387話 クヴェレ殿下と月の約束
「でも、シンはがむしゃらになって探していたから、ここまで私に聞きに来ないと思わなかったんだ。まったく、アルビナ令嬢のことになると周りが見えなくなる癖どうにかした方がいいよね。」
それは、ほんとうにそう。
シン王子なら、もっと冷静になれば、自力で閃いていただろうなと思う。
鋭い人だからね。
アルビナ令嬢のことになると、途端に一直線にしか進めなくなるのはどうにかした方がいいと思う。
でも、婚約も果たしたら、アルビナ令嬢に対しても余裕が出てくるのだろうか?
「焦っていたんでしょうね…」
「焦らないと素直になれないのは、我が息子としても、どうかと思うよ。」
まぁまぁ…
結果が良かったので、ご愛嬌ということで…
「でも、そうだよね。素直に君たちに聞きに行ったんだよねぇ…」
そんな羨ましそうに見つめられても困りますけど?
もしかして、クヴェレ殿下も親バカ分類の人か?
「でも、クヴェレ殿下は、聞きに来るまでは、何かを話すことはなかったんですね。」
「そうだね。私もそれなりに苦労はしたし、シンも取りに行くなら覚悟が必要だと思ったからね。」
シン王子がクヴェレ殿下に聞きに行っていたら、ちゃんと答えてあげたと言うのだから、クヴェレ殿下はやっぱりシン王子に甘かったという訳だ。
月の約束の冒険の最中にも、ずっと思っていたけれど。
でも、クヴェレ殿下も苦労して取りに行ったんだ…
やっぱり、なんでそこまでして取りに行ったのか気になる。
クヴェレ殿下も雫の一族の一員だった。
そう考えると、無理して取りに行く必要がない気がするんだよね。
行って分かったけど、何も知らずに行けば、命の危険にさらされるだろうし。
そんな未知の場所に苦労してまで行くんだから、きっと理由があるのだろう。
「他には、聞きたいことあるかい?」
「えっと…」
よし。
ここは、思い切って聞いてみよう。
「クヴェレ殿下が、苦労してまで月の約束の結末を見に行ったわけをお聞きしてもいいでしょうか?」
ちょっと踏み込み過ぎた質問だと言うのは、自覚あるんだけど。
「いいよ。私のことだし、答えようか。私のことは、どこまで知ってる?そんな質問をしてくるんだ。誰かしらから、聞いているんだろう?」
「元々は、雫の一族の方だと聞きました。」
そして、トリウェア女王と結婚を果たしたことで、クヴェレ殿下の出身カスカータ家が雫の一族を取り仕切るようになったことも…
でも、これはさすがに言わなくてもいいよね。
「そうだね。それの何が不思議?月の一族の人と、ましてや王族の血筋の人と恋愛関係になることは、その世界のトップになることと同義だ。末端の一族が認めてもらうために、月の約束について思い出しても不思議じゃないと思うけど?」
それは、そうなんだけど。
「そうかもしれませんが、プティテーラは自由恋愛が主流なんですよね?一族の血を引いているものが認められないのなら、平民であるマニさんはより認められない存在のはずです。でも、月の約束は語り継がれている。なら、生まれや血筋は関係がないのでは?と思いました。」
マニさんは、平民だけどプティテーラでは、神様的存在。
平民だから、末端の血筋だから…で月の約束の石が必要になるとは思えない。
それこそ、シン王子とアルビナ令嬢のように約束をしていたとかなら、話は別なんだろうけど。
「確かに。それだと、必要ないかもしれない。でも私には必要だったんだ。なんでだと思う?」
「なんで…?ですか…?」
生まれや血筋ではない…
でも、必要だった。
なんでだろう?
「それはね。私は、雫の一族の末端だったんだけど、その他に月の一族の使用人をやっていたんだよ。それもセレーネギアの使用人。」
使用人…
え?
クヴェレ殿下が使用人って言った?
「えぇぇぇぇ?」
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