379話 ここからが私のパーティです
ナンナル王子が去って、注目されていたこの空間が少し落ち着いてきたみたい。
「ちょっと注目を集めすぎちゃったみたいね。メルーレ王女様やビスクート様のご協力のおかげで、コンジェラルチェをたくさん受け取ってもらえたわ。チヒロちゃん、ネロちゃん。お手伝いをしてくれてありがとう。」
おぉ、やっとデウィスリ夫人のお手伝い終了?
これで、お役御免かな?
「メルーレ王女様、ビスクート様、本当にありがとうございました。」
「いえいえ。甘くて、美味しいもの食べられたし、幸せでした!」
「今度、俺たちの世界でも、作ってみたいですね。」
デウィスリ夫人が深々とお辞儀をすると、メルとビスクートさんは、にっこりと笑った。
ミシュティでコンジェラルチェが食べられるようになったら、絶対に人気出るだろうな。
甘いもの大好きな世界だもの。
しかも、異世界の文化を取り入れたとなれば、ミシュティに行ってプティテーラの文化にも触れられる。
ミシュティは、スイーツのスペシャリスト集団だから、コンジェラルチェもミシュティなりにアレンジして、売られることになるかも。
そうなったら、絶対に食べにいきたい。
「せっかくパーティに参加しているのに、ずっとここに拘束している訳には、いかないからね。チヒロちゃん、ネロちゃん。ありがとう。」
「デウィスリ夫人、私たちもデウィスリ夫人のスペースでお世話になりました。ありがとうございました。」
「夫人、コンジェラルチェ、美味しかった。」
「あらあら、嬉しいことを言ってくれるのね。」
デウィスリ夫人が愛おしそうに見つめてくれるから、本当に恥ずかしい。
でも嬉しいな。
「パーティを楽しんできなさいね。」
「はい!」
こうして、デウィスリ夫人のお手伝いという役目を終えて、私たちがパーティで行うべき依頼されたお仕事は終了したわけだ。
後は、この婚約パーティを楽しむだけでしょ。
「チヒロ、ネロ。俺たちも挨拶回りに行ってくることにするよ。」
「せっかくチヒロたちに会えたから、離れるのは寂しいけど、ミシュティのことをいろんな世界の人たちに知ってもらわないといけないしね。」
そっか、ここでメルたちともお別れか。
「あ、でも。一緒に観光するって約束は忘れないでね。それと、挨拶回りが終わったら、また後で会おうね。それじゃあ、またね。」
メルとビスクートさんもパーティの人混みの中へ消えていき、残されたのは私とネロとアスガルさん。
「アスガルさんは、どうしますか?」
「もう少し、チヒロとネロの仕事ぶりを見ようかな。半月もプティテーラで何をやっていたのか知りたいしね。」
えぇ…そんなに疑わなくても、ちゃんと仕事をしていたって。
コスモス職員として、観光スポットをちゃんと周っていたんですよ。
「そうですか。でも、この後は特にもうやることもないので、大人しくしているつもりですが…」
コスモスから来た人たちが誰なのか分からないし、他の世界から来た人たちなんてより分からない。
なので、私がやることは一つ。
「それで、チヒロ。なんでこんな所にいるんだ?」
アスガルさんは、顔を引きつらせて、私に問いかける。
「言ったじゃないですか。この後は大人しくしているつもりだって。そもそもパーティという場所に私は慣れていないんです。こういう場所が落ち着くんですよ。」
私たちが行きついたのは、会場の隅。
そこで、ネロとアスガルさんと一緒にチビチビと飲み物を飲んでいた。
「だからといって、これでは社交場の意味がないだろ。」
「ある程度の交友関係を広げたら、もういいんです。扱いきれない交友関係は、害にはなっても得にはなりませんから。」
私は、どや顔をしながらアスガルさんに持論を言うと、アスガルさんはネロへと話のターゲットを変えた。
「ネロ、チヒロはいつもこうなのか?」
「あぁ、パーティが始まると大体この位置に落ち着いている。」
「おい…」
ふふん。
何かの役目を負っていないパーティは、気が楽でいいな。
それに、今日はハラハラするパーティ内容でもない。
ここからが私のパーティの始まりなんだから。
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