単に誓う事なんて出来ないのね。」
「魔力の影響にもよるんじゃないか?」
私は、魔力の影響をそんなに受けていないから、大丈夫ってわけね。
約束を破るつもりはないけど、常に命の危険にさらされると思ったら、約束なんて今後できなくなっちゃうからね。
「普通に、魔力の誓いを破って無事だったとしても、誓いを大事に思っている人たちを騙したら、血の果てまで追いかけられると聞いた事があるがな。」
…どっちにしろ、ダメじゃん。
下手な誓いはたてないようにしないと…
私は、自分の顔が思いっきり引きつっているのを感じた。
そして、シン王子とアルビナ令嬢がいる方を見ると、二人はブローチの交換をしている。
「ブローチなんだ。」
二人の首元には、交換したブローチが光る。
シン王子の首元には、オレンジ、アルビナ令嬢の首元には銀の宝石で作られたブローチ。
首元なのかい…
私たちのネックレスの意味とあまり変わらないのでは?
「あのブローチは、マントを止めるためのモノだろう?ちゃんと公的に使える物だ。」
はいはい。
私たちの世界のネックレスだって、ちゃんと使える物なんだから…多分。
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