390話 アスガルさんは育児疲れ?
クヴェレ殿下と別れて、再び婚約パーティの広い会場に戻ってきた。
「まずはアスガルさんを探さないと。」
「アスガルならあそこにいるぞ。」
ネロが指す方を見ると、アスガルさんが壁際にそっと佇んでいる。
なんか疲れてる?
「アスガルさん、おつかれ様です。」
「あぁ、帰って来たのか。」
なんか、やつれましたか?
「育児疲れじゃないか?」
育児疲れ?
まさか、リカちゃんとリオ君で?
「ははは…あのくらいの年齢の子たちは、本当に元気がいいね…」
私とネロがクヴェレ殿下から呼び出しを食らっている間に、一体、何があったと言うのだろう?
「リカちゃんとリオ君は、もうナンナル王子と一緒に?」
「あぁ、第二王子がしっかりと迎えに来ていたよ。」
「クヴェレ殿下は割とすぐにアスガルさんの所にナンナル王子が向かうと言っていたのですけど…違ったんですか?」
「割とすぐに迎えに来たが、その後ずっと俺が相手をしていたが?」
あぁ、そうなんだ。
もしかして、アスガルさんが、ナンナル王子に遊ばれた?
なにそれ、凄くその様子を見たいんだけど。
リカちゃんとリオ君に振り回されるアスガルさんを眺めるナンナル王子。
すごく面白そう。
「失礼なことを考えているな。」
「いえ、別に。」
危ない。
ナンナル王子は、アスガルさんで遊べるかもしれないけど、私はアスガルさんに遊ばれる方だから、下手なことは触れられないわ。
「それで?王配殿下とは、話が出来たのか?」
「はい。それはもう。しっかり呼び出されて、話をしてきましたとも。」
さぁ、何でも聞いてください。
クヴェレ殿下ともしっかり打合せしましたよ。
「何、聞いてほしそうな顔しているんだい?」
「そんな顔してませんよ?」
「王配殿下がお前たちを二人、ここから連れ出したんだ。聞いたところで、何も答えないだろう?」
せっかくアスガルさん対策したと言うのに、アスガルさんは聞いてもくれないのか…
「なんだい?その顔は。聞いても答えないものをわざわざ聞く必要があるのかい?」
「ちょっとくらい乗ってくれてもいいじゃないですか。」
「見てわかる通り、僕はゲッソリだよ。チヒロに乗っかる気力があるなら、蓄えた方が得だろう?」
ダメかぁ…
部下がこんなにもワクワクと話を切り出したと言うのに。
「それに、チヒロには既にもう振り回されている。」
「そうなんですか?」
「あぁ…貴族、王子、王配殿下。チヒロが彼らを相手にしている時、とてもヒヤヒヤした。心臓に悪い。もう何が起きても驚かないよ…」
「アスガルさん…私も心臓に悪かったです。」
いろいろやらかした自覚はあるので、さすがにクヴェレ殿下からの呼び出しには肝が冷えました。
「ネロ。チヒロは大丈夫なのか?」
「あぁ、順調にチヒロ節を炸裂させているさ。」
「それは、大丈夫なのか?」
「今のところ何とかなっている。」
チヒロ節って…
しかも今のところ何とかって…
言いたい放題じゃないか。
「それにまだまだ呼び込むだろうな…」
「そうなのか…」
そうなの?
「お前のことを話しているのに、なんで不思議そうにしているんだ?」
「王配殿下まで出てきたら、もう驚くことないでしょ。王配殿下としゃべる機会が持てるのもそうそうない訳だし。」
「シンや令嬢もこれから来ると思うが?」
それはもちろんシン王子とアルビナ令嬢からこのパーティの招待状を貰ったし、しっかり挨拶するつもりだけど。
「殿下と話していたから、だいぶ時間が経ったみたいだな。シン達が来るのもそろそろか?」
「あ、そうかも。」
楽しみなんだよな。
二人が、このパーティに現れるの。
クヴェレ殿下と話して良かったかも。
話していなかったら、緊張でどうにかなってしまいそうだったから。
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