388話 トリウェア女王とクヴェレ殿下
「いいリアクションだね。言った甲斐があったよ。」
そんなほのぼのと答えられても困る。
じゃあ、雫の一族の貴族様とお姫様の恋愛ではなく、使用人とお姫様が恋愛をしていたと言う事なの?
でも、待って?
生まれや血筋は大丈夫でも、身分の差はダメという事なのだろうか?
「自由恋愛なのに、使用人との恋愛はダメだったのですか?」
「ダメという訳ではないけど、仕えるべき主だからね。そもそもプティテーラでは、前例がなかったんじゃないかな?」
まぁ、物語の話の中でも、お姫様と使用人の恋愛の壁は厚い。
そのせいで、ごたごたに巻き込まれてしまうことも多々ある。
プティテーラでもそういうイメージでいいのかな?
でも、それを超えて、トリウェア女王を射止めたと言う事でしょ?
凄くキュンキュンしちゃう。
セレーネギアに仕えていたと言っていたけど、トリウェア女王とはどんな出会い方をしたんだろう?
待って、聞きたいことが次から次へと出てくる。
「ちなみに…なれそめとか聞いてもいいのでしょうか?」
「すでに聞く気だよね?」
もちろんです。
教えてもらえるのであれば、聞きたい。
だって、あのトリウェア女王とクヴェレ殿下だよ?
私は、グッと体を乗り出すと、クヴェレ殿下は苦笑い。
「初めて会ったのは、セレーネギア。私は子どもの時に、セレーネギアに来て王族に仕えることになったんだけど、使用人として挨拶をしたのが一番初めの出会い。トリウェアと年も近くて、遊び相手として連れてこられたんだろうね。」
トリウェア女王の遊び相手がクヴェレ殿下…
そういう使用人って女の人じゃないのかな?
「トリウェアは、当時とてもやんちゃでね。」
「やんちゃですか…?」
想像つかないな。
今は、オーラはまさに王族ですといった感じだもの。
「虫を鷲掴みして、笑いながら見せてくるくらいには、やんちゃっだったよ。」
「それは、嫌ですね。」
「だから、同性の遊び相手だとなかなかうまくいかなかった。それで、私が使用人兼遊び相手になったわけだ。」
トリウェア女王が虫を掴んで笑顔で寄ってくるイメージが出来ない…
というよりもしたくない。
「子どもの頃から遊び相手ということは、幼馴染だったということですか?」
「そうだね。トリウェアと私、それからバルドルとロゼ。小さい頃からよく遊んでいたんだ。」
「そこからどうやって発展していったんだ?子供のうちから出会っていたのなら、シンと令嬢のようになかなか発展しなかったのか?」
確かに。
ネロの言う通り、そこからどうやって発展していくのだろう?
「そもそも、私に恋愛感情なんてなかったからね。発展も何もなかったさ。使用人兼遊び相手として過ごしている時は、厄介なお嬢さんだと思っていた。」
じゃあ、発展しないじゃん。
でも、今は王配殿下ということは、何かあったっていう事だよね?
「仕えるようになって、何年も過ぎて、私がだいぶ大きくなった時に、パーティに参加したことがある。トリウェアの招待で。使用人がパーティに行く理由も分からなかったから、断ろうと思ったけど、バルドルとロゼが来てね。」
無理やり連れていかれたんだろうな。
「正直、肩身が狭い想いしかしないから、行きたくなかったんだけど…私はそのパーティで初めて、トリウェアが王族の一員としてふるまっているのを見たんだ。」
そう話してくれるクヴェレ殿下は、とてもきれいにほほ笑んだ。
意識しだしたのは、その時だったのかも。
「私と一緒に遊んでいる時は、はだしで駆け回るわ、虫を掴んで持ってくるわ、池の中に飛び込むわ…正直そう言う部分しか見ていなかったから、驚いたんだよね。その場にいるのは、一体誰だろうと…」
あれ?
「その時、意識しだしたのでは?」
「違うけど?」
違うの?
なんでよ。
そうだと思うじゃん。
「この人が今後、プティテーラの頂点に立つんだと思った時、納得したんだ。とても凛々しかったから。そして、そんな人と一緒に過ごしていたと思うと、使用人として誇りにすら思ったよ。」
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