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371話 またもや広告塔からの偶然の…


ネロとの言い合いで、デウィスリ夫人からコンジェラルチェを与えられた。

仕方がないので、ネロと二人で、デウィスリ夫人のコンジェラルチェコーナーの横でもぐもぐと大人しく食べている。

クラト公子の依頼を達成したことにより、気の抜けた顔をしながら、コンジェラルチェを取りに来る人達を眺める。


「ちょっと二人とも。大人しくしてくれるのは、いいけど、もう少しおいしそうに食べてくれる?」

「もしかして、美味しそうに食べる私たちを見せて、お客を釣ろうとしていますか?」

「あら、それが分かっているのなら、もっとおいしそうに食べてくれる?」


…この人。

またもや私たちを広告塔にしようとしているな。


「コンジェラルチェなら、私たちを広告塔にしなくても、人が寄ってきますって。」

「何を言っているの?確かに、コンジェラルチェは、月の料理であまり馴染みがない分、物珍しさで興味を持ってくれる人もいるでしょう。でもね。そもそも、こういうパーティの場で、食べ物を食べようとする人は、そんなに多くないのよ。その証拠に、人だかりに比べて、私に話しかけてくる人は少ないでしょ?」


そう言われれば、そうかもしれない。

コンジェラルチェのコーナーを中心として、人だかりはできているモノの、コーナー周辺には、人がいない。

ドーナツ化じゃん。


「ちょっと待ってください。食べ物を食べる人たちがいないのに、私たちに食べ物を与えて。ここに置いていたんですか?」

「あら、気が付いちゃった?」


さすがに気が付きますけど?


「いいじゃない。好きなだけ食べていいって言っているんだし。ネロちゃんだって、もぐもぐしているわよ?」


ネロ…それでいいのか?


「俺は、見た目が虎だからな。虎が食べているシーンは、愛らしくていいだろ?チヒロは知らないけどな。」


そうだよね。

さっきから、可愛い猫が、可愛くコンジェラルチェをペロペロしていたら、人目を惹くわ。

その点、可愛いドレスを着ている私が、もそもそとコンジェラルチェを食べているシーンは、ギョッと驚かれているみたいですけど。


「いいように使われている気がします…」

「何を言ってるの?私のことをいいように使ったんだから、私ももちろんいいように使うわよ?」


うわ、それを言われると、何も言えません。


「いい?美味しそうに食べてね。ネロちゃんで目を引き、チヒロちゃんで、コンジェラルチェを食べたいと思わせる。」


ちょっと、私の比重多くない?

食べたいと思わせるほど、美味しそうに食べるのは無理だよ。

コンジェラルチェは美味しいけど、何個食べたと思っているんですか?

さすがに私は甘いものが大好きって、いう訳ではないので、数を食べるのはきついんですが。

胃もたれするって。

逆になんでネロは、そんなにバクバクとスプーンが進んでいるのか分からない。

本当に甘いものが好きだね、君は。

う、きつい。

冷たい物を食べて、お腹もきついし、甘いものを食べて、胸もきつい。


「チヒロちゃん、頑張って。」

「…はい。」


取りあえず、しばらく逃げられそうにないので、にっこりと笑顔を若干引きつらせながら、美味しそうにコンジェラルチェのスプーンを進めた。

食べ進めて行くと、うぷっとなりかけたため、私は、そっと大衆に背中を向ける。

吐くのは、まずい。

吐くのは、まずい。


「すみませーん。この、コンジェラルチェというものを二つください。」

「あら、ありがとう。どうぞ。」

「うわぁ、美味しそう。ありがとうございます。」


背中からめちゃくちゃ可愛い声が聞こえてきた。

なんだか、耳馴染みのいい声。


「おじさん、貰って来たよ。」

「ありがとう。甘いものの研究は常にしていかないとな。」


ん?


「あーあ、こんな事ならお父さんも連れてくるべきだったよ。お父さんも異世界に行きたいって言っていたしさ。お母さんは異世界の旅に行ったことがあるのに。」

「メル、わがままを言ってはダメだよ。さすがにグラース兄さんを異世界に連れ出すのは、今は無理だよ。ミシュティも異世界文化を取り入れ始めたばかりなんだから。」


聞き馴染みのある声。

メル…?

グラース兄さん…?

私は、バッと後ろを振り向き、先ほどコンジェラルチェを受け取ったであろう女の子を見つける。


「メル!?」

「ほぇ?」


私の声に首を傾げながら、振り返る女の子。

はちみつ色の金の髪が綺麗に波打ち、輝く金色の瞳が私を見る。


「うわぁ!」

「もしかして、チヒロ?」


そこにいたのは、ミシュティで出会った、ミシュティの王女、メルーレ・ドゥ・ミシュティと王様の代理をしていたビスクート・エディシュさんだった。

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