365話 プティテーラで一番のインフルエンサー
「何に使うの?」
「ブラーさんのボトルの見本に種類があれば、見てくれている人もイメージもしやすいと思いまして。」
「なるほどね。持って来ているよ。こういう社交の場は、職人にとって人脈形成の場でもあるからね。はい。」
ブラーさんは、自分のカバンの中をゴソゴソと探ると、二本の対のボトルを出してくれた。
「このサンプル、買取してもいいですか?」
「買うの?」
「はい、もしここぞと言う場合は、このボトルをそのままお渡しできるように、私に買取させてもらってもいいですか?」
ブラーさんのボトルは、綺麗だ。
いい物は手に取ってもらいたい。
そして、私は、このボトルをいろんな人に知ってほしい。
私がプレゼントしてもいいなら、たくさんプレゼントしたいものだ。
「なるほど。そういうことなら、別にいいよ。どれにする?」
先ほどの二本の他にもカバンの中に入っているのだろう。
鞄の口をグイッと広げて、私たちに見せてくれた。
中には何本ものボトルが入っている。
よくこれだけの量を持って来たな。
ブラーさんも、もしかしたら同じことを考えていたのかもしれない。
ふと、綺麗な輝きを放っているボトルが目に入る。
「…このボトル…」
「なに?」
じっと見つめてくるブラーさんの目に私は思わず言いよどんでしまう。
「いや…女王と王配殿下に似ているなぁと。」
失礼過ぎた?
一世界の女王様に似ているとか…やっぱりダメ?
「…へぇ。本当によく見ているね。正解だよ。」
「えぇ?じゃあ、女王様に作ったっていう事ですか?」
私が驚いた声を上げると、ブラーさんは慌てて私の言葉を否定する。
「ち、違うよ。ちょっと考え事をしながら作っていたら、たまたま、こういう感じになったの。そして、女王と殿下に似ている感じになっていたの。」
言い訳をしているようだけど…
それ、トリウェア女王とクヴェレ殿下を意識して考えながら作っていたと言っているようなものではないか?
「なんで、トリウェア女王とクヴェレ殿下のことを考えていたんですか?」
「なんでって…そりゃ、凄い影響力ある人達じゃん?チヒロが影響力ある人に手伝ってもらうのもアリって言っていたから、一番影響力があるのは誰だろうと思って考えていたら、女王と殿下だったんだ。」
なるほど…
ってすごいな。
それは、影響力あるでしょ。
女王と殿下だもん。
世界一のインフルエンサーだよ。
女王と殿下だもん。
「じゃあ、こっちはシン王子とアルビナ令嬢ですか?」
見た目がなんとなく、それっぽいなと思っていたものを指さすと、ブラーさんは頬をプクーっと膨らませた。
「仕方ないでしょ。女王と殿下はないなと思った後に頭の中に出てきたのが、王子とアルビナ嬢だったんだから。」
今話題の的だもんね。
それに、世界の次期王と王妃。
それは、影響力もあるでしょう。
それにしても、ブラーさんって思っていた以上に強気な性格をしていたんだなぁ。
感心である。
「もう、いいでしょ。それで、どれが欲しいの。」
「せっかくなんで、女王様モデルと、シン王子モデルの物を貰おうかな。あと、このカラフルなボトルのセット、それから虹色の物と金色の物のペアを二つ買取しても?」
鞄の中を覗き込み、選び始めてはいいものの全部可愛い。
全部ほしいんだけど。
「そんなに?それに女王モデルと王子モデルを買うの?まさか、渡す気?」
「渡しませんけど?」
そんな恐れ多いことしません。
私は、全力で首を振った。
いくら、ブラーさんの物がいい物でも、女王様に接触は無理でしょ。
いや…私も女王様とクヴェレ殿下のことを考えて、ミサンガ作ろうとしていたから、人のこと言えないか。
シン王子とアルビナ令嬢に会う機会は、もしかしたらあるかもしれないけど。
今日、あの二人は、忙しいだろうし。
「そう。でも、チヒロは何かをやらかしそうだなって、思うよ。」
嫌なことを言わないでほしい。
人様の婚約パーティで、何かをやらかすのは絶対に嫌だ。
「大人しくしていようと思います。」
大人しく、営業をしよう。
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