373話 強力な助っ人をゲットしました
「ちょっと、チヒロちゃん?」
背後から、コソッと呼ばれて、デウィスリ夫人の方へと行く。
「なんですか?」
「お知り合いみたいだけど、どなた?異世界の方ということは、分かったのだけれど。」
あぁ、このままここで盛り上がっているのは、申し訳ない。
ただ、ネロは喜んでいるけれど、正直言うと、私はコンジェラルチェ配布促進担当から解放されたい。
胃もたれが凄いんだ…
「ちょっと、チヒロ?」
「もし時間があったら、もう少し話そう?」
こっちもこっちで賑やかだし…
ちょっと待てよ?
そういえば、メルたちはコンジェラルチェを受け取っていたな。
この二人は、お菓子の国出身でお菓子のスペシャリスト。
「デウィスリ夫人、強力な助っ人かもしれません。」
「え?」
「来てください。」
デウィスリ夫人をメルとビスクートさんの前まで引っ張っていく。
ちょっと、はしたないけど許してください。
「メル、ビスクートさん。二人と話をしたいのは山々なんですが、ちょっと今お手伝い中でして、手が離せないんです。」
「えぇ?せっかく会えたのに?やだやだ!何をするの?手伝うって。」
メルのわがまま、ありがとう!
「お菓子を配る仕事なんだけど。」
「お菓子なら、私たちが専門じゃん。おじさん、ちょうどいいし、何か手伝っていこう。そうしたら、チヒロ達も私たちに時間作ってくれるはずだし。」
さすがメル。
ちょっと、心が痛いけど、どうか私を助けてください。
メルはいいとして、ビスクートさんはどうだろう?
チラッと様子を伺うと、にっこりと笑っているが、多分全然笑っていない顔。
「なるほどね。いいんじゃないか?手伝うよ。そのかわり、チヒロ達の話も俺らに聞かせてくれるんだろ?」
この人は、私の裏の意図に気が付いているな…
恐ろしい。
さすが、グラースさんに代わり、代理王をしていただけのことある。
「それで、なにをすればいいんだ?」
ビスクートさん、圧をしまってください。
「どういう事?」
ただでさえ、私に引っ張って来られたデウィスリ夫人は、何のことだか分かっていない様子。
取り合えず、両者を紹介しよう。
「メル、ビスクートさん。紹介します。こちら、私がプティテーラでお世話になった、デウィスリ・フォルモア夫人。今はプティテーラの王族から離れているけれど、この世界の王族の親戚の方です。」
何のことだかよく分からないだろうに、さすがデウィスリ夫人。
所作は完璧。
こういう臨機応変さが、パーティで美しいと言われる所以なのだろう。
「そして、デウィスリ夫人。こちらは、私が以前旅行した異世界の方たちです。お菓子の国ミシュティの王女、メルーレ・ドゥ・ミシュティ様とミシュティの王妃様の弟、ビスクート・エディシュ様です。」
こちらもさすが王族。
いつものわがまま娘を隠し、丁寧なお辞儀。
ビスクートさんは、言わずもがな。
デウィスリ夫人は、メルたちにもう一度、丁寧なお辞儀をして、にこやかに笑った。
「…うふふ。…ちょっと、チヒロちゃん。こっちに来てもらっても?」
そして、グイっと腕を引っ張られ、凄い形相で私の顔に近づく。
「聞いてないわよ。チヒロちゃん?異世界の王族なんて。それに、さっき助っ人って言っていたわよね?手伝わせる気?チヒロちゃん、正気なの?」
「あはは…メルが手伝うって言ってましたし、それにビスクートさんからも了承取れてますし。」
だよね。
私と、メルたちの関わりって、少し、いや絶対におかしいよね。
それ、私もミシュティ滞在中に思っていたから。
今は、少し慣れてきて、図々しくなったけど。
「夫人。驚くのも無理はないけど、あの二人は、本気で手伝おうとしているぞ。」
「えぇ…」
「手伝ってくれると言ってるので、お気持ちに甘えて、手伝ってもらいましょう。大丈夫ですって。二人ともお菓子に関しては、スペシャリストですよ。美味しく食べてくれます。」
慌てふためき、青ざめているデウィスリ夫人にグットポーズをネロと二人でして、私とネロは、メルとビスクートさんの元へと戻る。
異世界の王族二人に大っぴらに手伝ってもらうのは、体裁が悪いので、あくまで美味しそうに食べる手伝いをしてもらうと言うことで、話が落ち着く。
コンジェラルチェは、本当においしいんだけど、私が甘いもの耐性がそこまでないため、助っ人として、二人にはコンジェラルチェのコーナーの前で、食べてもらうと言う作業を頼んだ。
「それだけ?」
「甘いものを食べるだけなら、そんなに必死に頼まなくてもやったけどね?」
私が、詳しく説明すると、メルとビスクートさんは首を傾げていたが、快く了承してくれた。
こうして、戦力にならない私は、配布係兼メル&ビスクートさんと一緒におしゃべりという謎な役職になった。
もちろん、ネロは二人と一緒にコンジェラルチェをコーナー前で美味しそうに食べる役目兼メルとビスクートさんとお話し係である。
王族を地べたや、立ち食いさせるわけにいかないというデウィスリ夫人に、コーナー前に急遽、お茶会セットが出来上がった。
メルとビスクートさんは、立ち食いに慣れているため、これまた首を傾げていたけど。
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