389話 それぞれの月の約束の形
「パーティが終わってから、普段のトリウェアに戻って、またやんちゃ娘になった訳だったんだけど、ああいう姿があって、普段があると思うと、今までと違った気持ちで仕えることが出来るようになったんだよね。だから、私もこの人のために尽くそうと思って。」
クヴェレ殿下が、トリウェア女王を恋愛的に意識したと言うより、使用人としての覚悟が出来上がってませんか?
「ちなみにその時もまだ…?」
「恋愛的に意識なんてしてないよ。申し訳ないけど。いい主を持ったとすら思っていたから。」
だよねぇ…
聞いていて、そんな感じがしました。
「じゃあ、意識しだしたのは、いつから…?」
「…そうだな。しばらく経って行われた仮面パーティかな。」
ん?
今ちょっと、間があったような気がするけど。
「仮面パーティって、開かれている間は、何もかも関係なく参加できるパーティだろう?そのパーティに連れて行ってもらって、その時にトリウェアに会った。」
ほう!
「そして、トリウェアが私を見つけてくれて、一緒に過ごしたんだ。正直、夢みたいだったよ。そして、自覚した。…今だけなら…仮面舞踏会の間だけなら、その気持ちを持ってもいいと思った。だけど、パーティが終わってから、すぐにトリウェアに、今だけなんて許さないからと言われて。」
トリウェア女王、カッコ良すぎでは?
「あれ?でもそれだと、月の約束の石は、なんで…?」
「次期女王の相手として周りに認めてもらいたいと言う気持ちもあったけど、月の石を取りに行った理由は、自分のためかな。」
自分のため?
「私がトリウェアの横に立つために、取りに行ったんだ。周りを納得させることもそうだけど、自分を納得させるために。トリウェアのことが大切だと思う反面、どうしても、トリウェアに仕えていたという気持ちがどこかで、ずっと引っかかっていた。だから、自分を納得させるために、私は月の約束の石を取りに行ったんだよね。」
マニさんは、周りを認めさせるために…
シン王子は、大切な約束のために…
そして、クヴェレ殿下は、自分の気持ちに正直になるために、月の約束の石を取りに行ったんだ…
「二人とも行ったから分かると思うけど…だいぶきつかっただろう?」
はい…
足がもげそうだし、暗いし、熱いし…
一人だと心細くて、死にそうだったかも。
「本当にあるかもわからない物を取りに行ったからね。帰って来た時は、心はとてもスッキリしていたよ。そして、あの長い旅を経験したからかな。怖いものが無くなった。気持ちが振り切れたのかもしれないね。」
クヴェレ殿下の背中を押したのだろう。
月の約束…
本当に偉大。
「行ってよかったと思っている。そして、踏み出して良かったと思っているよ。大切な妻と息子が二人出来たから。」
クヴェレ殿下、本当にトリウェア女王とシン王子、ナンナル王子のことが大切なんだろう。
うーん!
良い話が聞けた。
「そして、息子たちに月の約束の話をしたとき、シンが興味を持っただろう?そして、令嬢と約束までしてきたと言うんだから、血は争えないね。二代揃って、月の約束を果たしているんだから。」
でも、トリウェア女王もアルビナ令嬢も、嬉しかったんじゃないかな?
分かんないけど。
自分のために必死になってくれる人がいると言うのは、救いなんじゃないかな?
「こんな話をすることなんて、ほとんどないから、新鮮だったよ。」
そりゃないだろうな。
王配殿下の恋愛事情を教えてくださいと言っているようなものだから。
「ありがとうございました。私も気になっていたことが聞けたので、嬉しかったです。」
「なら、良かったよ。お礼もできたみたいだしね。」
それ以上に受け取ってしまった気がするけど。
「さて、そろそろ戻ろうか。アスガルさんを待たせてしまっているしね。もし、何か聞かれたら、プティテーラの特産品を教えて貰ったと言っておいて。」
「はい。五大料理の話をしようと思います。」
「私は、しばらくここにいるよ。ナンナル達にもここに来るように、護衛に伝えてあるから。」
「分かりました。ありがとうございました。」
お礼を言って、部屋を出る。
アスガルさんの所に戻らないといけないな。
「いい話が聞けたね。」
「あぁ…」
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