401話 ミッション2 食欲促進委員会
「分かったよ。食べさせて貰おう。どれから食べるのが良いんだい?」
そうだなぁ。
ウォーターフルーツは、おやつみたいなものだし、フレーブもガッツリ系だと思う。
だとしたら、一番初めに前菜の魔水魚。
もちもちとみずみずしい水団子を挟んで、その後にフレーブ。
最後にウォーターフルーツじゃないかな?
「決めました。」
おススメの順番を指さす。
「分かった。一番初めが魔水魚だね。」
アスガルさんにおススメをした後に、自分の食べる物も選ぶ。
これは、魔水魚を煮込んだのかな?
串焼きとは違う見た目をした、それを近くに置かれていた取り皿に乗せる。
本当に、本格的な立ち食いだな。
「この場でこの串に噛り付くのは、少し気が引けるな。」
「マナー違反の物を婚約パーティという場に置くことは、シン王子とアルビナ令嬢はしないと思うんですよね。」
「そうかい?」
いや、多分?
カップ麺をこの場で食べるよりは、魔水魚の串を食べる方がハードル低いと思うんだよね。
やっぱり、このカップ麺たち、どうやって食べるんだろう?
もしかして、このオブジェのように積みあがっているカップ麺は、本当に飾り?
「食べてもいいわよ。チヒロちゃん。」
ジッとカップ麺の方を見ていると後ろから声が聞こえる。
慌てて振り向くと、頬に指を指され、ぷにぷにと押されている。
「何をなさっているんですか?ロゼ夫人。」
「料理に釘づけのチヒロちゃんを見つけた物だから、つい声を掛けちゃった。」
ついって…
それに、ロゼ夫人は、なぜこんな所に?
侯爵夫人が会場に入ってきたら、もっと賑やかになると思うけど、そんな気配なかったよね?
「今回の主役は、私たちではなく、シン王子とアルビナでしょ?だから、こっそり会場入りしちゃった。だから内緒ね?」
内緒と言いましても、存在感は隠せませんので、周りにいる人たちは、凄くこちらが気になっているみたいですけど。
隠れてこそこそご飯を食べようと思ったのに、めちゃくちゃ目立ってます。
「バルドル公爵は、いないんですか?」
「バルドルも誘ったんだけど、断られちゃった。」
そりゃそうだろう。
全然、忍べていませんので。
「チヒロ?」
アスガルさーん。
ネロ!
ネロは、ロゼ夫人の顔を見るとギョッとした表情に変わる。
なんでいるんだと言った所だろうか?
「ネロ君?あと…どなた?」
アスガルさんは、少しだけ様子を見ると、にっこりと微笑んだ。
さすが理解が早い。
クヴェレ殿下とお話しただけのことある。
「ロゼ夫人。この人は、コスモスから来た私とネロの上司のアスガル・ビルロストです。そして、アスガルさん。こちらは、シュルーク公爵家夫人のロゼ・シュルーク様です。」
こういう紹介、このパーティに来て何度目だろう。
そろそろ、定型文が出来つつあるんだけど…
「チヒロちゃんとネロ君の。なるほどね。初めまして。シュルーク公爵家のロゼ・シュルークです。チヒロちゃんとネロ君には、娘がお世話になりまして、仲良くしてもらっているんです。」
「初めまして。アスガル・ビルロストです。部下がお世話になっているようで、ありがとうございます。シュルーク公爵夫人。」
再びニコニコと笑い合う両者。
もういい、もういい。
「あの…ロゼ夫人。ここにあるものって食べてもいいんですか?」
「いいのよ?シン王子とアルビナがせっかく用意したんだから、食べて欲しいわ。食べないで残ってしまうと、廃棄するしかなくなってしまうでしょうし。」
廃棄?
この量を?
もったいないんですけど。
「だから、食べて。」
「ありがとうございます。」
お皿を一枚貰い、先ほど気になっていた魔水魚の料理を乗せる。
ご飯にありつけた。
「こんな所で食い意地を張るな…」
「ネロこそ、手に持っているものをよく見てから言いなさい。」
ネロは、さっそくウォーターフルーツを手に抱え、チューッと吸っている。
なぜ、それで食い意地を張るなと私に言うんだ??
「チヒロ、ネロ…君たちね…」
「私が勧めたんだもの。食べて貰えないと悲しいわ。それに二人には、食欲促進を図ってほしいもの。頼むわね。」
口の中に魔水魚の塊を入れて、ロゼ夫人の方を見る。
ここでも食欲促進委員会か。
任せてください。
美味しい物を美味しそうに食べるミッションは、簡単なので!
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