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392話 目に見えない世界の壁


「チヒロ、ネロ。来てくれたんだな。」

「招待に応じてくれてありがとう。」


綺麗なドレスに身を包んだアルビナ令嬢といつもと違う正装のシン王子。

マジで、見た目がいいな。


「シン王子、アルビナ令嬢、おめでとうございます。私も今日ここに来られたことを嬉しく思います。」

「巻き込まれまくったからな。最後くらいはしっかり見ておきたいだろ。」


こらこら。

ネロ、思っていてもそんなこと言っちゃダメでしょ。


「ん?そちらの方は?」


私とネロの後ろにいたアスガルさんの方を見て、首を傾げる。


「シン王子、アルビナ令嬢。こちらは、コスモス観光部部長のアスガル・ビルロスト。コスモスの観光部を取り仕切る人です。私とネロの上司に当たる人で、プティテーラでの観光のお仕事を紹介してもらいました。今日はお二人の婚約パーティに参加するために、プティテーラに来たそうです。」

「そうだったのか。チヒロ達の上司でプティテーラへ二人を…なるほど。アスガルさんでいいですかね?シン・フォルモント。よろしくお願いします。」


シン王子は、アスガルさんに向かって、手を差し出す。

その手を少し眺めて、アスガルさんはシン王子の手を握り返した。


「アスガル・ビルロストです。チヒロとネロがお世話になっております。」

「…アスガルさん。そんな怖い顔をしないでください。二人には何もしませんよ。友人ですから。」


緊張じゃなくて、何かを警戒した顔だったのか。

まぁ、アスガルさんは、いつも飄々としていて、緊張とは無縁な感じがしていたから、プティテーラでのアスガルさんのふるまいには、驚いたけど。


「なんのことですか?お世話になっているみたいなので、僕は安心しています。二人から聞く話によると、だいぶ仲良くやって貰っているみたいなので。」

「いえいえ、お世話になったのはこちらの方。チヒロとネロには、助けられました。」

「なら良かったです。」


二人の間に火花が見えるのは気のせい?


「なんで、こんなにバチバチしてるの?さっきまで、王族と知り合いになった私たちを見て、顔引きつらせていなかったっけ?」


目の前でバチバチとやっている二人を横目に、ネロにそっと耳打ちをする。


「アスガルが王族に対して、怯えるわけがないだろう。今までも観光部の部長として、いろんな立場の奴らと会っているんだからな。だけど、世界によって考え方やあり方というのが違う。王族というのは、ある意味その世界のルールだ。気に入らなくて首をはねる王族も今までいたそうだし…そう言った意味で警戒しているんだろうな。」

「プティテーラの王族の人たちに気に入らないで首をはねられたら、私は何回死ななくてはいけないんだろ。…じゃあ、アスガルさんは、好き放題した私たちのことを心配してくれていると言う事?」

「まぁ、そういう事だ。」


ふーん。

そっか。

良い上司を持ったものだ。

でも、紹介した手前、そこまでバチバチされると困っちゃうんだけど。

一応、アスガルさんの目の前にいる人は、婚約パーティという晴れ舞台だし。


「そういえばさ、コスモスってどんな立場なの?異世界の人たちにとって。」

「さあな。コスモスのことを偉大な世界として崇めている世界もあれば、ゲートを通じて対等なやり取りをする世界もある。」

「でも、コスモスが営業を掛けに行ってゲートを開いてもらうと言ってたよね?」


ということは、コスモスにとっては、異世界ってお客さんということにならない?

だから、アスガルさんもプティテーラやミシュティの王族の人たちに気を使っているのかと思ったけど。


「確かに営業はかけるが、一方的なやり取りが存在する訳ないだろ?慈善事業ではなく、観光部は仕事だからな。そもそも、時空を超えるゲートが存在すること自体がコスモスの強みだろ?そんなものそうそう作れない。」


ゲートは確かにすごい。

なんか背後の関係を見ると、人間関係もだいぶ変わりそうだよなぁ。


「何こそこそと話をしているの?」

「び、びっくりしたぁ…」


ネロとこそこそと話をしていた所に、二人の言い合いで暇になったアルビナ令嬢がいたずらを仕掛けるように、ニョッと私たちの傍に寄ってきた。


「そうよ。プティテーラにはそんな技術はない。だから、コスモスの観光部の方たちは、プティテーラにおいて、重要な客人という対場になるわね。だから、チヒロは私たちに気を使い過ぎね。」

「あいにく、王族の人たちと関りを持った経験がそんなにないもので、慣れないです。」


コスモスと異世界の関係って、思ったよりも複雑なのかも。

こっちが気を使ってなんぼだと思っていたけど、そうではないらしい。

だから、ネロは王族相手に敬語がないときがあったんだなぁ。


「でもちょっと待って。」

「なんだ?」

「そういう事は早く言ってくれてもよくない?今まで必要以上に気を使ってきたっていう事?」

「気を使い過ぎて、警戒するくらいがチヒロには、ちょうどいいだろ?気が抜けるとマシンガンでボロボロと言いたい放題になるんだから。」


それは否定できない。

前科があるから。


「それにさっきも言ったが、その世界の在り方による。ミシュティやプティテーラでは、いい関係を築いたかもしれないが、他の世界ではどうなるか分からないだろ?気を使い過ぎるくらいでちょうどいいんだよ。」



アスガルさんが、王族のシン王子相手に、隙を見せない様にしているのもそういう事だろう。

ここにきて改めて、世界の壁を感じた気がする。

読んでいただき、ありがとうございます!


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