37話 愛をささやく場所は、重要
そろそろ、いい時間になってきたんじゃないか?
噴水広場に行って、花の庭園に行って、1日のトリを締めくくる場所
お菓子の城がある、城エリア。
ミシュティを、守るようにして外壁が建っていたが、お菓子の城を守るために城壁がしっかり建てられている。
城壁の周りには、邸宅が建ち並んでおり、実際ここには、ミシュティの貴族が住んでいるという。
邸宅付近には、立ち入りはできず、遠くから眺めるだけなのだが、いろんな形の邸宅があり、見ていて楽しい。
フルーツメインの邸宅や、ケーキで作られた邸宅などなど、スイーツショップに来て、品物を選んでいるときの気分になる。
ミシュティの貴族はここで暮らしているのか…
お菓子の家、一度は住んでみたいものである。
貴族のお菓子の邸宅を抜けると、お城の城壁。
お城は、一般開放している所と、立ち入り禁止の所があるらしい。
ここにも、実際、王族の人が暮らしているとかで…
お城の一般開放ってすごいサービスだなぁ。
その分、警備も大変そうなのだが。
お城の名前は、クレーム・アラ・シャンティ。
色のついた生クリームの装飾に、土台はスポンジかな?
要するに、このお城は巨大なケーキということだ。
お城の壁は、スポンジケーキのブロックに一つ一つクリームが塗られており、しっかりと石が積み上げられて作られたように見える。
フルーツなどの装飾はあまりなく、生クリームの色と搾り方で装飾に変化をつけている、落ち着いたシンプルなお城。
解放されている場所は、城壁内のお城の庭、書斎などの別棟、一階の入り口部分など。
さすがに、王族とエンカウントしそうな場所は解放されていない。
観光名所とはいえ、そこまでしなくてもいいと思うけど。
むしろ、城内の一部の開放も思い切ったことをするんだなと、私は思っている。
見させてもらえるなら、存分に見るけどね。
城壁内の庭、お城へと続く階段の上。
そこが、恋人たちが愛をささやき合うと成就すると言われている、噂の言い伝えの場所である。
さて、言い伝えの場所はというと…
ごった返していて雰囲気も何もない。
あまりの人の多さに、愛をささやくのを諦めるカップルもいる。
その場に居座り、愛をささやき合っていても、他のカップルとぶつかられて、喧嘩になっている。
「愛が一気に覚めるな」
ネロは、どうでもよさそうにその状況を眺めている。
おう…そうだね…
というか、この猫、恋や愛について大分辛口だな…
まぁ、このごった返しも有名観光地なら良くあることなんじゃない?
そういうスポットを訪れるために、1時間とか2時間とか3時間とか…4…
平気で並ぶ人たちもいるわけだし、一種のご愛敬でしょ。
人が多すぎて、私とネロは、城の外観だけ見て帰ることにしたんだけど。
というわけで、私とネロは、宿探しを始める。
ミシュティはエリア1から6まで、それぞれに宿泊場所があり、場所によって施設の特徴が違うみたい。
そうなると違うエリアに行きたいものである。
アミューズメントエリア、商業エリア、森エリア
明日の朝一でアミューズメントパークに行くのは、ありじゃないか。
エリア1のアミューズメントエリアに行こう。
そう意気込んで向かったはいいものの、分かっていた。
観光地の宿泊施設がその日の夜に取れる訳がないことを。
「どうしても一室だめですか?」
「今日は満室でして…」
この会話何回目だろうか。
どこが、観光客減ってるの?
「おい…」
誰だよ、そんなこと言ったのは…私だけど。
「おい…」
それとも、今日はたまたま新規客が多かっただけ?
「はぁ…」
ネロは、そんなに焦っているようにも見えないけど。
「ネロ…まさか」
「なんだ?」
野宿するつもりじゃないよね…?
とはさすがに聞けなかった。
はぁ…。
旅行に来て、野宿とか…
「どうかされたんですか?」
…ん?
確か、観光職員のベニエさん??
「もうそろそろ、いろんなお店がしまっちゃいますよ」
「泊まるところ探してなくて…」
「え?えっと、観光部の方にお貸ししているお部屋がありますよ?」
えぇ!?
「ちょっと、ネロ!」
「俺が言おうとしたとき、お前が話を聞いてなかったんだろうが」
あー、確かに意識の遠くの方からネロが呼びかける声が聞こえていたような…。
ごめん、ネロ。
野宿にならなくてよかった、あのサバイバルの再来かと思った。
「ご案内しますね」
「お世話になります」
観光部の職員で心底良かったと思う瞬間だった。
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