405話 いつか、私もまた恋に落ちるでしょうか?
「ちょっと長話をしすぎちゃったかしら?」
「いいえ。私は聞けて良かった話なので、ありがとうございます。」
なんだろう。
ロゼ夫人ってかっこいいよね。
なんていうか、人生経験の差なのだろうか?
ロゼ夫人も人生の先輩と言っていたから、やっぱりそうなのかも。
私も、もっと大人になれば、考え方が変わってくるのだろうか?
二十歳と言えば、私の元居た世界では、大人の仲間入りだったのだけれど、まだまだな気がする。
むしろ、二十歳になって考え方など、劇的に変わらなかった。
精神的に、二十歳になって年を取った感覚のみが、自分にのしかかった。
ロゼ夫人のような人と会うと、早く大人になりたいと思う。
普段は、歳なんて取りたくないし、いつまでも子どもでいたいと思うのに、こういう自分にない考え方を聞くと、大人になれば、理解できるのだろうか…と思うのだ。
「大人になれば、分かるんですかね?」
「大人になっても分からない人はいるし、分からなくてもいいと思っている人もいると思うの。大人とか子どもとか関係ないんじゃないかしら?」
大人も子供も関係ないのであれば、何が考え方を深くするのだろうか?
「だから、そんなに難しい顔をしないの。そんなに心配しなくても、チヒロちゃんなら、もっと、考え方が深まると思うわ。」
「…なんで、ですか?」
そんなに断言されても、私には分からないことが多すぎる。
「どんなことにも、まず、理解したい、分かりたいと思うことが大事だからよ。」
「分かりたい…ですか?」
「そう。どんなことでも興味を持つことから始まる。人との関係も同じだと思うの。その人に対して興味がなければ、分かりたいとも思わないでしょ?そして、それは分からないまま。大人だから、分かるんじゃなくて、どんな時でも分かりたいと思うから、分かるようになるのよ。」
分かりたい。
「それから、自分のこともね。自分自身も分かりたいと思わなければ、自分の気持ちすらも分からないまま。不思議よね。自分の事なのに。チヒロちゃんは、今、自分の気持ちを分かりたいと思ったんでしょ?」
そうだ。
私の欲は、どこにあるのか。
本当は、私は何が好きなのか?
そして、私は何を恐れているのか…
ロゼ夫人に恐れていると言われて、心がギュッと握りしめられた感覚になった。
私は、その事柄に対して、何かを思ったんだ。
でも、それが何か分からなかった。
それが何なのか、分かるようになりたい。
だって、それが私を知ることになると思ったから。
「はい。知りたいと思いました。」
「じゃあ、知るために、いろんなことに関わってみるといいわね。そうして、何が好きなのか、何が嫌いなのか知っていくことが、自分を知ることに繋がるんじゃないかしら?」
一つずつ、知っていくのか。
「自分を知るって、途方もない作業になりそうですね。」
「それはそうよ。人と出会う、物事に触れる、そうすることで、また新しい自分になる訳でしょ。一生かけても、自分を知ることが出来ないかもしれないわ。」
効率がいいのが、好きなんだけど。
途方もない作業かぁ…
「それでも、自分とは、ずっと付き合っていかないといけないでしょ?だから、ゆっくり知って、一つずつ発見していけばいいと思うわ。」
確かに、死ぬまで私は自分と一緒だ。
ずっと、一緒。
「そうしているうちに、チヒロちゃんも好きと思えるものがたくさん増えていって、そして、ずっと一緒に居たいと思えるような大切な人に出会うかもしれないわね。」
ずっと一緒に居たいと思える人。
恋愛はしばらくしなくてもいいかなと思った私が、今後そういう人に出会えるのかな。
もし、そうだとしたら、私が大切に想う人はどんな人だろう。
優しい人かな?
それとも、隣にいて居心地がいい人だろうか?
それとも私を引っ張って行ってくれる人だろうか?
逆に私が引っ張っていたりして。
でも、二人で言い合いでも何でもしながら、笑いあえていればいいな。
「それは楽しそうですね。」
まだ見ぬ未来を想像して、思わず笑ってしまった。
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