368話 どちら様のお子さんでしょうか?
さりげなく、服に付けたブラーさんから貰ったボトルを触る。
あれ…?
付けていたボトルの方に目を向けると、ついていたはずのボトルがそこにはなかった。
「どうした?」
「ない…」
「あ?」
「服に付けていたボトルがない。さっき転んだ時に落としたのかもしれない。」
どうしよう。
あれは、ブラーさんに貰った物で、ネロとお揃いなのに。
この人だかりで見つかるのかな…
さりげなく、でも目を凝らして床に落ちたであろうボトルを探す。
割れてないといいけど…
その前に、見つかるかどうかわからない。
「あの…」
「え?ちょ…」
あたりをキョロキョロと見回していると、後ろからドレスの裾を引かれて体重が後ろにかかる。
転びそうになるのを何とか立て直し、裾を引かれた方に振り向くと、そこには小さい男の子と女の子。
身長が120㎝くらいの。
男の子は青いショートの髪型で目はタレ目で綺麗な青色の瞳。
女の子の方は、青の髪にウェーブがかかっていて、頭の上あたりにお団子が二つ、目は綺麗な青色で、小さいながらも凛々しさを感じる。
どちらも、パーティにふさわしい衣装に身を包んでいるところを見ると、どこかの偉い人のお子さんだろう。
ドレスの裾を引いたのは、おそらく女の子の方だけど、私に用がありそうなのは、男の子の方かな?
男の子は、私を見てもじもじとしながら、何か言いたそうにしている。
女の子の方は、腕を組み、男の子の方を見ながら、早くしろと言いたげな目で見ている。
ほんとにプティテーラの女性って、気が強そうに見えるなぁ。
「あの…」
男の子は、私の方をちらちらと見ながら、もじもじとしている。
「ちょっと、しっかりとしなさいよ。」
「…ごめん。」
それにしても、この子達は誰だろう?
私は、男の子の目線に目を合わせるべく、その場でスッとしゃがんだ。
デウィスリ夫人の目は気になるものの、今はこっちの子が重要だろう。
目の前でしゃがまれたことにより、ビクッと体を震わせて、右足を一歩引いてしまう。
怖がられているなぁ…
でも、めげないけどね。
「初めまして。チヒロと言います。私に声かけてくれましたよね?どうかしましたか?」
出来るだけ、怯えさせない様に、優しくゆっくりとした口調で話しかける。
すると、キョトンとした顔をしながらも、足を引くのをやめてくれた。
「あ…あのね。その…えっと。」
一生懸命に何かを伝えようとしてくれているため、私はその言葉を待つ。
「あの…これ…」
おずおずと差し出す男の子の手に乗っていたのは、私がさっき落としたであろう、ボトルだった。
「あ、それ。」
「お姉さんが…持っているの綺麗だなって…思って…見てたら…落ちちゃったから…」
私が服に付けていたのを見たんだけど、転んだ瞬間にボトルが落ちたから、拾ってくれたと言う事かな。
「拾ってくれたんですね?ありがとうございます。」
「うん!」
私がお礼を言うと、男の子はパアッと顔を明るくし、大きく頷いてくれる。
「はい!」
そして、ボトルを手渡してくれるみたいなので、受け取ろうとすると、女の子が男の子の手をグイっと引っ張った。
…ん???
「拾ったんだから、なにかないの?」
おぉ…
なにか?
何かと言われても、そうだな。
「コンジェラルチェを食べますか?」
ここは、コンジェラルチェがたくさん置いてあるし、それでもよければ。
「大丈夫よ。違うものがいい。」
そして、力強く否定される。
これには、デウィスリ夫人もびっくりだろうな。
月の料理だよ?
でも、要らないと言われてしまえば、仕方がない。
「何か…何か欲しい物でもあるのでしょうか?」
何か…というか、欲しい物が決まっているんだろうな。
大切なものを拾ってもらったし、何かお返しはしたい。
お返しを要求されるとは、思わなかったけど。
この小さい二人はいったい何が欲しいのだろうか?
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