369話 わらしべ長者の子どもたち
女の子の要求に、男の子は慌てて止めに入る。
「リカ…ダメだよ…」
「リオは黙っていて。綺麗だと思ったんでしょ。だったら、交換条件にしてでも聞かないと。」
私の問いかけに、男の子は女の子の手を引っ張って止める。
でも、女の子は、逆に男の子を静止した。
綺麗だと思った…?
もしかして、このボトルのこと?
さっき男の子が綺麗だから見てたと言っていた気がする。
「あの…もしかして、このボトルのことでしょうか?」
二人がなかなかズバッと聞いてこないので、私から思い当たったボトルのことを聞いてみると、二人とも分かりやすくビクリと体が動いた。
「あ、ごめんなさい…このボトル…が、欲しい…訳ではなくてね…ごめんなさい…」
そんなに謝られると私が悪いことをしている気分になるので、いったん落ち着いてほしい。
「なに、泣かしているんだよ。」
「泣かしてはないよ?」
「なに、脅しているんだよ。」
「脅してもいません。」
ネロ、見てたよね?
さすがに、こういう場で小さい子を泣かしたり、脅したりするのはまずいから。
本当に誰の子なの?
「泣かせた…」
ちょっと、待って。
こういう注目のされ方は、よろしくない。
周りの雲行きも怪しくなってきていないか?
「こらこら。まったく、リカ、リオ。泣かないの。」
デウィスリ夫人!!!
救世主です。
「チヒロちゃん、ごめんね。」
「いえ、大丈夫です。それにしても、デウィスリ夫人のお知り合いだったんですね。」
「ええ…まぁ、そうね。」
ん?
なんか歯切れが悪いけど、まぁいいか。
「リオ、リカ。言いたいことがあるのなら、ちゃんとお姉さんに伝えなさい。分かった?」
「う、うん。」
「ごめんんさい。」
さすが先生。
可愛い二人の子どもは、大人しくデウィスリ夫人の言葉にうなずく。
そして、私の方をしっかりと見つめてきた。
おお…そういう顔もできるのね。
さっきまでのもじもじした顔とは違い、しっかりと見つめてくる目に少し驚いた。
「お姉さん。僕、お姉さんが持っていたボトルが綺麗だなって思ったんだ。そのボトルは、どこに行ったら手に入るの?」
なんだ。
やっぱりボトルが欲しかったんだな。
そんなことなら…
え?
ちょっと待って?
これ、チャンスじゃない?
ネロの方をチラリとみると、ネロもニヤッと笑っていた
「これはね。火の街のガラス細工のお店で手に入ります。ブラー・ナールさんのお店です。」
「ブラー?」
「ガラス細工?」
「そうです。いろんな、ガラス細工があるんですけど、このボトルはブラーさんが新しく販売する予定の新作なんです。」
目をキラキラとさせながら話を聞いてくれる二人に、気分が良くなる。
営業に対して、ここまで前のめりに話を聞いてくれる人がいたら、営業の人たちは、喜ぶだろうな。
なにより、私は嬉しい。
「その名も、ミルキーウェイ。」
「ミルキー?」
「ウェイ?」
「そうです。このボトルは、とある異世界の伝承になぞらえたボトルなんですよ。」
私が落としたボトルを二人に見せて、話を続ける。
ブラーさんとクラト公子、それから私とネロが練ったボトルのお話。
七夕伝説で離れた二人が、永遠を誓い想い合う恋。
「これは、二人を繋ぐボトルなんです。」
私は、二人に向かて、七夕伝説の話をする。
小さい子どもにも分かりやすい、七夕伝説を元にしたのは、正解だったかも。
この二人の様子から見るに、理解してくれたみたいだし。
それにプティテーラの人たちは、恋愛という言葉にやっぱり食いつきやすいみたいで、さりげなく私の話を聞いていた二人以外にも、興味がありそうな人が私たちを見つめていた。
私は、男の子に目線を合わせているから、目線が上から降ってくるような感じで、居心地が悪いけれど。
話を聞いてくれているのであれば、それでいい。
「私が持っているボトルは、この猫さんとお揃いなんだけど…」
誰が猫だと言う顔をしているが、声は出さないでくれている。
空気が読める所もさすがだよ。
「こうやって、ボトルの口の部分についているチャームをこの猫さんのボトルのチャームに合わせると…」
「うわぁ!ハートになってる。」
「二つで、ハートになるのね。」
「そう。だから、大切な人にこのボトルを渡して、二人だけのボトルが出来上がるの。」
それには、聞いていた人たちもこそこそと盛り上がってくれているみたいで、私たちの手元を覗き込もうと、ウロウロしている人たちまでいる。
まさか、この子どもたちによって、大衆で説明できるとは思わなかった。
この子どもたちには、感謝しないといけないな。
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