389.5話(5)クヴェレSaid 王女様のエスコート役になりました
「あの…パーティに行くと言いましたけど、こんなに聞かざる必要がありますか…?」
俺は、今は、王女様とバルドル様とロゼ様に囲まれて、着せ替え人形になっている。
「何を言っているの?パーティなんだから、着飾るのは当然でしょ?」
「王女様…いつも私になんて言っているか、覚えていますか?」
王女様をパーティに連れて行くのは一苦労なのだ。
まず、パーティ前にどこかへ消え、見つけたかと思うと、体中は汚れでドロドロ。
綺麗にしたかと思えば、パーティ用のドレスをなかなか着てくれない。
俺には、そう言うお手伝いが出来ないから、王女様を捕まえて使用人たちに預けたら、仕事が終了になる。
そして、他の使用人たちが必死になって王女様のパーティ準備を終えるのを待って、着飾った王女様をセレーネギアから見送ることしかしていないが、本当にいつも大変そうだ。
そして、なぜが服を剥かれて、三人の前に立ってなくてはいけないのは、なぜだろう…
「私のことはいいのよ。」
「使用人たちが、いつも泣いてますよ。」
王女様がスムーズに社交の場に出てくれることを願っていると思います。
「それにしても、いい感じにできたんじゃないか?」
「そうねぇ…これなら、大丈夫じゃないかしら?」
バルドル様とロゼ様は、俺を見て感心しているようだが、何が大丈夫なのだろうか?
「そうね…まぁ、いいでしょう。」
だから、何がでしょう?
「クヴェレ、私のことをエスコートしなさい。」
「はい?」
この王女様は、本当に俺を振り回すことが好きらしい。
パーティに参加するだけでもどうかと思うのに、俺に王女様のエスコートだと?
「あの…聞いてませんが…?」
「言ってないもの。」
この…
シレっとしていると言うことは、もともとそう言う予定だったと言う事か…
「ここまで来て、引けないわよ?だって、私のエスコート役がいないとまずいでしょ?」
「俺の記憶によると、王女様がエスコート役に誰かを連れて社交パーティに参加したことありましたっけ?」
何かと理由を付けて、相手を付けずに参加していた気がするけれど。
「そうだったかしら?でも、このままだと私の相手を勝手に見繕われてしまうわ。そんなの嫌だし。それならクヴェレがいいもの。」
「王女様…あのですね。王女様のエスコート役が誰なのか気になるは当然でしょう。」
「そうだとしても、周りはいつも強引だわ。私が後にこの世界の女王になるのだとしたら、それを支えられる人ではなくては、ダメなのよ。誰でもいいわけではないわ。」
確かに、王女様のこと支えてくれる人が、王女様の相手だと俺も嬉しい。
そして、王女様とその相手をずっと支えていけたら、いいと思う。
「そうですね。確かにそうだ。王女様にそういう方が見つかるまでは、私があなたの盾になる必要がありそうですね。」
「クヴェレ…まぁ、それでいいわ。終わったわ。納得してくれたのなら、私のことをちゃんとエスコートしなさい。」
ブスッと不貞腐れている王女様が手を差し出して来たので、それをそっと取る。
「丸く収まったみたいだし、みんなで行きましょう。」
「トリウェアが膨れているから、丸く収まってはいないと思うが…?」
「いいのよ。クヴェレを連れ出すことに成功したのだから。」
俺を連れ出すことが目的なのであれば、普通に言って欲しかったというものだ。
「ロゼ様、バルドル様、すみませんが普通に言ってもらえれば、納得はしましたよ?」
「それは、どうかしら。何かと理由を付けて断って来たでしょう?逃げ道をふさぐことは大事なのよ。」
ロゼ様…考え方が怖すぎますが…?
それでも、王女様のためになると俺が思えば、断ることも受け入れることもするだろう。
今回のパーティ会場がある太陽の街まで水馬車に乗り向かう。
「今日はよろしくね。クヴェレ。」
「王女様、かしこまりました。」
王女様の手を引き、会場内へと入っていく。
そこで俺は初めて、王女様の佇まいを見た。
そこにいたのは、いつもの暴れん坊で、やんちゃで、わがままな王女様ではなく、凛々しく、美しい、まさに社交の華と呼ばれるにふさわしい王女様だった。
美しく笑う王女様を見て、いつもと違う姿を見て、この方はこんなにも輝いていることを改めて知る。
俺が仕えてきた王女様がこんなにも美しく存在するとは思わなかった。
確かに、やんちゃ娘とは言われているが、王女様の悪いうわさは聞かなかった。
こういう場面で、王女という風格を示しているからこそなのだろう。
「この王女様に仕えることが出来てよかったな…」
使用人として、今後も王女様を守っていこう。
そして、王女様が幸せな未来を描くことを一番傍で見たいと思った。
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