402話 パーティの個性は主催者の個性
アスガルさんに、魔水魚の串焼きの小分けを渡す。
「アスガルさん、どうぞ。」
「ありがとう。」
小分けパックに入っている串焼きをアスガルさんがじっと見つめている。
そして、串を一本持って口元に運んだ。
アスガルさんの口に合うかな?
「どうですか?」
「これは…」
どうだろう?
「何をそんなに心配しているんだい?」
「自分の薦めた物なので、お口に合うかなと。」
自信を持って美味しいと薦めているとはいえ、味覚って人それぞれじゃん?
だから、どうだろう?
「うまいな。おいしい。魔力を保有している魚って、こんなにうまいんだね。」
良かった。
私が作った訳じゃないけど、おススメしたものを褒められると、私まで嬉しくなっちゃう。
「あら、ありがとう。魔水魚、私も好きなのよね。」
「ロゼ夫人も魔水魚の料理を食べるんですか?」
プティテーラの料理だから当然だろうけど。
「そうよ。生も、焼いたものも、煮たものも好きよ。それに、私は串焼きも好き。」
「そうなんですね。」
「意外かしら?」
それは、まぁ、意外かも。
アスガルさんが串に噛り付いている様子は想像できないけど、ロゼ夫人が串に噛り付いている様子はさらに想像できない。
「意外そうね。私もおいしい物は好きよ。周りの目というのもあるけれど、美味しい物は美味しいのよ。そうじゃない?」
「そうですね。」
「…チヒロちゃん達が食べているのを見たら、私も食べたくなってきたわ。」
そうして、ロゼ夫人も食事スペースを物色し始めて、魔水魚の串を手に取った。
「ロゼ夫人もここで串を?」
「私、こういう所で食べるの、結構好きなのよね。ギョッとされることが多いんだけど。」
「私もロゼ夫人が、串に噛り付いていたら、驚くかもしれません。」
「やっぱり?でも、アルビナ達がせっかく用意してくれたのに、こういうのは手を付けるべきだと思わない?」
それはそう。
出してもらったものは、残さず食べるのが出してくれた人への敬意だ。
でも、こういうパーティにも当てはまるのかな?
「ほら、チヒロちゃんも食べて。」
ロゼ夫人に促され、私も魔水魚を口の中に再び入れる。
食欲促進委員会、必要だったかな?
ロゼ夫人が食べるのであれば、私は必要ない気がします。
案の定、ロゼ夫人が食べ始めたことにより、食事スペースの周りに人が集まり始めた。
そして、食べ物を覗き込み、お皿を持ち始める人が増えたみたい。
おいおい…やっぱりロゼ夫人の影響力が凄まじい。
「あら、賑わってきたわね。」
「…そうですね。」
これで、こそこそとご飯を食べる必要が無くなったため、堂々とできる。
「これで気にならなくなるでしょ?」
ニッコリと笑うロゼ夫人。
ロゼ夫人!
「ありがとうございます。」
「いいえ。それにね。私たちの様子をうかがっている人たちの中に、ここに置かれた食べ物が気になっている人たちもいたのよ。そういう人たちも、気にしないで食べられるようになればいいわよね?」
食事スペースの盛り上がりをロゼ夫人は嬉しそうに見ている。
アルビナ令嬢たち主催の婚約パーティだからかな?
「好きに食べて。」
「ありがとうございます。」
魔水魚うまぁ…
「夫人、ここにある料理たちは、プティテーラの郷土料理か、なにかか?」
「そうよ。アルビナとシン王子が好きな物がたくさん置かれているわね。好きなものを前面におススメしたいんでしょう。」
まぁ、カップ麺があるし、そう言われると納得しちゃうかも。
そうか。
「味も見た目も二人の好みそうな感じ。こういう所、まだまだ可愛いわね。」
「可愛い…ですか?」
「パーティの主催って、その人の個性が出るじゃない?アルビナもシン王子もしっかり個性を出しちゃって。周囲を楽しませつつ、個性を出すのは、結構大変なのだけど、あの二人らしくていいんじゃないかしら。」
そっか、パーティって、開催する人によって、全然違うのか。
面白いかも。
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