389.5話(11)クヴェレSaid 俺の目を奪っていく女性は…?
バルドル様の言葉通り、俺は太陽の街主催の仮面パーティに参加した。
太陽の街主催の仮面祭はプティテーラ全体が盛り上がる。
いろんな場所で仮面パーティが開かれるのだ。
そして、俺はバルドル様の紹介の仮面パーティに参加することにしたのだ。
いままで仮面パーティに参加したことなんてなかったけれど、本当にどこを見ても仮面をつけている人で溢れている。
誰でも参加することが出来るパーティだが、誘ってもらわなければ、来ることもなかっただろうな。
「王女様は、大丈夫だろうか…」
王女様と離れてパーティに参加しているということに、違和感を覚える。
ある意味、休暇だもんな。
俺は、会場の隅で、会場全体を見渡した。
ここに参加したら、俺の悩みが解決するとバルドル様は言っていたが、それは本当なのだろうか…?
俺のイメージ、仮面祭はともかく、仮面パーティは社交の場…
出会いの場だと思っている。
俺が、誰かと出会ってどうすると言うのだ?
そう思うと、とても気が重い…
仮面をしていることによって、みんな同じ顔に見えてきた…
人も多いな…
「あの…」
ん?
「こんにちは。」
声の方がする方を見ると、目の部分に仮面をつけた女性。
もしかして、俺に話しかけているのか…?
「こんな隅にいて、どうかしましたか?」
俺に話しかけているな…
彼女は、優しそうに微笑んでくれている。
こういうのは、仮面パーティの醍醐味なのかもしれない。
それにしても、こんな端にいる俺に声をかけてくるなんて何か用だろうか?
「いえ、こういう場所に不慣れなもので…」
「そうなのですか?佇まいから、こういう所に慣れているのかと思いました。」
「こんなに端で会場を見ているのに…ですか?」
「佇まいというか…立ち姿や所作…そういった細かい仕草ですかね?」
仕草か…
それは、セレーネギアにいて鍛えられているから、そうなるのだろう。
ただ、俺の仕草は、こういう場所に慣れていると言うよりも、使用人の目立たない所作だと思うのだが…
「一つ一つの動きがとてもきれいで…目が離せなくなりました…私の他にもあなたを見ていた人がいましたが、声をかけるのを戸惑っていました。」
「なぜでしょうか…?」
「あまりにも綺麗だったからじゃないでしょうか?でも、私は声を掛けちゃいました。だって、貴方のことが知りたいと思ったもの。見ているだけでは、貴方のことを知ることはできないわ。」
俺のことを知りたい…?
「大したことはしていませんが、動きが綺麗だと言ってもらえたこと、嬉しく思います。」
「それだけではないですよ。貴方はかっこいいです。」
綺麗、カッコいい…
そう言われるのは、悪い気はしないが、顔も見えないのにカッコいいとは、どこを見てそう判断していると言うのだろう。
それに、俺の動きが綺麗ならば、王女様はどうなってしまうんだ。
俺が動きに見とれたことがあるのは、王女様ただ一人だからだ。
バルドル様もロゼ様も美しい所作と佇まいだが、俺が一番美しいと思ったのは、王女様だった。
「もしよかったら、私とパーティを過ごしてもらえませんか?」
彼女の言葉に、俺は一瞬固まってしまった。
これは、もしかして俺は誘ってもらっているのか…?
まさか、こういう場でこういう声の掛けられ方をするとは思わなかった…
もしかして、俺の悩みとはこういう事だったのか?
バルドル様は、女性と過ごしてみろと言いたかったってことなのか?
彼女を見ながら、頭の中でバルドル様の言葉を思い出す。
「ねぇ。」
彼女を観察していると、また別の声が俺を呼んだ。
その声は、俺にとって耳馴染みが良く、そして心地の良い声だった。
勢いよく、そちらを向く。
「もしよかったら、私と遊ばない?」
目元だけを隠した仮面をして、俺に声をかけてきた女性。
「あの…私が先に声をかけていたのだけれど…」
「ごめんなさい。私も彼が気になってしまったの。だから、彼に決めてもらいましょう。」
そう言って最初に声をかけてきた女性を制し、自信のありそうな顔で俺のことを見る。
思わず、笑いがこぼれてしまった。
「俺のことを綺麗と…カッコいいと言ってくれてありがとう。でも、ごめん。こちらの女性と過ごしてもいいでしょうか?」
俺が選んだのは、後から声をかけてくれた女性。
最初に声をかけてくれた女性に断りを入れると、その女性はどこかに去って行った。
後から声をかけてくれた女性の方を見る。
「女の子に声を掛けられて、デレデレしていたところ邪魔してごめんなさいね。」
「そう見えたのなら、目を医者に診てもらいましょう。」
気づかないはずない…
俺が目を奪われる女性…
王女様の事を。
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