404話 私の中の執着と独占欲
ロゼ夫人とのコイバナもどきを終えて、口の中にはウォーターフルーツ。
私は、テーブルの上の食べ物を見ているロゼ夫人、ウォーターフルーツを抱えて飲んでいるネロ、そして私が持っていった食べ物を苦笑いしながらも食べてくれているアスガルさんを壁に寄りかかり、ストローを咥えながら眺めている。
恋愛トークにしては、キュンキュンするような話ではなかったな。
糖分を摂取して、頭も整頓されたことにより、冷静になった。
好きなものを語る時って、こんなに生々しい感じだったっけ?
独占欲かぁ。
何かに執着するってどんな感じだろう?
うーん…?
「どうしたの?」
「ロゼ夫人。」
「難しそうな顔してたけど、大丈夫かしら?」
ロゼ夫人たちが言ったことで、頭がパンクしていたんですよ。
ただ、目に見えて難しい顔をしていたってことかな?
「執着と独占欲について考えていました。」
「あら、さっきの話題?」
そう。
ネロもアスガルさんもロゼ夫人も独占欲と執着はあるって言っていた。
でも、ロゼ夫人は好きなものを共有したいわけではないってこと。
そして、アスガルさんは優秀な部下を共有したくないと言うことで、ネロは好きな人を共有したくないと言うこと。
どれも執着と独占欲に似たものだけど、求めているものは違うような気がするんだよな。
「独占したいって、どんな気持ちなんでしょう。」
独占するって苦しくない?
元居た世界にいた時、そんなことを思った気もしなくもないが、それをずっと思い続けるのが私にはつらかった気がする。
だって、私がそう思っているのとは別に、相手にも別の想いがある訳で、それを考えると独占するって、難しいと思うんだよね。
「チヒロちゃんは、譲れない物とかないの?」
譲れない物?
それが独占欲に繋がるの?
「譲れないものはあります。でも、それを説明するのは難しいと言うか…」
「うんうん。」
なんだろう…?
自分が嫌だと感じたら嫌だし、好きだと思えば好きだけど、それがずっと、そうという訳ではないし、それを人に主張したいとも思わない。
自分の譲れない考え方を、誰かに理解してもらいたいと思わないし、自分が理解していればいいと思っている。
だって、その譲れない物を他の人に押し付けるのは違うと思うし。
軽い言葉なら口から出るけど、自分の信じているものを他の人に言う必要はないと思うんだよね。
だって、自分が信じているものがあるのと同じように、相手も信じているものがあると思うから。
でも、これって独占欲と関係あるの?
「チヒロちゃんは、自分の心を抑えるのがうまいわね。それか、自分の気持ちを抑えないといけないと思っているのかしら?」
「え?」
「気持ちに振り回されない様に、必死になっているのかもしれないわね。正直、結構踏み込んだことを言っているのに…怒られちゃうと思ったわ。なのに、私に何も言わないどころか、質問返しをしてきちゃうんだもの。驚きよ。」
そう言えば、こんな赤裸々にロゼ夫人と、なんて話をしているんだ。
「私はね。独占欲を感じることは、悪いことではないと思うのよ。自分のモノにしたいと言う気持ちは、本能的に来るものだと思うの。」
「自分の欲が、人に迷惑をかけると言う事はないですか?」
だからこそ、恋愛関係というものは、ドロドロとするんだから。
「そうね。だから、独占欲とうまく向き合う事が大事なのかもしれないわ。」
「うまく付き合う?持たなければいいのでは?」
「本能的にあるものを、持たなければ…と考えるのは難しくない?」
…そうかもしれない。
「それにね。あるものを見ないふりをしてしまうと、それに慣れてしまって、自分が本来持っているものを忘れちゃうのよ。」
今のチヒロちゃんみたいに…ロゼ夫人にそう言われたような気がした。
私は、そういう欲を忘れてしまっているのか…
忘れようとしているのか…
「気持ちと向き合う事って、難しいわよね。私、本当に苦労したから。」
「ロゼ夫人も苦労したんですか?」
「したわよ。まぁ、その話は置いておいて…でもね。チヒロちゃんが、それでいいと思えば、それでもいいの。気持ちを抑えることで自分を保てる人もいるからね。でも、もし、そういう欲に対して、恐れているのであれば、恐れなくても大丈夫って伝えたくて。余計なお世話だったかしらね。」
そうか。
「いえ、ありがたいです。正直、自覚が全然なかったので、指摘されて初めて気が付きました。ありがとうございました。」
好きという話題が思わぬ方向に進んだけれど、ロゼ夫人には感謝しないといけないな。
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