399話 カップ麺のオブジェ?
アスガルさんを連れて、私とネロはパーティ会場内のお食事スペースへと移動する。
もちろん、お食事スペースは、フロアの端の方にある訳だが。
「ここ落ち着きますね…」
「結局、ここに行きつく訳か。」
いやぁ、壁際が落ち着くけども、今回はそうではないんだよ。
ご飯食べに来ているんだし。
壁際に置かれた机の上には、様々な料理が置かれている。
いくつもの料理が置かれてあり、好きに持って行っていいみたい。
プティテーラに来て、見たこともない料理も置いてあるな。
食事スペースと言っても、立って食べられるように小分けにしてあり、細かい気遣いが伺えた。
一つだけ、気になるものがあると言えば、あるんだけど。
アスガルさんも気になったのだろう。
「ラーメンが置いてあるんだけど、プティテーラの名産か何かかい…?」
「これは、シンの仕業だろうな。」
婚約パーティの食事に、なぜラーメン?
それに、ラーメンの種類も豊富なんだけど。
そして、机の端の方には、カップ麺が置かれている。
それもタワーのように積みあがっており、婚約パーティ会場を飾る一種のオブジェのようになっている。
立って食べるには不向きだと思うんだけど…?
この会場でカップ麺をどうやって食べさせるつもりなんだろう。
気遣いが凄まじいと思ったが、ちょっと撤回してもいいだろうか?
「シンの仕業?」
「シン王子、カップ麺が大好きなんですよ。それもゲテモノ食いです。」
「王子がラーメンを食べるのかい?しかもカップ麺?」
アスガルさんは、きっと頭の中が混乱しているだろう。
「それにゲテモノ食い?」
「不思議な味のカップ麺を持って来て、食べさせて貰いました。」
とても甘いカップ麺。
「あれは、うまかっただろ?」
違うよ。
あれは、甘かったんだよ。
ネロは、甘いもの好きだから、食べられたんだよ。
まぁ、ネロはとてもおいしそうに食べていたから、何も言えませんが、私はもう食べないかな。
「ゲテモノ食い…ところで、王子と一緒に食事をする機会があったのかい?」
シン王子とは、結構、一緒に食べているんじゃない?
プティテーラを案内してもらう機会も何気に多かった。
月の約束の冒険に行く前は、シン王子とのかかわりが一番多かっただろうし、宿泊施設に訪れるのもシン王子がダントツだった。
ナトゥラから帰ってきた後は、シン王子もアルビナ令嬢との婚約に奔走していて、忙しくなってしまったし、あまり会う機会もなかったけど。
それに、シン王子に頼まれたとかで、毎日のようにクラト公子が宿泊施設を訪れてくれていたよね…
「プティテーラを案内してもらった時に、一緒に食べました。」
「案内?王子に案内をしてもらったのかい…?」
「いや、シン王子が私とネロが滞在している宿泊施設にたまたま訪れられまして…その時に時間があるなら…案内してやるよ…的なことを言ってもらったので…」
いや、待って。
この発言、実際に様子を知らない人からすると、だいぶマズイ発言じゃないか?
そもそも、王子とご飯を一緒に食べる機会があるのも、おかしな話だよね。
「はぁ。シン王子の様子から見るに、チヒロ達とあの方たちが、仲が良いのは本当だろうが、そういう事ばかりじゃないからね?ちゃんと気を付けること。いいね?」
「気を付けます。」
やっぱりシン王子たちとの関わり方を心配してくれていたんだな。
有難い。
「ネロもちゃんと見ていてあげてね?」
「あぁ。チヒロの教育係として、基本は口を出さないが、危険だと思ったら、すぐにでも引きはがす準備はしていたさ。」
そうなんだ。
ネロが私のことをしっかり見てくれているのは、知っていたけど、ネロはそんなことを考えていたんだなぁ。
「でも、プティテーラの王族の人たちは、チヒロのことが好きみたいだね。一緒に話している時も様子を見ていたが、楽しそうにしていた。だから、チヒロの交友関係まで口出しするつもりはないから、安心してくれ。」
「心配してくれたんですか?ありがとうございます。」
「プティテーラに送り出したのが、僕なんだ。目を配るのは、当然のことだろう?」
本当にいい上司を持ちました。
「さて、なにがおススメなのか、教えてくれ。一緒に食べよう。」
「はい!」
心の中が温かくなるのを感じ、アスガルさんに促された私は、机の上に置かれた料理を物色するのだった。
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