386話 クヴェレ殿下にお聞きしたいことが…
「それから、リカとリオもとても喜んでいたよ。綺麗なボトルを貰ったと、今後、プティテーラで見ることが出来るのかな?」
「はい。」
「月の約束に並ぶ言い伝えになるといいね。」
この王配殿下は、どこまで話を聞いたのだろうか。
まさか王配殿下の甥っ子姪っ子に間接的とはいえ勝手に手伝ってもらってしまったからな。この事に関しては、少し居たたまれない。
「そんな顔をしなくてもいいよ。」
あははははは…
何でもお見通しということで…
「さて、息子のこと、甥っ子姪っ子のこと、お礼をさせてもらおうと思ってね。そうだな…何か、私にしてほしいことはあるかい?」
ん?
何か?
してほしいこと?
いやいや…
恐れ多くて頼めないんだけど…
そっと、クヴェレ殿下の方に目線を向けると、ニコニコとこちらを見つめてくる。
どんな顔ですか?
「遠慮しなくていいよ?」
遠慮するでしょ。
後に何があるか分からないんだから。
でも、言わないというのも、好意を断ったとか言われる?
クヴェレ殿下は、言わないと信じたいけど…
目上の人の遠慮しなくていいよ…は、私には、どっちなのか分からん。
そうだな…
…そう言えば、クヴェレ殿下に聞きたいことがあったんだよなぁ。
答えてくれるかな。
「あの、クヴェレ殿下に聞きたいことがありまして。」
「なんだい?」
「月の約束のことです。」
「なるほどね。いいよ。何が聞きたいんだい?」
私がそう言うと、クヴェレ殿下はあっさりと了承してくれた。
「月の約束の終わりまで見てきたんだろう?隠すこともない。何が聞きたいの?」
シン王子から月の約束の話を聞いてから、ずっと気になっていたこと。
「クヴェレ殿下は、月の約束の終わりまで見たんですよね。」
「そうだね。」
「だから、月の約束の話をシン王子に伝える時に、クヴェレ殿下が体験してきたことを付け加えた。」
「正解。」
やっぱり。
クヴェレ殿下は、月の約束の終わりまで見ていたんだ。
ここまでは、話の流れで何となくわかっていたことなんだけど。
「それで、聞きたいことは何かな?」
シン王子に情報を小出しにしていた理由も聞きたいんだけど、クヴェレ殿下が月の約束の石を取りに行った理由が聞いてみたい。
やっぱり、シン王子みたいに約束をしたからだろうか?
でもなぁ…
これ、聞いてもいいのかな?
「聞きにくいことかい?」
「いえ…いくつも聞きたいことがあって、どれにしようかと…」
聞きにくいです。
聞きたいけど、聞きにくいです。
「いくつでも答えるけど?私が言える範囲だけれど。私のことなら、答えられるよ。」
もしかして、これ何を聞きたいかバレてるかな?
じゃあ、思い切って聞いてみよう。
「じゃあ、遠慮なく質問させていただきます。」
「どうぞ?」
「月の約束の話をシン王子にされたと思うのですが、明確に場所を知っていたのに、シン王子に情報を小出しにするような形で話したのは、何か理由があるのでしょうか?」
ワンクッション挟んでみよう。
シン王子をワンクッションにするのをお許しください。
「それか。アイネとマニの言い伝えは、そう簡単に達成できない様に語り継がれているだろ?そもそも本当にあるとすら、思われていない。だから、息子とはいえ、答えをそのまま提示する訳にいかなかった。ただ、語り継がれているままの文章だとあまりにもたどり着くことが難しい。」
確かに。
アルビナ令嬢から聞いたものだけだと、絶対にたどり着けていないだろうな。
私たちが月の約束について導き出したのも、シン王子に補足で聞いた文章のおかげだし。
そもそも、語り継がれている月の約束に最終地点を示すヒントは殆どなかったよね。
「もしかして、クヴェレ殿下は、あの一般に語り継がれている月の約束から場所を見つけ出したんですか?」
「そうだよ。」
マジかい…
「月の光に導かれた…その扉の向こう側に…私がシンに伝えたことは、この延長だからね。」
延長と言っても、最果てくらいには、導き出すには難しいと思うけどね。
あまりにも集約されすぎている。
クヴェレ殿下から、受け取ったメッセージに頭を捻らせていた身としては、凄すぎて言葉も出ません。
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