4話 理解ができないときは、強制的に思考が停止するらしい
目を開くとさっきまで居たはずの自分の部屋ではなくて、草の上に放り出されている。
手にはスマホを持っているが、電池が切れてしまっているのか黒い画面から動かなくなっている。
しばらくボーッとしていたが、そんなことをしていても状況が変化しないことを悟り、取り敢えず音の強いほうへ歩くことにした。
だって生活音っぽいものも聞こえてくるし。
歩いていくと光が強くなっていき森を抜ける。
そこで私は言葉を失った。
開けたところにあったのは、天まで貫く巨大なビル。
それだけなら、理解ができたかもしれない。
そこには、車が空を飛び、噴水の水は意思を持っているかのように動き回る。
炎を手からだし、火をおこし、描いた絵が立体になって浮かび上がる。
そして動物の耳やしっぽをつけた人たち、むしろ動物ではないかという存在まで歩き回っている。
いやいや、ここどこ!?と内心ではパニックだ。
「やっと見つけた。」
「おい。きいているか?」
現状がよく分からず、きょろきょろ見回し何か手掛かりを探していると、顔に何かが当たった。
音のするほうに顔を向けると、そこにはなんかこうまん丸い翼の生えた…
「ん?猫?」
「虎だ」
「えっと?」
その小さい物体は虎だと言っていたが、サイズ感的に猫にしか見えない。
ごめん。
透き通るような濃い青の目を持つ、手のひらサイズの黒い翼の生えた黒い猫。
しかも、ぷかぷかと浮いている。
ほぼ思考停止している中、そこに自分の中ではさらにあり得ないものまで出てきたため、私の頭は処理することを諦めたみたいだ。
「絶対分かってないと思うけど、取り敢えずいい。アリマチヒロだよな」
「そうだけど。どうしてそれを?」
「コスモスに登録したんじゃないのか?」
「コスモス…あぁ!あの、行先自由、即日移動、サポート充実、金額無料の!」
「あぁ」
「した!そしたらいきなり光って気が付いたらこんなところにいて、何が何だか分かんないんだけど。ここがどこかも分からないし。」
真っ黒い画面のスマホを見せてながら言うと、黒猫は驚いたように私に近づいてきた。
「は?まさか、お前説明読んでないのか!」
「説明?」
そんなのあったっけなぁと思ったが、黒い画面のスマホでは確認ができない。
「とりあえず、こんなところじゃ、話が進まない。俺についてこい」
冷静に淡々と話を進める目の前の猫に従うほかない。