389.5話(1)クヴェレSaid 思い出話の後
ここから、クヴェレ殿下Saidが始まります。
過去編です。
チヒロさんとネロ君を部屋の中で見送る。
さて…
「そろそろ、出てきたらどうだい?」
部屋の大きな窓に向かって声をかけると、窓が開き、そこからトリウェアが入ってくる。
「気が付いていたんだ?」
「そうだね。外で聞いているのに気が付いていたよ。トリウェアを気が付かない訳ないだろう?」
「そう…」
照れながら、私の隣に座るトリウェアに、ネロ君も気が付いていたよ…とは、言えないな。
トリウェアも気づいていたかもしれないけど。
「私たちの話をしていたのね。」
「あぁ…シンが月の約束の件でお世話になったからね。」
「途中で乱入してやろうかと思ったわ。」
相変わらずの過激発言。
トリウェアが乱入して来たら、ネロ君はともかく、チヒロさんは固まってしまっただろう。
「やめてあげてよ。チヒロさんは、こういう場所に慣れてなさそうなんだから。」
「逆に、あの猫君は慣れてそうだったわ。でも、乱入したくなったのは、クヴェレが話をかいつまんで話していたからよ。クヴェレの鈍感な部分や情けない部分は、全部なくなっていたじゃない。」
当たり前だろう。
自分で話をしているのに、情けない部分なんて話が出来るはずないじゃないか。
「そこは、しかたないだろう?」
「さっきの話だと、すごくいい話にまとまっていたわね。さぞかし美化されて伝わった事でしょう。」
「とげがあるね…」
「私のことを散々、言ってくれたお礼よ。誰が、わがまま娘だったって?」
そこまで言っていない…
「いやいや…褒めていただろう?」
「どこが?」
「…やんちゃだったのは事実だろ?」
私もトリウェアのやんちゃぶりに振り回されたんだ。
「子どもの頃なんて、そんなものでしょ?今はさすがにしないわ。」
「もし、していたら、驚きだよ…」
そして、絶対にやめてくれ。
トラウマになる人たちが出てくるから。
「シンもやっと婚約ね。」
「そうだね。」
「私たちの時のことを思い出すわ。まぁ、シンとアルビナ令嬢ことを言えないくらい、私たちにもいろいろあったと思うけど?例えば、クヴェレの鈍感さとか鈍さとか、察しが悪いところとか?」
それは、ほぼ同じ意味ではないだろうか?
「あぁ、情けなかったところとか?」
「分かった。もう、言わなくても大丈夫だよ…」
「私も一緒に話したかったわ。月の約束の謎を解いた子でしょ?それにパーティの時も印象的だったわ。震えているのに、しっかり私の目を見てきて、キツイ体勢をキープし続けていた。周りに人がいなかったら、大笑いしていた所ね。」
それも絶対にやめようね。
驚かれてしまうから。
「婚約を果たすまでに一体何年かかったのか…結婚はスムーズにいって欲しいわね。そろそろ、代替わりも考えたい頃だし。」
「婚約を果たしてすぐに、代替わりは、さすがにシン達も予想外だと思うよ?」
「でも、私もそろそろ引退して、自由気ままに暮らしたいもの。」
大丈夫。
君はすでにとても自由に過ごしているよ。
「役割から解放されたいわ。せっかく異世界ゲートを開いたのだから、異世界旅行に行きたいもの。このタイミングで行かないで、いつ行くと言うのかしら?」
「いいタイミングを見つけて、一緒に行こうね…」
「もちろんよ。…やっぱり、あのコスモスの子たちと接触しておきましょう。そうすれば、異世界旅行に融通を聞かせてくれるかもしれないわ。」
あぁ…
チヒロさん、ネロ君すまない。
君たちは、トリウェアに巻き込まれることが決まってしまったかもしれない。
「そして、教えてあげるのよ。クヴェレが、いかに鈍感だったのか。」
「いやいや…」
「あんなに私が好意を伝えていたと言うのに、全く受け取ってくれないんだから。」
仕える主に好意を伝えられたら、使用人として鼻が高いだろうが。
自分のことを好きと言ってくれたとしても、恋愛的な意味があるとは思わないだろう。
トリウェアが隣でぶつぶつというのを置いておいて、トリウェアとの出来事を思い出した。
こんなことを考えるのも、息子が婚約するからか…
それとも、あの二人に思い出話をしたからだろうか…
読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!