389.5話(7)クヴェレSaid 俺は王女様の使用人である
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「クヴェレ、早く来てこれを見て。」
「王女様、相変わらず、イタズラに精が出ますね…」
俺が初めて参加したパーティから、しばらく経った。
相変わらず、王女様はやんちゃを繰り返していたけれど、それがあの凛々しい王女様反動だと思うと、なんだか愛おしく思う。
こういうお転婆な王女様もあの時の凛々しい王女様、どちらも俺の王女様なのだ。
そうして、俺と王女様の関係は日々変わらず過ぎて行った。
しばらくしてプティテーラでも大きな出来事があった。
「王女様…王女様…」
プティテーラの王妃様が亡くなったのだ。
「王女様!」
「何、どうしたの?そんなに慌てて。」
部屋の中にいた王女様は、優しそうに笑っていた。
プティテーラの王妃様が亡くなった…それは、王女様の母親が亡くなったと言うことだ。
王妃様と王女様は、仲が良かった。
王女様が、自由に過ごしているのは、王様と王妃様のおかげでもある。
その王妃様が亡くなったのだ。
「何その変な顔。」
「王女様…大丈夫ですか?」
何を心配しているのか言葉にできないけど、この言葉が流れ出た。
「そろそろ時間だし行くわ。最後にお母さんに会ってこないといけないし。」
「王女様…」
そう言って、王女様は部屋から出て行ってしまう。
俺は王女様を追いかけた。
王妃様のお別れの場には、使用人は入れなかったが、少しでも王女の傍に居たかったのだ。
プティテーラの王族は、代々、セレーネギアの地下に眠る。
俺は、地下に繋がる部屋で王女様が出てくるのを待った。
どれくらい時間が経ったのか分からないけど、それでもずっと王女様が出てくるのを待ち続ける。
しばらくすると、地下から何人かが出てきた。
俺は、頭を下げ、その場で待ち続けた。
「あれ?何をしているの?」
「王女様…?」
「なに?私のことを待っていてくれたのかしら?」
最後に地下から出てきた王女様は、これまたケロッとした顔で笑っていた。
「なんで…?」
なんでこの人は、こんな時にも笑っているんだ…?
なんで泣かないのだろう…
「なーにー?もう。ほら、行くよ。」
俺の手を引っ張って、外へ出た。
全くいつもと変わらない様子に、逆に俺が戸惑った。
いつも通りイタズラも健在…
なのに、何かが違うような気がした。
「おはよう、クヴェレ。」
「王女様…今日は、早いですね。」
「目が覚めたのよ。なに?今日も虫と握手がしたかったの?」
王女様は、何か変わった。
でも、王女様は絶対につらいとも苦しいとも言わなかった。
だから、これ以上、俺が王女様に踏み込んでいいのか分からなかった。
これは使用人の仕事なのだろうか…
王女様を心配する…これは、俺のエゴなのだろうか…
「クヴェレ、元気にしていた?」
「久しぶりだな、クヴェレ。」
「ロゼ様…バルドル様…」
お二人に会うのは久しぶりかもしれない。
王妃様が亡くなって以来、この二人とも王女様は会っていない。
会わない様にしているわけではない。
ただ、会う機会がなかっただけ。
「トリウェアは、元気にしているか?」
「…はい、元気にしています。」
本当に、王女様は元気にしているのだ…
「そう。私たちに言えないことでも、クヴェレになら話をできるかもしれない…トリウェアのことをよろしくね。」
「私が…ですか…?」
お二人が俺に何を期待しているのか分からない。
俺は、ただの使用人にすぎないのだから。
「おい、クヴェレ。よく自分のことを使用人だと言うな。」
「…?はい。その通りですから。」
「何を言い聞かせているんだ?使用人だと言うことは、お前が言わなくてもみんな分かっていることだ。なのに、お前は何度もその言葉を言う。なんでなんだろうな。」
バルドル様が言いたいことが分からない。
でも、俺に何かを伝えてくれようとしているのは、確かだ。
自分が使用人だと、俺は言い聞かせている?
何のために?
そんなこと自分でも分かっている。
わざわざ自分に言い聞かせる必要なんてないはずだ。
バルドル様が…ロゼ様が俺に何かを伝えようとしてくれているのに、どうしてわからないのだろう…
そして、どうして分かりたいと思うのかも、俺には分からなかった。
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