381話 壁際はおさまりがいい
ニコニコと見上げてくる子ども二人。
リオ君は私の手をぎゅっと握って私を見上げ、リカちゃんはネロを捕まえてムギュムギュと抱きしめている。
「おい、離せ。」
ネロはリカちゃんに強く出られないのか、口は悪くてもされるがままになっている。
リオ君は私の手をキュッと強く握り、恥ずかしそうにうつむいた。
ど、どういう状況?
「チヒロ…これは、どんな状況?」
「私にも分かりません。」
アスガルさんは、私たちの様子を見て、首を傾げた。
ついでに私も首を傾げたい。
リカちゃんとリオ君は、ブラーさんのボトルを渡した二人。
さっき会ったばかりなんだけど、こんな会場の端まで来てくれていると言うことは、私たちを探してくれたと言う事だろうか?
そして、ネロをお人形のように抱くリカちゃんと私の手を握りしめたままのリオ君。
探してくれたと言うことは、何か用があったと言う事なのだろうか?
このままじゃ、状況が分からないし、話を聞こう。
私は、その場でスッとしゃがみ、リオ君に目線を合わせ、そして掴んでいた手に自分の左手を重ねた。
体をビクッと振るわし、私の方を見つめるリオ君。
「リオ君、先ほどぶりですね。どうかされましたか?」
「あのね…えと…ね。」
目が合ったかと思ったら、スッと目線を下げてもじもじとする。
かわいい。
「ゆっくりでいいですよ。一緒にお話をしましょう。」
「ふぁぁ…うん。あのね。さっきね。もらったのおじさんに見せたの。」
さっき貰ったのというと、ボトルのことかな?
ボトルを二人のおじさんに見せたんだろう。
「そうしたらね。お礼を言わないといけないねって」
「お礼なら、先ほどしてもらいましたよ?」
二人にありがとうって言ってもらっているし、しかもそれは渡してもいい物だったし。
これ以上何かをしてもらう必要もない。
それに、この二人には、どちらかというと私たちが手伝ってもらった方だし、ボトルは、こちらが感謝として送ったものだ。
「でも、おじさんが興味あるって言ったよ。」
「興味?」
この二人のおじさんという人が、ボトルに興味を持ってくれたと言う事だろうか。
二人の身なりからしても、格式高いお家柄。
そんな人が興味を持ってくれるんだとしたら…
ブラーさん、これは本当にやりましたよ。
「それでね。さっきいた場所に行っても、いなくなっていたからね。どこだろうって…リカと探してたの。」
やっぱり探してくれていたのか。
移動していたし、よくこんな端っこまで探しに来てくれたものだよ。
「探すの大変でしたよね。リカちゃん、リオ君。ありがとうございます。」
「ううん。大変じゃなかったよ。おじさんが、もしかしたら壁の方にいるかもって言ってた。」
「そう。そうしたら、本当にお姉ちゃんたちがいたわ。」
ん?
壁沿いを重点的に探していたってこと?
なんで?
確かに一番初めのパーティも二度目のパーティも壁沿いにいた自覚はあるけれど、人に注目されるような居座り方をした覚えはない。
壁沿いを探してみるといいなんて言われるほど、壁付近に居座っていたつもりもないんだけど…
「こんなに小さな子たちに、壁沿いにいると言われてどうするんだい…?」
アスガルさん、誤解です。
壁沿いは、おさまりがいいけど、こんな覚えられ方をするような悪目立ちをしたことは、ありません。
いや、そんなことよりも。
この二人にそう言った叔父さんって何者なの?
私、どこかで知り合っているのかな?
「リオ君、二人のおじさんって、どんな人?」
リオ君は、私の手を握りながら、あたりをキョロキョロと見回す。
すると、顔がパァっと明るくなって、一点を指さした。
「んー…あんなひと!」
リオ君が指した方を見る。
そして、言葉を失った。
おいおい、嘘でしょ?
「やあ、お久しぶりだね。チヒロさん、ネロ君。」
私たちの方へ歩いて来て、目の前でしゃべっているのは、優しい青い目をした王配殿下だったのだから。
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