382話 なぜここにいるのですか?
なぜここにこの人がいるんだろう?
手にはリオ君の温かい感覚。
私は、クヴェレ殿下を目の前に何を言えばいいか、よく分からず、固まっていた。
「おじさん!」
「遅いよ!」
リオ君の手は私から離れ、リカちゃんもネロを手から離し、クヴェレ殿下の方へと駆け寄る。
クヴェレ殿下は、勢いよく抱き着いてきた二人が転ばない様に、手でそっと支える体勢へと持っていく。
ただでさえ優しそうな顔をしているクヴェレ殿下が、二人を見つめ優しそうに微笑む。
…ちょっと待って。
この二人、クヴェレ殿下のことを叔父さんって言った?
リカちゃんとリオ君の叔父さんってクヴェレ殿下だったの?
「おじさん…」
「まさか…いや、そう言われると青い髪に青い瞳…どことなくこの人を思わせる風貌だな…」
そうだけど、あの髪色と瞳を見ると、クヴェレ殿下のお子さんと勘違いしそうなんだけど。
似すぎでは?
「似ているかい?」
二人を抱きしめながら、にっこりと微笑まれる。
いやいや、この人、心でも読めるの?
「よく似ていると言われるのさ。リカとリオは、私の兄の子どもたちだ。兄と私が良く似ていててね。それで、私にも似ているように見えるんだ。」
いや、マジで似ている。
クヴェレ殿下の血脈だと言われれば、もうそれにしか見えない。
というか、あの子ども二人と会った時になんで気が付かなかったんだろうと思うレベルだ。
とくにリオ君とかクヴェレ殿下に激似じゃないか。
あまりにもじっと見てしまったため、首を振り、頭をリセットする。
クヴェレ殿下はここに何をしに来たのだろう。
リオ君とリカちゃんの付き添い…?
いや、でもわざわざ王配殿下がここに来るか?
それに、見た目もちょっと変わっている。
王配殿下というよりは、何かに紛れるように、一般貴族の装いというか…
「一足早くここに入って来たからね。息子たちの邪魔はできないし、少し紛れておこうかと思ってね。」
あはは…
私の顔に文字でも書いてあるんだろうか?
心の声に対して、的確な返答過ぎて驚きしかない。
「元々こういうのが得意なんだ。ここに来た理由は、甥っ子姪っ子が君にお世話になったみたいだからね。お礼をしに来たんだ。」
私は、その言葉にひそかに眉を顰める。
ネロもぴくッと横で反応したところを見ると、同じように疑問を持ったのだろう。
王配殿下がわざわざ?
甥っ子姪っ子が可愛いのは伝わってくるけど、一般人に対してお礼を言いに来る王配殿下というのは、何かおかしくないか?
それに、この二人にあげた物は、ブラーさんの物。
わざわざこの場所で私たちに言いに来るのもおかしい。
リカちゃんとリオ君は、今の様子に首を傾げているから、二人は本当に私たちを探してくれていたのだろう。
ただ、クヴェレ殿下の用事は、お礼ではないでしょ。
何が目的なのだろう。
「そんなに警戒されると、困ってしまうな。落ち着いてもらってもいいかい?」
警戒させている本人がそんなことを言うな。
ただ、王族相手にあなたのことを警戒していますと訴え続けるのは、まずいか…
それに隣にはアスガルさん。
アスガルさんは、クヴェレ殿下のことをまだ知らないのだろう。
今のクヴェレ殿下の恰好を見れば、王配殿下とは思わないだろうし、それに二人の子供の世話をしていると言うのも王配殿下が直接することではない気がする。
力強く息を吐き、目を閉じて呼吸を落ち着ける。
クヴェレ殿下は、今、現段階では、この会場に紛れていると言っていた。
お辞儀をするのは、間違っているんだろう。
「そちらは、コスモスの方かい?」
「そうです。」
もしかして、紹介はしても大丈夫という事だろうか?
クヴェレ殿下の顔を見ると、優しく微笑まれたので、OKという事だろう。
紹介してもいいと言っても、アスガルさん…
私たちがナンナル王子と知り合いと言った時も、顔を引きつれせていたからなぁ…
「アスガルさん…あのですね…」
「なんだい?」
「今からこの方を紹介するのですが、あの驚きとかは口に出さないようにお願いします。何か事情があるみたいなので…」
私は、アスガルさんの耳に口を寄せ、ボソリと先に告げておくことにした。
首を傾げたアスガルさんは、そっと頷いてくれた。
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