378話 騒ぎに第二王子登場
「ちょっと、ナンナル王子?その言い方だと、いつも騒ぎを起こしているのが、私たちみたいじゃないですか。」
「そうだ。俺らは、なんだかんだ巻き込まれているだけだ。」
騒ぎの中心は、大体ナンナル王子のお兄様であるシン王子だと思う。
シン王子に触発されて、アルビナ令嬢も大暴走だし。
「…兄さんたちについては、悪かったと思っているよ?最初から最後まできっちりと巻き込まれてくれたことに対しても、お礼を言うし。」
ナンナル王子…
その言い方だと、私たちを巻き込んだことに味を占めて最後まで付き合わせたと言っているようなものでは?
「それで、この騒ぎは何?ここは、デウィスリ夫人のコーナーでしょ?」
「あらあら、ナンナルちゃんも来てくれたのね。」
「お久しぶりです。デウィスリ夫人。今回は協力していただき、ありがとうございました。」
「いえいえ。とても楽しいわ。それに、今はチヒロちゃんたちにお手伝いをしてもらっているの。ちょっと賑やかになってしまって、申し訳ないわね。」
デウィスリ夫人が、さりげなく今の騒動のもみ消しをしてくれているんですけど。
助かります。
「そうだったのですね。デウィスリ夫人が、把握していることならば、かまいません。」
さすが、デウィスリ夫人。
ナンナル王子からの信頼も厚い。
二人の様子を眺めていると、私の横にメルとビスクートさんが、そっと寄ってくる。
「ねぇ、あの気品あふれる方は誰?普通の人じゃないよね。」
「あぁ、あの人は、プティテーラの第二王子ナンナル・フォルモント様だね。」
「へぇ、そうなん…え?ちょっと、チヒロ?今なんて言ったの?」
私がメルの方を向くと、メルの顔はギョッと驚いた顔をしている。
「え?だから、プティテーラの第二王子…」
「だって、チヒロ。普通に話をしていなかった?」
ナンナル王子とは、普通にお話が出来るけど、はたから見ると異常事態なのか。
「い、いろいろあって、話をする機会があっただけだよ。」
「親しそうにしていたけど?」
「お世話になったからね…」
メルの目は、じっと私を捕えているが、それ以上の説明が見当たらないと言うか。
だって、本当にナンナル王子と知り合ったことが、偶然というか、たまたまなのだ。
「ねぇ、ネロ。」
「なんだ?」
「いまさらだけど、プティテーラで築いた交友関係って、ちょっとおかしいよね。」
「ようやく気が付いたか。」
いや、知り合うたびに、おかしいとは思っていたけど。
第三者に突っ込まれると、改めておかしかったんだと気が付くと言うか。
「本当に王子と知り合いになっていたのか…」
「あ、アスガルさん…たまたまですって。」
「そんなにチョロくないって言っていなかったか?」
いや、王族の人たちと関わることは、別にチョロくなかったです。
すると、デウィスリ夫人と会話を終えたナンナル王子が、再び私たちの方に近づいてくる。
「チヒロ。騒ぎの内容は、理解したよ。今度、僕も顔を出してみようかな。」
ナンナル王子が、ブラーさんの所に?
「うわぁ…ありがとうございます。」
「相当腕がいいと聞いたし、チヒロとクラトのお墨付きでしょ?それはもちろん。」
ブラーさん、ナンナル王子ゲットです。
後は、頑張ってください。
「それで、チヒロの隣にいる方たちは初めて見るけど、チヒロの知り合いの人たちかな?俺も挨拶させてよ。」
ナンナル王子の言葉に、こういう場合ってどっちを先に紹介するものなの?と思った。
分かんないんだけど。
すると、メルがそっと手で私を制し、前に出る。
「お初にお目にかかります。私は、ミシュティから来ました、メルーレ・ドゥ・ミシュティと申します。ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。」
「お初にお目にかかります。ミシュティから来ました、ビスクート・エディシュと申します。」
二人は、私が散々足をプルプルさせて行ったお辞儀をいとも簡単に行う。
「ナンナル・フォルモントと申します。お越しくださり、光栄です。メルーレ王女、ビスクート殿下。」
ナンナル王子は、メルとビスクートさんの正体を正確に把握している。
「ご存じだったのですか?」
「それは、もちろんです。招待させていただいたのですから。」
招待客全員を把握しているとでも言うのかな?
化け物ですか?
「それで、チヒロ。後ろの方は?」
後ろ?
チラリと後ろを向くと、アスガルさんがそこにはいた。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は、コスモス観光部を取り仕切っている、アスガル・ビルロストと申します。」
「チヒロとネロの上官の方ですね。コスモスには、今回本当にお世話になりました。ありがとうございます。」
一通り挨拶を終えたナンナル王子は、にっこりと微笑む。
「騒ぎについては、何事もなかったみたいだし、俺は元居た場所に戻るね。素敵なご友人を紹介してくれてありがとう。それじゃあ、チヒロ、ネロ。また後でね。」
手を振りながら、去っていくナンナル王子を私はじっと見つめた。
あとでって、なんだろう?
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