374話 今回は私より皆さん上手です
「それで、チヒロ?プティテーラはどういう所なの?」
「メルもここに来るまでに見たと思うけど、水の都市カナリスは賑やかでいいよね。水路もひかれていて、街中でも舟で移動ができる。面白い。」
「あの、水の馬車は最高だったな。舟に乗っている最中に、風景が何度か変わったから、あれはエリア違いかと思ったけど、そう?」
エリア違いって、ミシュティならではの言い方だよね。
ミシュティは、大きなテーマパークみたいな世界だから、エリアで区切られていたし。
「プティテーラでは、街だね。それぞれ、雫の街ワーテル、火の街フー、虹の街アルカンシェル、太陽の街シャムス。四つの街と、このセレーネギアがある月の宮殿。カナリスはこの五か所に分かれている。」
「やっぱり違ったんだ?全然雰囲気が違うから、驚いたよ。」
「何を言っているんだ?ミシュティのエリアの違い程、大きな違いは、ないはずだけど?ミシュティは、エリアが違うだけで、全く別の雰囲気になるじゃないか。」
ビスクートさんの問いに、ネロは笑いながら、答えている。
「ミシュティは、それを楽しんでもらうのが目的だからな。自然エリアなんて、風景が全然変わらないだろ?」
「それをいうなら、プティテーラにも自然エリアがあるぞ。」
「えぇ?そうなの?」
テーブルからグイッと身を乗り出すメルと、興味深そうに話を聞くビスクートさん。
「あ、この甘酸っぱいコンジェラルチェおいしい!」
「女性が好きそうな味じゃないか?甘酸っぱい味は、恋の味なんだろ?」
「ビスクート、お前のキザな所は、健在だな。」
ネロのジト目は、あまり他人に向くことはないが、ミシュティの人たちには、容赦なかったな。
「別に俺のせいじゃないだろ?よく言うよなって…言うだけだよ。」
そして、それに動じないビスクートさん。
二人は、コンジェラルチェを本当においしそうに食べながら、器用に話を聞き、問いかけてくる。
私は、コンジェラルチェを食べている三人の話を聞きながら、デウィスリ夫人が用意してくれたレベーロルチェをゆっくりと食べている。
さすがに、コンジェラルチェのコーナーで物を食べている三人の前で、何も食べてない一人が居たらまずいと言うことで、急遽用意をしてくれた。
甘さ控えめの炭酸多めで作ってくれたため、胃もたれもだいぶ緩和される。
デウィスリ夫人、感謝です。
「それで、自然エリアって、どんな所?」
「カナリスの横にあるエリア。ナトゥラ。本当に広大で、自然がいっぱいなの。」
思い出しただけで、ニヤケてくる。
その様子を見て、ビスクートさんが質問を続けた。
「見どころは?」
「やっぱり、滝でしょうか?」
「滝?滝って、チョコレートの滝みたいな?」
想像するのが、チョコレートの滝なのが面白いけど。
「そうですね。イメージは、そんな感じです。でもイメージの何倍も大きいですよ。迫力満点です。」
プティテーラの滝は、どの滝も規模が凄い。
大きさ、高さ、数。
どれをとっても。
メルたちも見たら、きっと驚くだろうな。
「そんなに聞くと言うことは、メルとビスクートは、プティテーラに留まるのか?」
「よくぞ聞いてくれたな。」
待ってたの?
「一応、異世界観光を兼ねて、こっちに来たんだけど、チヒロとネロがいるなら、留まることは確定だね。チヒロとネロに会えるなんて思わなかったぁ!」
「え?ちょっ…」
待って?
私たち、プティテーラには、だいぶ滞在しているから、このパーティが終わったら、そろそろ帰る日を決めようか…なんて話をしていた所だったんですけど?
「前回は、私たちの世界に来てもらって、旅行って言う感じじゃなかったし、チヒロ達とお出かけしてみたかったんだ。お手伝いも頑張っているんだし、私たちのお願いを聞いてくれたもいいよね。」
こいつ。
メルも私の意図にしっかり気が付いていたのか…
「メル…いつの間にそんなに交渉上手になったの?」
「えぇ?なんのこと?でもさ、もし、そうだとしたら、チヒロから学んだのかもね?」
ニヤリと笑うメルと、ビスクートさん。
「お前、今日やられまくってないか?」
「どうしよう。調子悪いのかな…?」
いや、私が何か企んでいることを理解したうえで、乗っかってくる人たちが悪いと思う。
「それをいうなら、企んでいるのに、うまく使われているとも言うがな…」
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